FMG報道局のある大阪府豊中市の隣、兵庫県伊丹市でとんでもない事故が起きていました。今月1日、同市内のお好み焼き店でガス爆発事故が起き、本日、事故時に来店していた女性客(67)が、胸に爆撃を受けたことにより死亡したという報道が各メディアからありました。事故の原因としては、このお好み焼き店が、事故当時、まだ熱い鉄板上にカセットコンロを置き、そのカセットコンロで肉を焼いているときにカセットボンベが熱せられて爆発したとみられています。このような使い方は、聞いただけで非常識と思うでしょうし、当然、カセットコンロやカセットボンベのメーカーも、死亡事故が起こる恐れがある危険な使用方法として、使用説明書で警告を付して禁止しています。ではなぜ、そのような非常識きわまりない事故が起きてしまったのか、そこには、化学を考えないことによる無知ゆえの気の緩みがあったのではないかと、FMGでは考えています。
ガスボンベのガスについては、気体部分については、下式のような気体の状態方程式が成り立っています。
PV = nRT
P = nRT/V
この事故の場合、V,nはボンベのため一定、Rは気体定数で一定、Tが異常上昇しているため、Tに比例して圧力が高まります。ガスボンベは外気温が35℃くらいまでの室温のときに耐えきれるような構造になっていますが、熱い鉄板の上やガスコンロの近くのような、100℃を超えると見込まれるようなシーンでの使用は想定されていません。このような不適切な扱いをすれば、ガスの封止弁の機能が破壊され、ガス漏れや圧力容器の破裂が起きてもおかしくないというわけです。
次に問題にすべきは、ガス爆発時の瞬間燃焼反応です。
2 C4H10(l,g) + 13 O2(g) → 8 CO2(g) + 10 H2O(g)
カセットコンロでの燃焼反応とは、たった2モルのブタンから、8モルの二酸化炭素と10モルの水蒸気が出るという、急激な体積膨張が起こるという、実はものすごく激しい化学反応なのです。酸素の消費も激しく、完全燃焼の場合、ブタン1モルあたりで6.5モルも消費することになります。あまりにも激しい反応で、発熱量も非常に大きいため、カセットコンロでは、必要な発熱量が得られるだけの、ガスが最小限量しか出ないように制限しており、室温では安全に使用できるようになっているのです。カセットコンロ使用時に、ガスボンベが非常に冷たくなり、カセットコンロとの接続部の周辺に水滴や霜がついたことを経験されたことがあろうかと思いますが、これが正しい状態であって、このとき、ガスボンベのTは0℃以下、つまり、273K以下になっているわけです。なぜそうなるかというと、前出の状態方程式で、Tについての式に変形するとわかります。
T = PV/nR
ガスの消費に伴って、ガスボンベの接続部付近は外気圧に近づこうとし、そのことが、ガス吐出の原動力となるため、Vはボンベのために一定ですが、Pの値が急降下します。すると、Tの値も急降下します。これが、使用時にガスボンベが冷たくなる理由なのです。ところが、過度に熱せられてTの値が異常に高いと、Pの値もそれに伴って異常に高くなるということも、この式からもわかります。
無知な他人はあなたを守らない、最後にあなたを守るのは、あなたの知性だけ
冷たいようですが、よく心理学では、「あなたのことは、周りの他人はほとんど関心がない(気にかけない)」といわれます。実際にそうであり、だから、理不尽な事故が起きたりするのです。でも、安心してください。あなた自身が、自身を守るための知性を身につけ、危険を察知したらすぐに予防行動をとることができれば、少なくともあなた自身は助かるのです。
もう一つ、重要な社会法則があります。それは、「愚には愚が集い、賢には賢が集う」ということです。このFMGは、日経や各種業界紙を理解するだけの能力がある一定以上の知性を持つ方を想定読者としていますので、お読みいただいているあなたも、きっと知を大切にする賢い方ではないかと確信するところです。ですから、日頃からこのFMGをご愛読いただいており、コメントで大人のコミュニケーションできる方は、まず安心していただいてよいと思いますが、残念ながら、世の中には、愚民が集う場所というのも存在します。そのような場所にあなたが居合わせば、あなたも周りと同じように愚かになっていき、このような理不尽なトラブルに巻き込まれるリスクも高くなるというわけです。善くも悪くも、知性は周囲から感染するといってもよいでしょう。さきほど、「あなたのことは、周りの他人はほとんど関心がない(気にかけない)」と述べましたが、この傾向は、知性の高さに反比例する傾向があります。すなわち、周囲の人の知性が低ければ低いほど、あなたのことを気にかけず(自己中心的であって)、周囲の人の知性が高ければ高いほど、あなたのことを思いやってくれる(利他的になる)のです。「君子(≒賢者)危うき(≒愚)に近寄らず」とはまさにこういうことなのです。
以上のことから、あなたが理不尽な思いをせず、助かるためには、愚の集う場所には近づかず、賢が集う場所に積極的にいくようにし、あなた自身で身を守るだけでなく、互いに助け合うセーフネットを構築する日頃からの努力が大切になるというわけです。「人はなぜ勉強するのか」、その一生の命題に対する最適解を導く行動様式のひとつだともいえます。
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