農芸化学の専門家が伝授する、ゴキブリとの正しい向き合い方

研究用に使用するゴキブリの飼養経験もある農芸化学の専門家鮒ちゃんが、しがらみのない中立的な立場から、ゴキブリとの正しい向き合い方を伝授します。

ゴキブリは駆除すべきか?

「ゴキブリはさほどの実害がないから、駆除しなくてもよい」という方もいます。たしかに、ゴキブリは、法令上はイエバエや蚊と同じ「衛生害虫」の範疇に入りますが、今日の衛生状態にあっては、衛生上脅威ではないという見方は、アカデミアの中にもあります。衛生害虫として恐れられるのは、おそらく、その敏捷性と運動能力で、不衛生な場所を行き来することに加えて、その脂ぎった外観の強烈な印象によっていると思われます。少なくとも現在においては、感染症や重篤なアレルギーの原因となるようなことはきわめて少ないですが、糞のあの独特な悪臭で食品などが汚染されるうえ、その強い誘引性のある糞を新たな巣作りの手がかりにされたりするので、やはり、発生を抑えられるように駆除はしたほうがよいです。

ゴキブリ駆除剤の問題

今から四半世紀くらい前は、燻蒸剤やDDVP蒸散プレートが多く使われ、化学物質過敏症の原因のひとつとして問題となりました。現在は、これらに取って代わるように、少量噴霧型の蒸散剤(商品名例:ゴキブリムエンダー(大日本除虫菊)、おすだけアースレッド無煙プッシュ(アース製薬)など)が、ドラッグストアなどでの販売の主流になりつつあります。やはり、使用量が少量とはいっても、有効成分の蒸散性合成ピレスロイドを室内に徐々に充満させることで、効果を発揮するものですから、その人慢性毒性の影響は問題となります。少量噴霧型蒸散剤の蒸散性ピレスロイドには、常圧沸点が200℃前後のものが選ばれており、フェノトリンやペルメトリン(有機塩素あり)、メトフルトリン(有機フッ素あり)が使用されています。いずれも、化学物質過敏症発症の引き金になるリスクが高いものですので、決して使用してはならないものです。

ベイト剤にも問題があるものがあります。フィプロニルは広義のネオニコチノイド殺虫剤であり、最近の製品に多く使用されています。ヒドラメチルノン製剤も毒性が強いものになります。いずれも、ゴキブリ駆除専門(PCO)業者が使用する業務用薬剤の有効成分としても使用されています。

ゴキブリ駆除剤の正しい選び方と使い方

ゴキブリ駆除剤は、ホウ酸ベイト剤を使用すれば、ほぼ見かけなくなります。ホウ酸は少量ではあるものの、土壌など自然界にもよく見出される物質であり、不揮発性ですから、曝露のリスクは最小限に抑えられますし、使用時や廃棄時の環境影響も少ないものになります。ゴキブリが特に頻出する場所に設置するのが効果的です。万一、目撃したら、除虫菊エキスを有効成分とするエアゾール剤を集中噴霧して速やかに駆除します。除虫菊エキスのエアゾール剤はノックダウン効果に優れており、マダニにも有効ですので、とくにマダニが発生する地域では、マダニのリスクに備えるためにも、常備しておくと安心です。除虫菊エキスのピレトリンは、光と水分(湿気)によって分解が進み、残留しないという利点があります。さらに、忌避剤として、ベチバー精油が非常に優れた効果を発揮します。ベースノートの精油で長期間忌避効果が持続するというのも、他の忌避効果がある精油には少ない特長です。折りたたんだキッチンペーパーに含浸させるなどして使用するとよいでしょう。忌避剤を使用する場合は、ホウ酸ベイト剤の誘引効果を妨げないよう、ホウ酸ベイトを設置していない居間などに設置します。(忌避剤には殺虫効果はありません。)

クモやヤモリ、カエル、ゲジは大切に

クモはゴキブリの幼虫を、ヤモリ、カエル、ゲジに至っては、ゴキブリの成虫も好んで捕食してくれます。これらの天敵は大切にし、決して駆除したりすることのないよう、注意してください。

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