フッ素系ピレスロイドメトフルトリンの水生生物毒性と化学物質過敏症誘因リスク

メトフルトリンは、住友化学が開発した有機フッ素系ピレスロイドであり、常温常圧下でも蒸散性を有するSVOC(半揮発性有機化合物)としての特性を活かした殺虫剤製剤(カートリッジ型蚊取り器のカートリッジ液剤、少量スプレー型蒸散剤、蒸散プレート剤など)に、近年、使用事例が急増している成分です。

メトフルトリンの構造式(アルコール部分の有機フッ素に注目)

下記の毒性値は、メトフルトリンの水生生物に対する96時間半数致死濃度(96h-LC50)の報告例のひとつです。(毒性値の報告は諸説(複数)ある可能性があります。また、被験生物の特性上、各アッセイで得られる毒性値の間で大きなばらつきが生じる可能性があります。あくまで参考程度とお考えください。)

  • ヒメダカ:8.28
  • コイ:3.06
  • ニジマス:1.20
    (単位はmg/kL=ppb)

量をわかりやすくするために、身近な例で説明すると、

満杯の家庭用浴槽(約0.2kL)なら、約1.66mg(耳かき1杯にも達しないごく微量)が含まれるだけで、ヒメダカの半数が96時間以内に死亡し、

小学校によくある25mプール(長さ25m×幅16m×水深1.2m=約480kL)なら、約576mg(一般的なキッチンスケールで量り取ることのできない微量)が含まれるだけで、ニジマスの半数が96時間以内に死亡するという毒性になります。このように、水生生物に対しては猛毒であるということがおわかりいただけるかと思います。

さらに、コイにおける生態濃縮性は、110〜120倍であり、高い生態濃縮性も認められています。

一般に、ピレスロイドは、合成のものも含め、人を含む哺乳動物に対する急性毒性は、ピレスロイドの解毒に有効な代謝酵素が存在するため、比較的低いと考えられていますが、ピレトリンから大きくかけ離れた分子構造を有するフッ素系ピレスロイドは、そうでもなく、人に対しても高い神経毒性が疑われています。高度にフッ素化されたアルコール部分のベンゼン環の存在によって、特異な脂溶性を有している可能性があることが、高い生態濃縮性や、神経毒性が疑われる化学構造論的根拠となり得ます。(一般的に、高度にフッ素化された有機化合物は、C-F結合を全く含まない有機化合物にはないような親和性を持っているとされており、合成樹脂に対する特殊溶媒(HFIPなどの有機フッ素系溶媒)は、このような特性を利用したものです。)従来のピレスロイドにはみられなかったような人の神経系に対する悪影響も懸念されているということは、(従来のピレスロイドよりも)化学物質過敏症発症の引き金になりやすい物質であるということでもあり、厳重な警戒が必要です。

毒性値に関する参考文献:化学企業(A社)発行のSDS
(※公益上の判断により、非公開とさせていただいております。)

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