島根県知事が文部科学省の教育行政を痛烈に批判「算数文章題が解けないようでは義務教育の体を成していない」

「教育現場が一所懸命にやっても結果出ないのは学習指導要領の致命的欠陥」ズバリ指摘

島根県の丸山達也知事は、今年4月に、小学校6年生と中学校3年生を対象に行われた全国学力テストの結果で、とくに小学校6年生の算数の文章題の正答率が全国平均で56%程度しかなく、島根県でも同様に低い傾向(49%程度)があることを問題視し、「文部科学省は児童を置き去りにした教育を(学習指導要領で半強制的に)進めてきた結果、義務教育の体をなさないものとなっている可能性がある。このような教育で義務教育を修了させ、世に送り出すのは、国として無責任だ」「文部科学省は高尚高邁なことを言っているけれども、整数の四則演算のような(日頃の買い物で使うような)日常生活での生きる力も育てられないようでは、江戸時代の寺子屋に通わせたほうがマシだ(現代の学校教育は寺子屋以下だ)。それで何が『英語』『理系人材』『デジタル人材』だ」「小学校の整数四則演算のような基礎的な算数の能力が育たないままで、中学校で『一次関数』だの何だのといった数学を学ばさせるのは、もはや虐待ではないか」と、22日、文部科学省の教育行政の欠陥を痛烈に批判しました。全国学力テストの結果は、7月に発表され、21日には、この結果を受けての島根県内での対応を島根県教育委員会に要請したということです。

問題の例題はこちら

丸山島根県知事がとくに正答率が低い問題として例示したのは、小学校6年生の算数で出題された次のような文章題です。

「4脚で重さ7kgのいすがあります。では、このいす48脚の重さは何kgですか」

銀鮒の里学校の模範解答

このいすは、4脚で重さ7kgですので、4脚で1組としたいすの組数は、

48 ÷ 4 = 12(組) …(1)

となります。

このいす1組の重さは7kgですので、12組では、

7×12 = 84 (kg) …(2)

となります。

式(1)(2)をひとまとめにした、いすの組数での重さについての式では、

7 × (48 ÷ 4)= 7 × 12 = 84 (kg) //

となります。

よって、いす48脚の重さは、84kgです。

(解)84kg

文章題は、純然たる算数力を問う問題ではなく、文章読解力という国語力的要素と連動した算数力を問う総合的問題です。現代の児童・生徒は、純然たる算数力を問うだけのような単純な問題は得意であっても、他の要素が関わった途端に解けなくなるといった総合力の欠如が、教科教育における最重要問題のひとつとなっています。この文章題で重要なのは、「4脚が束になったものとして、ばらせない1組で考え、その組数での総重量を問うものだ」と即座に読み取ることができるかどうかです。

例えば、農業の現場でも、このような計算力を問われることはよくあることです。

「一袋20kgの硫酸加里24袋と、40L入りの植物性堆肥36袋がトラックで納品されました。これらの荷物を耐荷重1トン、自重30kgのパレットに載せて、耐荷重1トンのフォークリフトで運ぼうとしています。これらの荷物を均等に、かつ、最少の回数で運ぶには、どのように運べばよいですか。なお、この植物性堆肥のかさ比重は、0.35であり、袋の重量は無視できるものとします。」

この文章題は、前の例題よりもかなり複雑ですが、文章の意味や関係を正しく理解すれば、小学校6年生までの算数の学習内容で十分に解くことのできる問題です。万一、実際の現場で間違えた答えを出すと、事故のおそれもあります。

この問題の模範解答は、次のようになります。

納品された硫酸加里の総重量は、

20 × 24 = 480 (kg) …(1)

納品された植物性堆肥1袋あたりの重量は、この植物性堆肥のかさ比重が0.35であることから、

40 × 0.35 = 14 (kg) …(2)

(2)式から、納品された植物性堆肥の総重量は、

(40 × 0.35)× 36 = 14 × 36 = 504 (kg) …(3)

(1)(3)式から、納品された荷物の総重量は、

480 + 504 = 984 (kg) < 1,000 kg  …(4)

となります。しかし、荷物を耐荷重1トンのフォークリフトで運ぶためには、自重30kgのパレットを少なくとも1枚使う必要があるため、このパレット1枚を含めた荷物の総重量は、(3)式より、

984 + 30 = 1,014 (kg) > 1,000 kg …(5)

となり、1回で運ぼうとすると、フォークリフトの耐荷重を超えてしまい、従って、1回では運べないことになります。

(4) 式より、2枚のパレットに均等に2分割し、それぞれのパレットに載せた荷物をフォークリフトで運ぶことを考えると、硫酸加里の袋数も植物性堆肥の袋数もどちらも2の倍数ですので、それぞれの袋数を均等に2分割することができます。均等2分割した荷物1組の総重量は、(1)(3)(4)式より、

20 × (24 ÷ 2)+ 14 ×(36 ÷ 2) = 20 × 12 + 14 × 18 = (20 × 24 + 14 × 36)÷ 2 = (480 + 504) ÷2 = 984 ÷ 2 = 492 (kg)…(6)

実際には、(6)式で求めた総重量の荷物を、自重30kgのパレットに載せて、耐荷重1トンのフォークリフトで運ぶため、パレット1枚の重量を含めた、フォークリフトで1回に運ぶ荷物の総重量は、(6)式より、

492 + 30 = 522 (kg) < 1,000 kg …(7)

となります。

よって、(6)(7)式より、1枚のパレットに硫酸加里18袋と植物性堆肥18袋を載せたものを1組として2組に均等分割し、1組ずつフォークリフトで2回に分けて運べばよいことになります。 //

(解)パレット1枚に硫酸加里12袋と植物性堆肥18袋とを載せた組を2組つくり、フォークリフトで2回に分けて運ぶ

瑕疵の多い学習指導要領への準拠を半ば強制される杜撰な義務教育を続けてきた結果、現代の社会人は、様々な学び直しを強いられることになっています。もちろん、社会人になっても学び続けることは必要ですが、義務教育過程の教育水準が十分に高く、適正であれば、「リスキリング」といえるほどのガチの再教育を受ける必要性があるというほどではなくなるはずです。算数・数学にかぎらず、とくに化学では、中学校の理科程度しか学んでいないという人も多く、日常生活の安全や環境保全の観点で問題の多い生活をしている人が多い実態があります。銀鮒の里学校が(プログラミング教育や小学校での英語教育などよりも優先して)化学必修化を優先スべきだと訴えるのには、そのような背景があってのことなのです。

学習指導要領を押し付けながら「学校教育行政は地域の独自裁量で」:失政をもたらす文科省の矛盾

「学習指導要領は必ず準拠せよ」と、各学校や教育委員会には押し付けておきながら、「学校教育行政は各地域の教育委員会や学校の裁量に委ねますので、文科省は関与しません」との逃げとも取れる矛盾。商業ゲームやトレーディングカードゲームなどの商業依存的で低俗な遊びの問題にしても、マクドナルドなどのジャンクフードの問題にしても、「うんち」「つばっき」などの、生涯の健康にも関わる教育にしても、文部科学省の行政としては全く関与していないという実態があることを、FMGや銀鮒の里学校も指摘しています。

島根県の丸山達也知事も、このような文部科学省の無責任体質が、「公教育現場の教職員の負担をやたらに増やし、その結果、教職員ががんばっても報われず、全国学力テストの結果にも現れている。児童生徒に寄り添った教育ができないのに、教職員は忙しすぎて疲弊している」というように、歪な公教育の実態を生んでいることを指摘しており、銀鮒の里学校も丸山島根県知事の文科省批判と改善要請を支持しています。

忙しくがんばっても結果が出ず疲弊するというのは、仕事のやり方そのものが誤っているか、社会的な受け皿に問題があるということのあらわれです。2020年度から順次改正された学習指導要領は、ESDに準拠していると、文部科学省は建前上は自信をみせていますが、前述の算数文章題のように、ESDで重視されている教科の枠を超えた「つながり」のある能力の育成は不十分な実態が露呈するなど、まだまだ現実には問題が多いというのが正直なところです。文部科学省として推進するギフテッド教育も今年度から始まっているといいますが、現状では期待すべきではないでしょう。文部科学省は、現場で様々な問題を生んでいる学習指導要領や丸投げ(シカト)体質を根本から是正し、公教育においても、オルタナティブ教育においても信頼される教育行政に是正すべく、各方面から批判や指摘を真摯に受け止めたうえで、直ちに是正行動に反映させるべきです。

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