フクイチALPS処理水海洋放出で日本の農業も大打撃、その理由

漁業関係者の猛反対を押し切り強行

トリチウム(三重水素)などの放射性物質を含む可能性がある東京電力福島第一原発事故後の廃炉処理水(ALPS処理水)の太平洋への海洋放出が、地元漁業関係者などの猛反対を押し切るかたちで、24日13時から、東京電力によって強行されました。日本政府は、「いずれの放射性物質も基準値以下であり、放出し続けても問題がないことを確認している」と建前上は強気の姿勢を貫いていますが、この解釈には注意が必要です。有害物質の環境基準というのは、あくまでもその時点での社会的価値観に大きく影響を受けるものであることから、将来的には、新しい科学的知見や海外の動向などにも影響されて大きく変更される可能性も否定できません。ですから、「環境基準以下=環境にやさしい」という政府にとって都合のよい、一見して科学的ととれるような表現には注意が必要なのです。昨今のPFAS(有機フッ素化合物)の問題にもあるように、「わからないこと=軽視ないしは無視」ということも日本の行政ではごく一般的にはびこっている慣行であり、メディアなどでクローズアップされてきて無視できなくなってから、ようやく本腰を入れ始めるという姿勢からも、日本政府は予防の原則に基づく行動がきわめて脆弱であることがおわかりいただけるかと思います。このような、しばしば流動的な環境リスクに関する科学的解釈を、実際の社会の実情に合うよう、総合的に補正するのが、哲学的熟考によるアウトプットです。

中国・香港は経済制裁で即刻抗議行動、韓国は静観も制裁匂わす

日本政府がALPS処理水海洋放出を強行したことにより、海洋で接している中国や香港は経済制裁で怒りの経済制裁を発動しています。中国政府とマカオ政府は、福島第一原発から近い福島県を含む10都県からの農林水産物の輸入禁止を、香港政府は、同じく10都県からの水産物の輸入禁止を即日発動しました。「安全性上の理由」と説明していますが、これはあくまでも建前上の説明であり、真意はもっと深いところにあると捉えるべきです。中国政府は、日本政府のALPS処理水放出を容認したことについて「きわめて無責任だ」とも批判しており、有事の際にこれだけ問題が大きい原発を、いまだに懲りることなく再稼働や「次世代原発」を新設しようとしていることや、過去の過ちは「水に流す」という、日本人の悪い癖ともいえる安易な行動に、怒りの矛先が向いているのではないかともとれます。

韓国は最も近い隣国ということもあってか、「現状では科学的には問題がないと判断している」と、日本政府への外交的配慮ととれる説明をしながらも、「今後、説明とは異なる悪い状況が生じた場合には、直ちに制裁措置を検討する」とも匂わせています。真意は後者のほうであり、韓国政府は、日本政府の瑕疵を探り、制裁措置を科学的に実行できるタイミングを虎視眈々と狙う真意があるとみられます。

漁業だけではない!日本の農業も壊滅的打撃!その理由

海洋放出ですから、漁業に直接的な打撃が及ぶ可能性があることは容易に理解できると思います。しかし、実際には、日本の農業にも、今後壊滅的な打撃が及ぶとも考えられます。なぜでしょうか。

実は、今日の日本では、日本国内での農業生産物の売上の多くを海外への輸出に頼っており、その輸出額の約4割を、今回、輸入禁止措置をとった中国や香港が占めています。さらに、韓国や台湾を含めると、5割を超えることになり、輸出先の多くを近隣の東アジアの国や地域に依存している実態があります。中国政府の日本政府への怒りは続くとみられ、今後、当面の間は、輸出向け農産物を生産する日本の農家は、売上を得る機会の少なくとも約4割を失うことになるのは必至とみられます。

日本の農産物は、中国や香港・マカオの富裕層の間では、「品質や食味が桁違いによい」「正直で透明性が高い」「安全・安心」などと高く評価されていますが、中国政府などによる禁輸措置の発動によって、そのような評判はなかったことになるわけです。これは、日本の農業にとって計り知れない大損失であると認識すべきです。

中国政府には、自国の都合を最優先で考える身勝手な側面が強く、そのような特徴がチャイナ・リスクととられることもよくあります。「どうせ日本は農産物輸入禁止国だし、そんな国に中国製の肥料を輸出する理由がどこにあるのだろうか」という動きをされたらどうでしょうか。これは、農業者でもある記者としていわせていただきます。最近、ガソリンの価格が高騰する中で、肥料価格は高騰前の価格に値下がりしつつあり、尿素の肥料以外の主要用途であるディーゼル排ガス処理剤AdBlueの供給不安も聞かれなくなっています。日本国内で使用される化学肥料の多くは中国からの輸入に頼っており、肥料価格の正常化は、中国による輸出渋りが軽減してきていることのあらわれだと考えられます。やっと化学肥料が調達しやすくなっているのに、日本政府はまた中国政府の逆鱗に触れるような暴挙に出たわけです。この中国政府の怒りの矛先が、中国には禁輸で何の恩恵もない日本の農業の糧、すなわち肥料に向けられたら、またも肥料の価格高騰を招くことになるかもしれません。肥料価格の正常化への安堵もつかの間、今後の中国政府の動向次第では、またも肥料高騰を招くのではないかとの不安もあります。

ALPS処理水問題に関して、今、日本国民一人ひとりは何をすべきかを考えるべきではないでしょうか。

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