相次ぐカンピロバクター食中毒、福島では無許可のヤミ店で

半生や生の鶏肉提供も、岡山県津山市

岡山県津山市の居酒屋「鳥八」で、鶏肉料理を食べた20代から40代の男性客4人が、カンピロバクター食中毒を発症し、うち、30代の男性1人が入院しました。この4人は、3月18日に、問題の居酒屋で鶏肉料理のコース料理を食べたということで、このコース料理のなかには、提供が禁止はされていないものの、保健当局がカンピロバクター食中毒のリスクが非常に高いとして、不食を強く勧告している半生の鶏肝や生の砂ずり(漬け刺し)が含まれていたということです。この居酒屋は、3月30日から4月3日まで、岡山県美作保健所による営業停止処分を受けたということです。

ヤミ営業でカンピロ食中毒、営業禁止処分に、福島県福島市

福島県福島市の飲食店「鳥庄」で、3月17日以降に焼鳥などを食べた男女27人がカンピロバクター食中毒を発症していました。発症の27人は、加熱が不十分な鶏肉を食べていたとみられるということです。この飲食店は、店の看板に「鳥焼」と標榜していましたが、保健所の許可を得ることなく1月から営業するというヤミ営業の実態があったといい、福島市保健所はこの店を4月3日付で営業禁止処分にしたということです。

養鶏で使用される抗菌剤に対する薬剤耐性発達の実態を指摘、広島大学

カンピロバクター食中毒の原因菌であるカンピロバクター・ジェジュニにおいて、すでに養鶏で使用されるニューキノロン系合成抗菌剤などに対する薬剤耐性が発達しており、このような薬剤耐性が、自己増殖型の非染色体DNAである、伝達性のプラスミドを介して、薬剤耐性を持たないカンピロバクター・ジェジュニに、遺伝子レベルで伝播されるおそれがあることを、広島大学の研究で突き止めています。これは、単に淘汰と増殖とを繰り返すよりも、はるかに効果的に薬剤耐性を発達させる可能性があることを示唆するものといえます。

【研究成果】日本で流行しているカンピロバクターがプラスミドを通じて抗菌薬耐性を獲得していることを発見

農薬問題よりもはるかに厄介な養鶏ニューキノロン問題

市場に流通する生鶏肉の半数以上から、セファロスポリン系抗生物質などの抗菌薬が持つ部分構造であるβ-ラクタム環を分解する酵素(ESBL(=Extended Spectrum Beta Lactamase;基質拡張型β−ラクタマーゼ)およびAmpC)を産生する薬剤(セファロスポリン)耐性細菌が検出されたという実態が、6年前、厚生労働省のレビューで明らかにされています。このレビューによると、セファロスポリン耐性菌の出現頻度は、今から15年くらい前の2008年から3年程度の期間をピークにして増加しており、今から12乃至は13年前の2010年から2011年にかけて、セファロスポリン系抗生物質の一種であるセフチオフルの養鶏での使用が禁止されてからは、経時的に低下しているとあります。しかし、その一方で、前出の広島大学の研究報告にもあるように、現在、肉用鶏の養鶏で使用されているニューキノロン系(フルオロキノロン系)合成抗菌剤に対して耐性をもつカンピロバクター属などの細菌が見出されるようになっており、現在のAMR問題の主流になっています。すなわち、これらのサーベイランスは、抗菌剤を禁止する政策によって、その種の薬剤に耐性を持つ細菌の出現頻度は低減できることが期待できる一方で、その時点で多く使用されている抗菌剤に対しては新たに耐性を獲得されるリスクが高く、抗菌剤を多用する状況が是正されないかぎり、いたちごっこの状況は不可避であることを意味することになります。

セフチオフル(養鶏では2010年から2011年以降使用禁止)
エンロフロキサシン(ニューキノロン系合成抗菌剤)
オフロキサシン(ニューキノロン系合成抗菌剤)
ノルフロキサシン(ニューキノロン系合成抗菌剤)

養鶏問題と持続可能性

これは、決して農薬を使用することを推奨するわけでも、農薬業界を擁護するわけでもありません。正直なところ、必要不可欠で節度をもって使用される(植物用の)農薬の問題というのは、人の保健に限っていえば、現状では非常に軽微なものであり、スーパーなどで市販されている慣行栽培の野菜を食べたことによる、残留農薬を原因とする直接的な健康問題のリスクはほぼ皆無といえるものです。ところが、鶏肉のニューキノロン問題は、前掲の岡山県や福島県での食中毒事故事例にあるように、鶏肉の低温調理や生食、半生調理など、不適切な調理方法の鶏肉を食べることで、カンピロバクター食中毒というかたちでダイレクトに被害をうけるリスクが高いといえます。さらに、持続可能性という観点に概念拡張すれば、工業的養鶏という産業そのものが、人獣共通感染症の鳥インフルエンザのリスクを高めるおそれや、有機肥料である鶏糞への殺虫剤(シロマジン)コンタミネーションの問題、地球温暖化の促進要因になるなど、数多くの問題を抱えています。カンピロバクター食中毒の予防という観点にかぎっていえば、鶏肉の加熱調理を念入りに行うことで対策はできますが、社会全体、地球全体の問題を解決しようというのであれば、それだけではダメで、鶏肉や鶏卵を食べること自体をやめていくことや、ヴィーガンを目指すということも、重要な取り組みということになります。

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