園芸先進国といえば、イギリス、オランダ、イタリアやアメリカなどの欧米ですが、これら欧米のガーデナーや園芸家の間で、高評価を得ている科があるのをご存知でしょうか。しかし、日本発の園芸関連のYouTubeチャンネルでは、この科を推すガーデナーや園芸家は、私が知るかぎりではいません。そこで、園芸歴39年のヘンな鮒が、園芸先進地域の欧米で親しまれてきた、今秋、外せないと推す、玄人ならだれでも納得の科を、あえてフィーチャーしたいと思います。その科とは、
スイカズラ科(旧 オミナエシ科&マツムシソウ科)
です。わすれかけていたものの、「あー、あの科ね!」と気づかれる方は少なくないのではないでしょうか。このように日本では、パンジーやビオラのような華やかさに押されて陰をひそめているせいか、山野草のような落ち着いた雰囲気で地味な印象があるからか、見向きもされない比較的マイナーな種であるため、種子や苗は入手が困難な場合が多いです。それでも、推すからには、ぎんぶなのうえんは、その秋蒔き種子をしっかり押さえています!いま、春化処理※中で、気温が一気に下がりはじめる明日21日から、順次種まきをしていきます。園芸店でみかける派手な品種ばかりに疑問を感じている、そんな園芸通のみなさん、開園前の能勢・ぎんぶなのうえんで、ヘンな鮒と一緒に、スイカズラ科の種まき、楽しみませんか?
とくに推す具体的な属としては、
スカビオサ(マツムシソウ;旧 マツムシソウ科)とバレリアナ(カノコソウ;旧 オミナエシ科)です。
これらの属について、ぜひ、画像検索をしてみてください。他の花では類まれなほどの、なんともいえない花の造形美と、ガーデンに上品な印象を与えるその草姿のバランス感に、おそらく魅了されることと思います。
バレリアナは、花は遠目では地味な感じもしますが、レース生地のような造形美のある花で、優しい香りがあります。和種のカノコソウ(吉草)の根は日本薬局方に、洋種のセイヨウカノコソウ(トゥルー(コモン)・バレリアン)の根も、欧州の薬局方にそれぞれ、鎮静薬としての収載があります。いずれも、中級脂肪酸特有の臭いがあり、吉草酸(Valeric acid)の語源になったことでも知られる、化学史上重要な植物のひとつでもあります。ここ数十年の天然物化学研究でも、根から特有のイリドイドを出すことがわかってきており、その分子構造からも、抗菌性や防虫作用がある可能性があることから、農薬代替の「植える農薬」IPM試験でも用いることを検討しています。
スカビオサも、皮膚病の疥癬に効く生薬として役立つと信じられてきたことが、属名の語源になったといわれています。
これらのスイカズラ科植物は、アブシジン酸の作用による休眠が深いせいか、発芽には比較的長い日数を要することがあり、種まきには若干クセがあるようです。とくに宿根性のバレリアンは、発芽適温下でも、発芽までに3週間以上を要するとされているようです。万全を期すため、湿潤条件下で低温にさらして擬似的に冬を経験させ、休眠を打破する春化処理による発芽率向上を試みています。
スイカズラ科の他にも、園芸店ではなかなかお目にかかれない、厳選した秋蒔き候補種を多数揃えています。独力や他の農園ではできない、一歩進んだ園芸の世界に触れたいという方(とくに親子歓迎)は、ワークショップの機会を調整しますので、ぜひ、銀鮒の里アカウントを取得・ログインのうえ、ご連絡ください。
※ 春化処理は、最高気温でも5〜10℃以下まで下回るような明瞭な冬季がある温帯ないしは寒帯(ケッペンの気候区分によるCまたはD気候地域)を原産地とする、深い冬季休眠の生態がある植物に有効な休眠打破処理です。明瞭な冬季のない(亜)熱帯(ケッペンの気候区分によるAまたはC気候地域の一部(アンデス山脈などの高原等))地域を原産地とする植物には適用できません。
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