種蒔きは春蒔き重視をおすすめします!その理由とは?

YouTubeなどで、園芸作業、とくに温帯性の植物の園芸作業は、秋重視をおすすめしている園芸家の方がいらっしゃいます。ある意味では正解なのですが、これにはプロとして異論があります。能勢・ぎんぶなのうえんでは、園芸作業、とくに種蒔きは春蒔き重視をおすすめします。その理由をざっくりというなら、少なくとも能勢の場合、春のほうが、生育適正温度の期間を長くとることができるからです。秋の能勢は、9月でも残暑がある年もあり、純粋に生育最適気温といえる時期は1〜2ヶ月くらいしかありません。品種の範囲も限られ、とくに、熱帯性の品種の場合は、暖房付きの温室がないかぎり、秋蒔きの選択肢はありません。一方、春の場合は、品種によって差異はありますが、冷温帯性の早いものでは保温トンネル内で2月から、熱帯性の遅いものでは6月までと、最大で5ヶ月間、春の種蒔きと育苗に、十分なゆとりをもって使うことができます。秋蒔きしかできない品種のなかには、逆算すれば、秋の作業が想像できないくらいの猛暑の7〜8月から種蒔きをしないと間に合わないものもあり、生育に不適切な猛暑時に秋の作業をしなければならない矛盾に悩まされます。秋蒔きしか選択肢がない品種であれば仕方がありませんが、もし、秋蒔きも春蒔きも可能な品種であれば、そのような品種では、春蒔きにしたほうが確実に好成績が得られることが多いことを知っておいてください。

発芽適温15〜20℃の冷温帯性品種は2〜3月のうちに

発芽適温15〜20℃とある品種は、比較的低温で発芽する性質の品種ですが、この「15〜20℃」には、あまりこだわる必要がありません。こだわりすぎた結果、種蒔きの時期を逃してしまうことも多く、本末転倒になってしまうからです。実は、冷温帯性の多くの品種では、間欠的な温暖刺激(15℃前後)があれば、冷蔵庫温度(0〜10℃)でも発根する性質があります。発根可能というより、むしろ、発芽が促されることが多くあります。これは、温暖刺激を受けることで、これを春だと認識して、発芽発根促進作用のある植物ホルモンであるジベレリンの種子内生成が促されるからです。このような特性を利用した園芸・農業技術を春化処理といいます。能勢・ぎんぶなのうえんでは、発芽に3週間を要するバレリアンなどのスイカズラ科植物種子の春化処理を1月中から順次始め、2〜3月の播種に合わせる予定です。

発芽適温20〜25℃の温熱帯性品種は3〜5月に、寒の戻りや遅霜に注意

発芽適温が比較的高めの20〜25℃の品種の播種適期は、ソメイヨシノの開花期以降の4月ですが、条件さえ合えば、保温トンネルで3月から行うことができ、むしろそのほうが、以後の育苗や定植後の生育にゆとりができます。この時期は、とくに能勢では寒の戻りや遅霜が問題となり、とくに熱帯性品種の早蒔きは低温障害で一発でダメになってしまうこともあります。確実をとるなら、ソメイヨシノが散った頃に蒔くとよいですが、その場合は、育苗が遅れることがないよう、注意が必要です。育苗時の窒素肥料は、尿素よりも硫安のほうが生育を早める効果が大きく適しています。その際、育苗用土には、ようりんなどの塩基性元肥を十分に混ぜ込み、施肥による急激なpH降下を和らげる工夫が重要な意味を持ちます。

発芽適温25〜30℃の熱帯性品種は4〜6月に、ゆとりをもちつつ、蒔き逃しに注意

オクラなど一部の熱帯性品種では、25℃以上の高温を要求するものもあります。このような熱帯性品種は、急ぐ必要はなく、早蒔きでの低温障害で失敗するリスクが高くなります。育苗時も一度でも低温にあうと枯れてしまいます。そのため、寒の戻りや遅霜の心配がなくなる、他の品種で遅めといわれる4月下旬や5月上旬からが適期です。とくに、熱帯性品種の栽培に重点を置く場合には、熱帯性種子の播種作業を行うまでに、中温帯性品種の播種を完了しておくとよいでしょう。バジルなど、品種によっては、6月に蒔いても遅すぎることはないものもかなりあります。

熱帯性品種の種子は春化処理厳禁

熱帯性品種は、すべてのライフステージで低温にあう機会そのものがありません。一度でも低温にあうと、低温障害で激しく傷むか、枯れる場合があります。あくまでも春化処理は、発芽に際して冬の低温を経験する冷温帯地域原産の植物種子の発芽促進に効果を発揮する園芸・農業技術です。(一方で、一部の冷温帯性山野草など、品種によっては、春化処理(冬蒔き)が必須のものもあります。)播種する植物の原産地の気候や生態をよく理解し、その植物の特性に合わせた播種を心がけてください。

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