能勢・ぎんぶなのうえんだより(2023年3月28日)

クナウティアの発芽

新規導入のクナウティア(2種;いずれも原種)の発芽がゆっくりと始まっています。これらのクナウティアは、ヨーロッパに分布し、成株は性質強健で育てやすい宿根草とされていますが、発芽と初期育苗にはかなりクセがあるようです。クナウティアの種子は、かなり深い休眠があるようで、湿潤条件下で、冬に相当する一定期間の低温に遭い、その後、20℃以上で春を感じることにより発芽すると考えられています。必要とする低温遭遇期間には諸説あり、海外の情報では4週間程度必要とする情報がありますが、当園での実験では、湿潤条件下、冷蔵庫に2週間保管することで、目を凝らしてみてやっと確認できる程度の白い突起状の発根がみられたことから、2週間と割り出しました。(あまり長期間処理すると、病害(カビ)発生のリスクがあることもわかり、安全のため、2週間で切り上げました。)能勢のように、昼夜で春と冬とを行き来するような条件下では、春化処理なしでも発芽するかもしれませんが、その場合は、発芽がかなり不安定になり、最悪の場合は全く発芽しない可能性もあるため、種子の特性上、春化処理は必須と考えたほうがよいでしょう。(温帯地域原産の植物の種子の多くは、春化処理を必要としない種子であっても、春化処理をすることで、発芽率が向上する傾向があります。)

うまくいけば、今秋には自家採種ができ、来年には、その種から営業生産の育苗ができるかもしれません。

意外にも、K.アルベンシスの播種から約10日遅れで播種したK.マセドニカで先に一番芽が確認されました。現在のところ、アルベンシスのクセが強いためか、一気に20℃以上に遭遇したほうが発芽しやすい性質によるものか、はっきりはしませんが、思えば、K.アルベンシスを播種してから何日もの間、夜間に氷点下になる日を繰り返していましたので、そのことが影響して、発芽が足踏み状態なのかもしれません。K.アルベンシスの第二弾を播種して、K.マセドニカと同じような発芽傾向が確認されれば、後者の性質によることだということがわかります。このような性質から想像するに容易しですが、発芽は揃わず、パラパラと発芽するイメージで、営業生産の観点からすれば、かなり悩ましい特性といえます。とくに原種の宿根草にはこのような発芽特性があるものが多く、F1品種の一年草の花付き苗が100〜200円程度で販売されているのに対して、原種宿根草の未開花苗が数百円で売られているのもうなずけます。

スカビオス(旧マツムシソウ科の植物)は、苦土欠乏によって、初期育苗で生長の遅延が生じやすいようですので、特にマグネシウム(苦土)の施肥には注意を払っています。播種・初期育苗用土には、苦土石灰とようりんを予め混和しておき、発芽したら、窒素とマグネシウム・カルシウム(石灰)とが協調的に吸収できるよう、初期育苗に限り、硝酸マグネシウムと硝酸カルシウムを含む液肥を施肥します。

クナウティアといえば、マセドニカのシックな暗赤色の花が印象的なことでよく知られていますが、むしろ私は、アルベンシスの大型山野草の趣ある草姿のほうに惹かれます。深い切れ込みの葉で、ちょうどスカビオサ・コロンバリアの株だけ大型化したような感じで、スカビオサよりも野性味があり、見応えがある原種です。どちらもとても個性的な品種ですので、ナチュラルガーデンの素材としてはとても優秀だと思います。種子を導入しての育苗中のため、ぎんぶなのうえんでの開花写真はありませんが、ぜひ、品種名でウェブ検索をしてみてください。

フロックスは安定に発芽

フロックス・ドラモンディは、能勢特有の夜間の冷え込みの影響もあったためか、2週間以上の時間は要したものの、27日現在では、青々した子葉がほぼ出揃っていました。しかも、春化処理なしです。クナウティアやスカビオサと比べると、フロックス・ドラモンディは発芽もかなりしやすく、そのうえ、発芽が揃いやすい特徴があります。フロックス・ドラモンディはハナシノブ科ですが、スイカズラ科のようなクセはほとんどありません。最適条件では、7〜10日程度で発芽が揃うはずです。このような結果を期待して、近日中に第二弾の播種を行う予定です。

今後の播種予定

平野部にお住まいの方にとっては信じがたいかもしれませんが、能勢では、つい最近まで、夜には氷点下になる日が続いていました。暖かい日でも、午後5時頃には、温度計の指示値が10℃を下回ります。夜だけとはいっても、これほど冷え込むと、発芽にかなり時間がかかってしまうようです。能勢町の天気予報では、木曜日くらいまで、夜間、一時的に氷点下に達してもおかしくない予報が出ています。当面の間は、カンパニュラやダイアンサス、スカビオス(旧マツムシソウ科)やバレリアンといった、低〜中温域(15〜20℃)が発芽適温の植物の播種が続く予定です。4月に入る時点で、トマトや唐辛子のトンネル播種を始め、トマティロやチトニア、ダリア、ブロワリアなど、亜熱帯から熱帯地方が原産で、発芽適温が25℃前後の中高温域にある植物については、4月中旬頃から播種を開始する予定です。

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