能勢・ぎんぶなのうえんだより(2023年3月21日【春分】)

きょうは二十四節気の春分です。太陽黄経が0度に戻ることから、天文学的にいうところの一年の初日ということもできます。これから秋分までは、太陽黄経(θ)に関しての正弦(sinθ)が正の値となり、昼の長さが夜の長さを上回る陽の季節です。世界的には、学校などの年度始めは秋のことが多く、日本でも年度初めを秋に変更することの是非がしばしば議論になりますが、「満開を迎える桜のなかで入学式や新生活」こそが日本の年度初めのスタイルだとして、日本人のこころに広く深く定着していることから、今後しばらくの間は、これまでどおり、3月末日が年度末、4月1日が年度初めの現状維持が続くことでしょう。4月年度初めの日本スタイルは、春分から10日程度の誤差はあるものの、天文学的にも理にかなっているのかもしれません。

能勢特有の昼夜寒暖差

それにしても、最近の能勢の昼夜の温度差の凄まじさには、ほんとうに驚かされもし、悩まされたりもします。昼間は平野部とほとんど変わらない20℃を超える日もあるのですが、そんな日でも、夜には氷点下にまで下がる日が、3月中旬でもあったりします。最近ようやく、最高最低温度計の最低気温の指示値が0℃まで上がり、今後はよほどの寒の戻りがないかぎり、0℃を下回ることはないと思います。「暑さ寒さも彼岸まで」というように、そう信じたいきょうこの頃です。

そのためでしょうか、3月上旬に春蒔きした種子の発芽が足踏み状態です。スカビオサ・アトロプルプレア(アニュアル・スカビオサ)やスカビオサ・コーカシカは、昼間の瞬間値では40℃を超えることもある無加温の保温フレーム蒔き(一般的なビニルハウス相当の環境)にしてはいるのですが、夜にガツンと冷えるせいでしょうか、少しずつ発芽し、通常よりも時間がかかっています。クナウティアは、種がせり上がってきて、発芽の気配はあるのですが、双葉の展開はみられません。フロックス・ドラモンディ(アニュアル・フロックス)も、やっと緑色が見えだし、発芽が揃うには、2週間以上を要するようです。秋蒔きのほうが充実しておすすめとする説も多いですが、それでも、冬の訪れが早い能勢では、春蒔きのほうがやりやすく、株は少し小さめになるかもしれませんが、これからは暖かくなる一方ですので、確実で心の余裕があるという点ではよいのかもしれません。冬が厳しい能勢では、秋ならお盆明けスタートの早蒔き(平野部よりも1ヶ月程度早め)、メインは寒冷地(東北以北)向けの春蒔きがおすすめのように思います。これまでの春蒔きは様子見のウォーミングアップ期間、春分過ぎのこれからは、春の種まきの最繁忙期、正念場を迎えます。

営業生産に向けて:宿根草の播種

19日の土曜日には、あのバレリアン(Valeriana officinalis)とモモバギキョウ(Campanula persicifolia)の播種をしました。バレリアンは発芽自体は比較的しやすいのですが、初期生育にはやや独特のクセがあり、発芽には3週間以上を要し、そのうえ、発芽は揃わないのが一般的です。ヨーロッパ東部が原産のため、耐寒性も耐暑性もかなりありますが、能勢特有の激しい放射冷却による苗床表土のせり上がりには耐えられず、秋蒔き苗はほぼ全滅してしまいました。モモバギキョウも発芽に2週間程度を要し、細かく清潔な用土を使用し、覆土をせず、霧吹きで丁寧に潅水をすれば、発芽はさせやすいですが、これも冬の厳寒でやられてしまいました。そこで、春に蒔き直しとなったわけです。日本のカノコソウもそうですが、バレリアンは石灰質を多く含む土を好むことから、播種用土にも、苦土石灰とようりんを混和しています。スイカズラ科(旧オミナエシ科・旧マツムシソウ科)は、苦土欠乏で初期生育でつまづくことがありますが、このように、苦土が潤沢に供給されるようにすることで、初期生育が順調になることが期待されるというものです。この苦土はく溶性のため、水溶性でありがちな「一定時間食べ放題型」にはならず、植物が欲するときに欲する分だけ吸収できる「備蓄型」ですので、肥料やけの心配も流亡による肥料切れの心配も最小限にできるわけです。ナデシコ科やキク科などでは、一年草並みに早く発芽するものも一部ありますが、概して宿根草の種子は発芽に時間がかかったり、発芽率が低いことが多いです。宿根草の苗が一年草の数倍の価格で売られていることが多いのもうなずけます。営業生産を目指して取り組んでいますが、営業生産とはいっても、銀鮒の里学校の会員や日頃から銀鮒の里アカウントをご利用いただいているみなさまには、無償か格安で頒布できるようにしたいと考えています。Floral Noseプロジェクトでプロの花卉農家を志している方や、世界に遅れを取っている日本の園芸文化の発展に貢献したいという高い志をお持ちの方は、ご来園を歓迎しておりますので、ご一報いただけますと嬉しく存じます。

天気予報では、今週は菜種梅雨で雨の日が続き、作業は休まざるを得ませんが、菜種梅雨が一段落したあとには、原種ダイアンサス各種、フロックス・ドラモンディ(第二弾)、原種スカビオサ各種(珍種もあり)、セントランサス、キャットニップ(自家採種品)などの播種をする予定です。

現時点での農薬使用状況

現時点において、能勢・ぎんぶなのうえん(能勢圃場)での特定防除資材(特定農薬)以外の農薬使用は一切ありません。

効力・適合性試験を兼ねるため、スカビオサ・コーカシカの種子の一部で、特定防除資材の食酢(40倍希釈;酸度約0.1%、24時間浸漬)による種子消毒を行いました。

農薬を使用しなかったために、スカビオサ・コーカシカとクナウティア(マセドニカ、アルベンシス)の種子にカビ(病害)が発生したことによる損失が生じましたが、残りの種子は正常に発芽する見込みです。

可能なかぎり、未消毒または食酢による種子消毒(代替技術)で対応しますが、今後、種子病害の発生状況によっては、下記の化学合成農薬を使用する可能性があります。(現時点では使用しておりません。)

  • チウラム・チオファネートメチル水和剤(ホーマイ):花卉類 種子消毒
  • キャプタン水和剤(オーソサイド):花卉類 種子消毒

能勢・ぎんぶなのうえんのご来園には銀鮒の里アカウントが必要です!

能勢・ぎんぶなのうえんは、いよいよ4月23日(日曜日)にオープンします。春とはいっても、冬が厳しい能勢での露地栽培ということもあり、まだまだ開花を迎えている花の種類は少なくなっています。4月の下旬頃から梅雨明け頃までが、ぎんぶなのうえんのナチュラルガーデンが最も賑わう時期です。梅雨明けからの約1ヶ月間の盛夏期には一旦花が減り、お盆明けから11月頃まで、次は秋のシーズンを迎えます。

能勢・ぎんぶなのうえんの最大の魅力は、来園者の知らなかった植物の奥深い世界に出会えることで、世界観が驚くほど拡がることにあります。しかも、よくある植物園や農園とは異なり、学びの要素がある深い主体的体験ができます。園芸店で見かけないような花も多くつくっていますし、代用野菜を使うことも多い専門料理店でもなかなか味わえない、本場の本物の味を再現できるような本場の伝統野菜もいくつか作る予定です。これは、マクドナルドを食べないことや、商業ゲームをしない(こどもにさせない)ことを約束いただいた方にだけご提供できる、他では決して得られないであろう特典です。商業的なことに動じず、真の豊かさを追い求める真面目な子育てを強く希求する子育て世帯の方は、迷わずすぐに、銀鮒の里アカウントをご取得ください。

能勢・ぎんぶなのうえんでは、SDGs第11目標:「住み続けられるまちづくりを」をはじめとするSDGsに真剣に取り組んでいます。能勢の里山環境の保全のため、ご来園いただくみなさまには、銀鮒の里アカウントの取得をお願いしております。ご来園の際は、銀鮒の里アカウントでログインすることでご利用いただける独自のコミュニティSNSでのご予約が必要となります。最近、能勢やその周辺では、町外からのツーリスト(観光来訪者)によるとみられるマクドナルドやタバコ吸い殻の不法投棄や搾取的行為などを多く見かけます。このようなことをするのは、ごく少数の心無い者の仕業だと確信したいところですが、実際に行ってみるとわかるように、その割には問題事例が非常に多く、たいへん困惑しています。能勢・ぎんぶなのうえんは、自転車での農園までの往来の過程で、そのような問題の実態をよく目の当たりにしてきており、今後、そのような問題が新たに発生することを未然に防ぐことが必要です。そのために、銀鮒の里アカウントは、能勢町にあるぎんぶなのうえんにかかわるすべての人がwinn(n乗)の関係を保つことのできるようにするための仕組みを提供するものですので、植物をこよなく愛する、心清らかなみなさまのご理解ご協力をお願いします。

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