【農芸化学の技】ぎんぶなのうえんならこうやる!トマト(ナス科果菜)の施肥技術

ようりんは最高の元肥

ようりん(熔成リン肥)は、非常に効率的なリン酸・苦土(マグネシウム)・石灰(カルシウム)・ケイ酸・微量要素肥料です。とくに効率のよい施肥が困難とされるリン酸がく溶性であることから、植物の根が分泌する酸(いわゆる根酸)などの作用ではじめて植物に吸収される形に変化し、しかも、植物が求める量だけ消費されるため、無駄がありません。苦土は葉緑素やいくつかの酵素の構成元素であるため、光合成や代謝の効率を高め、環境ストレスに強い植物に育てます。カルシウムはとくにナス科果菜で欠乏しやすく、不足すると、尻腐れなどの生理障害や病害が発生しやすくなります。ケイ酸も組織を強化し、耐病性を高めるうえで重要です。微量要素は、施肥管理をしにくい栄養ですが、ようりんを定期的に施肥することで、とくに微量要素の過不足を気にすることなく、微量要素を適量施肥することになります。さらに、ようりんはそれ自体は非水溶性の鉱物質肥料で、非電解質の肥料ですので、EC(電気伝導度)を高める原因になりにくく、過剰施肥による肥料やけ(栄養吸収障害)を起こしにくい特性があります。

能勢・ぎんぶなのうえんの畝(幅1.2m×長さ10m)では、ナス科果菜の場合、元肥として、植物性堆肥と同時に、ようりん3kgを仕込んでいます。このようにすることで、植物性堆肥の腐熟(消費)時に生成する腐植酸に、ようりんから溶出した栄養素を、植物が再利用しやすい形で保持し、流亡や無効化を防止することができるのです。

元肥で与える窒素肥料は植物性堆肥だけ、追肥で尿素を必要分だけ

よくある農業技術マニュアルでは、バランスよく配合された配合肥料や鶏糞・魚粉を元肥として与えるようになっていますが、これは、窒素過多の原因となります。一見して、生育がよいようにみえますが、それに起因して、病虫害に弱い植物体に育ってしまい、農薬の使用がやむを得ない状況をつくってしまいます。

能勢・ぎんぶなのうえんの野菜は、定植当初は、葉の色が黄色っぽいうえ、育ちが貧弱なようにもみえます。しかしこれは、あえてそうなるようにしているのです。種苗業者やホームセンターで見かけるような苗は、ごく一部を除き、そのほとんどは、窒素を多く与えているため、見た目は元気そうですが、病虫害には弱いため、ネオニコなどの殺虫剤やTPNのようなPOPs殺菌剤を多用しているのです。ぎんぶなのうえんでは、苗の定植後に、追肥として、高効率の窒素肥料として、尿素の液肥を必要な分だけ与えています。このようにすることで、苗はすぐに葉の色が鮮やかになり、育ちも急速によくなりますが、窒素過多ではないため、病気や害虫の被害は最小限に抑えることができるのです。また、硝酸性窒素の蓄積(水太り現象)はほとんどなくなり、食味の向上にも寄与します。

尿素液肥を与えるときは、大抵の場合、硫酸加里や硫酸マグネシウムと併用します。このような肥料のことを、「NKMgベース」と呼んでいます。窒素単一施肥ではなく、「NKMgベース」の施肥体系を採用することも、窒素過多やカリウム・マグネシウム欠乏による生理障害や病虫害抵抗力の低下を防ぐうえで有効となります。(リン酸は、ようりんでの貯留が十分にあり、開花・結実の大量需要期も過リン酸石灰を別途施肥するため、十分な量を確保できます。)

ナス科果菜用に必須の追肥用リン酸肥料、過リン酸石灰

トマトやとうがらしなどが開花を始めたら、リン酸やカルシウムを多量に要求しますので、これらの不足をカバーできるように、過リン酸石灰を施肥します。但し、過リン酸石灰は強電解質の肥料であり、ECを高める性質が強いため、生育の様子をみながら、必要量を与えるようにします。過リン酸石灰は、化学的には酸性リン酸カルシウムと酸性硫酸カルシウムの混合物であり、水溶性リン酸と水溶性カルシウム、硫酸イオンが肥料成分として有効です。カルシウムを水溶性とするために、それ自体は弱酸性となっていますが、必要量のみの施肥では速やかに吸収利用されるため、施肥過剰にならないかぎり、土壌酸度への影響はほとんどありません。(硫酸イオンもあらゆる作物で利用されるほか、とくに、秋から春に栽培するアブラナ科野菜では多く消費されるため、余剰問題はありません。)過リン酸石灰は、植物が効率よく吸収することのできる水溶性カルシウムを補給することのできる数少ない肥料のひとつであり、とくにカルシウム欠乏症になりやすく、カルシウムを多量に要求するナス科果菜には必須の追肥用肥料です。(元肥として与えると、ようりんとは異なり、リン酸の固定(無効)化や流亡の原因となり、無駄が多くなるうえ、不必要にECを高める原因にもなりますので、元肥としては、過リン酸石灰は施肥しません。)

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