【農業は化学だ】硫酸塩肥料とく溶性肥料とでケミカルバランスを意識した施肥を

思考停止の施肥は、もうやめにしよう!

「これが普通の肥料だから」という何となくの安心感で、普通化成(サンパチ肥料)や高度化成(イチヨン肥料)のような肥料をダラダラと与えたりしてはいませんか?これが、地力が改善されなかったり、農薬が手放せない原因になっているかもしれません。

農芸化学の父リービッヒが収奪の農業を批判し、作物が求める栄養を理解し、必要な施しをするべきだとしたように、実圃場で作物の状態や作物の化学的特性から、その作物がどのような栄養を求めているのかを即座に判断する化学診断力を高めることこそが、農業技術の向上には欠かせません。

能勢・ぎんぶなのうえんでは、原則として、露地植えの作物には、普通化成や高度化成のような、既製の配合肥料は使用していません。(一部の鉢物には、リンカリ肥料を使用することもありますが、既製配合肥料の完全不使用に向けた技術検証も行っています。)使用しない理由は、塩化物か硫酸塩かがわからないなど、どのような物質が原料として使用されているかわからない、鉱物粉やコーティング剤(プラスチック)などの不要な「肥料カス」が残る、窒素を効かせたくないときにも効いてしまうなど、栄養分単位での肥効制御ができないなど、さまざまですが、「何となく安心だから」という思考停止の施肥に逃げることへの戒めの意味ということもあります。

単肥や天然鉱物肥料を組み合わせて施肥していると、作物によって、肥料の好みが異なることがよくわかります。これは、何となく化成肥料を与える施肥ではわからないことです。化成肥料では、どのような作物でも一応は無難には育ちやすいですが、何か問題が起こったときに、解決が困難になりがちです。しかし、化成肥料に頼らない単肥組み合わせ施肥では、何か問題が起きても、原因に気づきやすく、柔軟に対応することが可能になります。基本的に、窒素は、生育が旺盛で体格を形成する育苗期に集中的に、成株では抑え気味に、長雨が予想される時期にはあえて切らせるように施肥しますが、このような緻密な肥効制御によって、窒素のぜいたく吸収によるボケ現象(茎葉ばかりが育ち、花芽の形成が抑制される)や病虫害への抵抗力の低下を未然に防止することができ、農薬不使用栽培のハードルを下げることにもなるわけです。

アブラナ科野菜やネギ類は硫酸塩肥料の追肥で食味向上を狙おう

アブラナ科野菜の特有の風味成分にも、ネギ類(アリウム属)特有の風味成分にも、構成元素として硫黄が含まれています。この硫黄は、土壌から吸収することで調達する必要があります。これらの含硫化合物を多く生成する野菜には、必ず施肥設計に硫酸塩を含むように施肥しましょう。具体的には、カリ肥料としては塩化加里ではなく硫酸加里を追肥で、苦土(マグネシウム)肥料としては、天然硫酸マグネシウムのキーゼライトを追肥で施肥します。窒素肥料では硫安になりますが、生育ステージや季節に応じて、尿素との使い分けをするのがよいでしょう。硫酸塩肥料は水溶性で、元肥で与えると、CECによる化学的吸着効果を超える分はロスになったり、塩類障害を起こしやすくなることがあるため、完全消化を意識して追肥で与えるのです。では、元肥では何を与えるかというと、苦土石灰やようりん、珪酸加里などのく溶性肥料をしっかり与えるのです。く溶性肥料は、根から分泌される有機酸や、追肥で施肥した硫酸塩肥料の吸収で余剰となった硫酸根によるpH降下によって溶解が促され、土壌酸度を安定させながら効いていくというわけです。そうすることで、含硫化合物の生成が十分になされて、風味のしっかりとした作物を育て上げることができるでしょう。

このように、く溶性肥料と硫酸塩肥料とで、ケミカルバランスを取る施肥体系を組むことで、土壌を過度に酸性化させたり、塩類障害や流亡によるロスが出るのを未然に防ぎ、合理的で有効性が高い施肥ができるというわけです。肥料高騰は落ち着いてきたとはいえ、まだまだ割高の状態が続いています。化学診断力を高め、施肥に関する様々なムダをなくし、農薬さえも不要にするほどの健康的な施肥ができる農業技術を磨きましょう。能勢・ぎんぶなのうえんの農業実習生になれば、そのことを実圃場で農芸化学の基本からしっかりと学ぶことができます。本気の方は、ぜひ、銀鮒の里アカウントを取得のうえ、お問い合わせください。

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