新型コロナウイルスの対策用として、次亜塩素酸空間除菌機が注目されているようですが、実際のところ、使っても大丈夫なのでしょうか?
そもそも次亜塩素酸って何?
次亜塩素酸(HClO)は、反応式1のように食塩の塩化物イオンが陽極で電気分解されて生じる気体の単体塩素(Cl2)が水に溶けたときに生成する物質(反応式2)で、塩素水における単体塩素の一部の存在形態といえます。pHが高いほど安定で、アルカリ性では、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩を形成して安定化します。逆に酸性では、気体塩素に分解され、気体塩素は水に溶けにくくなります。次亜塩素酸は、空気中に拡散されると、反応式3のように徐々に分解し、単体塩素(Cl2)を再生成します。ですから、実質的には、水蒸気を含む空気中に、ごく低濃度の単体塩素を空気中に拡散しているのと、化学的にはほぼ同じことになります。反応式3の右辺には、反応式2の左辺の項を含んでいることにお気づきでしょうか。反応式3の右辺のうち、単体塩素と水とは、反応式2のように再反応し、塩化水素の生成分だけ減衰します。次亜塩素酸やそのナトリウム塩が時間が経つと徐々に自己分解して、その効力が減衰するのは、反応式2と反応式3とがループする関係にあるためなのです。次亜塩素酸が分解して生成する単体塩素には、変異原性がありますから、次亜塩素酸も実質的に変異原物質として振る舞うと考えられます。
2Cl– → Cl2 + 2e– (反応式1(陽極における電気分解))
Cl2 + H2O → HClO + HCl (反応式2)
4 HClO → 2 Cl2 + 2 H2O + O2 (反応式3)
次亜塩素酸空間除菌機について
パナソニックのジアイーノは、食塩水を装置内で電気分解して陽極に塩素を生成させ、水中で直ちに生成する次亜塩素酸として、空気中に常時拡散させる装置です。装置は非常に高価ですが、次亜塩素酸の生成機構自体は非常に単純なものです。その他には、既製の次亜塩素酸水を超音波式加湿器の原理で拡散させるタイプもあります。
低濃度の継続的曝露は非常に問題
諸説流れていますが、毒性学的にみて、次亜塩素酸の実使用濃度において、何らかの有害な作用があることは否めないことです。高濃度の単発的な曝露よりも、低濃度の継続的な曝露のほうが問題が大きいことはよくあります。ジアイーノのような空間除菌機を常時運転している部屋に居住するという状態は、まさにその低濃度の継続的な曝露の条件に該当します。このような条件では、急激な損傷等は及ぼさないものの、自覚しないうちに、細胞や遺伝子、有益な常在菌や常在ウイルスに何らかの悪影響を及ぼし、後に身体の予期せぬ変調になって現れる可能性があります。とくに有益な常在菌や常在ウイルスに死滅や失活などの悪影響を及ぼした場合は、人体が本来もつ生体防御のシステムを破壊することで、感染症を防ぐために使っていたはずの空間除菌機が、逆に感染症にかかりやすい身体にしてしまうという懸念もあります。
結論:空間除菌機は使ってはいけない
ジアイーノを製造するパナソニックに、腸内細菌などの常在菌への影響について問い合わせたところ、「検証は行っていない」との回答が返ってきました。ジアイーノを常時運転している部屋で居住(学校や学習塾の教室等に長時間居続けるような場合も含みます)した場合、次亜塩素酸やその分解物である単体塩素が皮膚や呼気を通じて全身に行き渡り、その酸化作用や塩素ラジカル特有の反応性によって、免疫力に関係する常在菌や常在ウイルスに気づかないうちに悪影響を及ぼし続け、逆にわずかなウイルス量でも感染症を引き起こしやすい、いわゆる「モヤシ人間」になってしまうおそれがあります。ジアイーノなどの空間除菌機は、学校など、こどもが長時間居住する場所で使用してはならないという通知を文部科学省が出したことがあるくらいです。空間除菌機は使わず、こどもは菌だらけ善玉ウイルスだらけでばばっちーく育てるようにしたいものです。
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