マダニ媒介とされるオズウイルスへの人感染、世界で初確認、茨城県での症例

昨年初夏に、心筋炎で死亡した茨城県の70代女性の症例に関して、この女性は、発熱や倦怠感を訴えて病院を受診した際に、右足をマダニに刺されていたことがわかりました。この症例の原因について、茨城県衛生研究所と国立感染症研究所が詳細な検査を行ったところ、この女性の心筋炎発症の原因はオズウイルス(OZV、以下、略称)への感染によるものであることが判明し、23日、厚生労働省によって発表されました。(下記リンク参照)

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001112348.pdf

マダニ感染症としては、これまで、致死率が30%以上とされる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の例がわかっていましたが、マダニが媒介したOZVへの感染による心筋炎発症の例は、日本国内のみならず、世界でも初の事例だということです。国立感染症研究所の資料によりますと、OZVは今から5年前の2018年に、2013年に愛媛県で採取されたマダニの一種であるタカサゴキララマダニから世界で初めて分離されたばかりだということです。マダニ感染症は全体的にも未解明の点が多く、予防のためのワクチンも特効薬も、現時点ではありません。

【実践者直伝】肌の露出を最大限になくすことと免疫力維持が最善の予防策、確実実行で冷静な対応を

SFTSや心筋炎などのマダニ感染症を確実に予防するためには、まず、マダニに刺されない対策を徹底することが重要です。少なくとも、マダニに刺されないかぎり、マダニ感染症に感染・発症することはないとされています。そのためにはまず、暑いと感じても、とにかく肌の露出を減らすことが重要です。近年では、目の細かい接触冷感素材の長袖作業着なども市販されており、ゴムライニングのある作業用手袋や長靴の着用も、手首やすねからの侵入を防ぐのに有効ですので、農作業などの野外作業に活用しましょう。マダニは、シカなどの野生の哺乳動物の皮膚に大量に寄生していることが多く、そこから落ちたマダニが草むらに潜伏していることもあります。そのため、農地やその周辺では、手刈りの根絶草刈りや機能性グラウンドカバーによるウィードコントロールも予防に有効となる可能性があります。

都会から里山の癒やしを求めに、初夏の散策に出かける方もあろうかと思います。都会でのお祭りと同じ感覚で、半袖半パンのようなスタイルで歩くと、気づかないうちにマダニに刺されるおそれがあり、危険を伴います。山の際や草の多い場所を歩く機会が少しでもある場合は、長袖長ズボンで完全防備をしてください。マダニに刺されたときは無痛で感覚そのものがないため、家に帰って足のすねを触ったりして不自然な突起があることにはじめて気づいて、それがマダニだったということも少なくありません。万が一マダニに刺された際の応急処置としては、ワセリン密封が有効とされていますので、ドラッグストアなどで容易に入手可能なワセリンを常備しておくと、助かることがあります。(※あくまでも応急処置です。)マダニに刺された場合、その後少なくとも1ヶ月は、体調の異変がないかどうか、経過観察が必要です。(SFTSの場合、その原因ウイルスの潜伏期間が多くの場合1〜2週間程度、長い場合で1ヶ月くらいの幅があるためです。)もし、その経過観察期間の間に、身体の異変を感じた場合には、マダニに刺された時期を皮膚科専門医に告げ、その際、実際に刺されたマダニそのものを提示するようにしてください。

マダニに刺されると、接着剤状の分泌物を出すため、簡単に抜けないことが多く、無理して抜くと、針が皮膚に残留して、それがマダニ感染症感染の引き金になることもあります。正しい応急処置で運よく抜けることもありますが、どうしても離れない場合は無理に抜いたりせず、できるだけ早く、マダニ処置に対応可能な皮膚科専門医を受診してください。

SFTSの場合、致死率には諸説ありますが、30%以上とする説もあります。感染症としては非常に高い値で、しかも、マダニ感染症自体に未知の点が多いこともあり、不安になるのはわかりますが、マダニに刺されたことで必ず生命の危険が及ぶということではありませんので、万一、刺されたとしても慌てず、冷静に対応するよう心がけてください。

感染症一般にいえることですが、栄養バランスのよい食生活や十分な睡眠、適度な運動などの良い生活習慣で免疫力を高めることも、読んで字のとおり、感染を免れる可能性を高め、有効です。逆に、マクドナルドやランチパックのようなジャンクフードを食べたり、商業ゲームのプレイで睡眠不足や運動不足になることは、免疫力を下げるきわめて危険な行為です。このような商業依存的な不摂生誘発行為を、里山での活動を行うことも多い銀鮒の里学校が禁止するのは、なにより、生命の危険からあなたを守るためなのです。あわせてご理解いただきたいことです。

忌避剤はあくまでも補助、過信は非推奨

マダニに刺されないためには、忌避剤の使用も有効とされていますが、化学物質リスクの専門家の立場からすれば、過信は問題があると釘を刺しておきます。とくに米軍が開発した成分として知られるディート(N,N-ジメチルm-トルアミド)は、その成分自体の毒性が問題視されており、小児への使用には注意喚起がなされています。とくに小児には、ディート代替のイカリジンが推奨されていますが、イカリジンも非芳香族ではあるものの、化学合成物質であることには変わりはなく、肌の露出をなくす物理的対策を基本とすべきです。マダニ対策に忌避剤の使用は必須ではありません。あくまでも補助にすぎないものであるとご認識ください。

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