【夏休みヘルスケア】こどもの「まつり後腹痛」に対するセルフメディケーション

夏祭りシーズン真っ只中、この土日か来週の土日には、各地で地域の盆踊り大会が集中し、東北地方では、8月初旬の来週に、大規模な夏祭りが立て続けに開催されます。しかし、このような夏まつりに出かけた次の日には、腹痛や下痢が起こりがちです。その原因は、ほとんどの場合、

• 不摂生による腸内細菌叢の乱れ
• （加熱不十分な畜肉・魚介類や衛生管理が不十分な野菜等を原因食材とする）細菌性食中毒
• 胃腸の冷え・消化不良

のいずれかに切り分けできます。すぐに医療機関を受診することは、医療費の上昇や医療の逼迫を招くこともあるため、公共的視点に立てば、必ずしも得策であるとはいえず、医療機関そのものが少ない農村部では、医療機関にかかること自体に困難を伴う場合があります。そのため、可能なかぎり、薬局やドラッグストアで購入できる民間薬や食養生などによるセルフメディケーションでの対処を行うことが求められます。もし、祭りの直後から翌日に、腹痛や下痢、便秘といった胃腸の不調が現れた場合、祭りでの行動を振り返り、上記のうちのいずれに最もよくあてはまるかの切り分けを行ってください。

●不摂生による腸内細菌叢の乱れ

食中毒や胃腸の冷えに心当たりがない場合、ほとんどの場合は、この原因が考えられます。このような場合は、応急処置として、ビオフェルミン（大正製薬）やビオスリー（アリナミン製薬）などの、複数種の性質が異なる生菌が処方された、化学合成の鎮痛成分を含まない整腸薬を服用させてみます。（腸内細菌叢の乱れが原因だった場合、生菌を含まない胃腸薬では効果が期待できません。）そして、食欲がある場合には、腸内細菌叢を改善するために、少なくとも直近の1〜2食は、食品添加物（とくに、合成保存料や合成甘味料、乳化剤）を含まない高繊維のヴィーガン食を食事で食べて食養生をさせてあげてください。食欲がない場合は、無理に食べさせたりせず、食欲が出るまでの間は、豆乳スムージーやヴィーガンおじやなどの流動食を与えてください。なお、動物性食品は、腸内細菌叢の回復を妨げるおそれがありますので、避けてください。そして、こどものうんち観察は怠らず、毎回行ってください。少なくとも、こどものうんちが平常状態に戻るまでの間は、前述の食養生を継続してください。（もちろん、健康維持のために継続しても差し支えありません。）また、こどもの便秘の場合、ビサコジルなどの刺激性の有機合成化合物を有効成分とする便秘薬は服用禁忌です。便秘がひどい場合には、こどもでも服用が可能な、非刺激性で無機系の酸化マグネシウム剤を、便秘の症状が治まるまで服用させます。あるいは、グリセリン主剤の浣腸を直腸内に注入するか、うんち量が多かったり硬いために排便が困難な場合や、浣腸の成分（塩化ベンザルコニウム）の影響がとくに気になる場合は、肛門に指を挿し込んで、摘便でうんちを一つずつ丁寧に掻き出してあげます。（こどもが痛がる場合は、直腸を傷つけてしまうおそれがありますので、無理に掻き出したりせず、できるだけ肛門のあなに近いところにある小さいおまめうんちから摘便したり、水や食用植物油脂、含水グリセリンでおまめうんちの表面を少しずつ湿らせるなどして、痛がらないように、できるだけこどもに負担をかけないように摘便を工夫するよう、こどもとのうんちコミュニケーションを大切にしましょう。こどもうんちがきたないからといって、指ではなく、棒などを挿し込んだりしてはいけません。今後の食生活や生活習慣の改善に際しての反省のために、掻き出したこどもうんちの観察も忘れないようにしましょう。）便秘も、多くの場合、腸内細菌叢の乱れが根本原因のため、便秘の症状があるときも、治まった後でも、整腸薬の服用と前述の食養生の実践を続けることが欠かせません。こどものうんちが平常状態に戻っても、マクドナルドなどの腸内細菌叢を乱すジャンクフードを食べさせることは、季節に関係なく、前の記事で取り上げたような「マクド腹痛」の原因となりますので、絶対におやめください。

●細菌性食中毒
露店で鶏肉の唐揚げや牛肉・豚肉などの串焼き、焼きイカやサザエの壺焼きなどの動物性の加熱食品を買って食べた場合、加熱不十分で、食中毒原因菌が十分に滅菌されていなかったことによる細菌性食中毒の可能性があります。万一、こどもに生焼けのものを食べた心当たりがある場合には、まず最初に、下痢便をできるだけ出し切らせてあげて、少しでもお腹の負担を軽くしてあげてください。下痢便の出し切りで回復する軽症の場合は、回復した直後でも、腸内細菌叢が乱れている場合がありますので、不摂生による腸内細菌叢の乱れの場合と同様の養生を実践してください。腹痛や下痢が長引き、治まる見通しがつかない場合は、安易に市販薬（止瀉（下痢止め）薬）を飲ませたりせず、できるだけ速やかに専門医（小児内科など）を受診させてください。下痢止め薬のなかには、ストッパ小学生用（ライオン）などのように、添加物としてアスパルテームなどの合成甘味料を含む場合や、正露丸（大幸薬品など）のように、発がんリスクがある成分を含む場合があり、腸内細菌叢などに悪影響を及ぼす場合もありますので、注意が必要です。とくに、鶏肉を原因食材とするカンピロバクター食中毒や、牛肉を原因食材とする高病原性大腸菌（O-157など）による食中毒は、症状が1週間程度に長引くおそれがあるうえ、薬剤耐性（AMR）菌が原因の場合は、通常の医療用抗菌剤による治療ですら困難な場合もあります。加熱不十分の鶏肉を食べた心当たりがある場合は、可及的速やかに医療機関に相談（救急搬送）すべき場合もありますので、迅速かつ適切な判断が求められます。

冷やしキュウリやカットパインのような野菜や果実、かき氷の細菌汚染が原因の場合、動物性食品の場合に比べて症状が軽微な場合が多いですが、露店でのズサンな食品管理のために、元来動物性食品に付着していた病原菌が移染する場合もないとは言い切れません。お祭りの露店では、バックヤードでの食品管理状況も確認し、動物性食品との接触や調理器具の使い回しなど、怪しさが残るような場合は、購入を避けるべきです。もし、そのような怪しさがある食品を食べてしまったことに後に気づいた場合には、動物性食品による食中毒に準ずる対処を行い、不安が強い場合には、医療機関を受診し、医師にその旨を伝えてください。

●胃腸の冷え・消化不良
かき氷などの氷菓や冷たい清涼飲料水を一度に多く飲食した場合や、強冷房に長時間さらされた場合には、急激な冷えによる生理障害により、下痢や軟便を伴う腹痛が起きる場合があります。また、大量の飲料水により、胃液が極端に薄まると、消化酵素が極端に薄まることにより、消化不良による下痢・軟便・腹痛が起こることがあります。食中毒の心当たりがなく、胃腸の急激な冷えや飲みすぎに心当たりがある場合には、腹痛が収まるまで、うんちを出し切らせてください。その後、必要に応じて、胃腸の機能を整える生薬や消化酵素を処方した胃腸薬を服用させます。単なる冷えや消化不良の場合は一過性で、すぐに治まる場合がほとんどですが、すぐに治まらない場合は、腸内細菌叢の乱れが根本原因として合併している可能性もありますので、不摂生による腸内細菌叢の乱れの場合と同様の処置を行います。

夏祭りの露店では、衛生管理がいい加減な場合が多くあります。祭りの雰囲気に浮かれて、安易に露店の食べ物を買ったりせず、衛生状態や食品のサステナビリティをよく考え、信頼ができる場合にのみ、買うようにしましょう。できるだけ、家庭での手作り品や、信頼のおける常設店で買い求めたものを食べるようにしてください。学校給食のない夏休みも、こどもには、健康的な食生活ができるよう、しつけや配慮をしてあげてください。

【注意・免責事項】
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