富山県小矢部市で発生の鳥インフルエンザについて

この、富山県小矢部市のケージ養鶏場で発生した鳥インフルエンザに関しての中日新聞の記事は、鳥インフルエンザ問題の本質に関しての熟考に役立つポイントを押さえた記事です。
https://www.chunichi.co.jp/article/190405

下の写真は、発生場所の航空写真です。養鶏場らしき施設が2箇所みえますが、その間に点線があります。点線より上側(北側)が小矢部市、下側(南側)が南砺市ですから、上側のほう(写真の中心から少し左側)の養鶏場が、今回、鳥インフルエンザが発生した養鶏場とみられます。

富山県は、今回の鳥インフルエンザ禍の防疫措置の費用として、この養鶏場の採卵用鶏約14万1000万羽の殺処分を含めて、約7530万円がかかるとしています。起こってしまった事故の処理のため、やむを得ない支出ですが、平素から欧米などで進められているケージ養鶏の禁止をはじめとした養鶏のアニマルウェルフェア対応や、農業のヴィーガンシフト(畜産から有機農業への転換)政策を実行していれば必要がなかった支出であると考えると、無策がもたらした無駄であるともいえます。この約7530万円は、富山県の税金収入から支出されるとみられ、さらに、養鶏業者の生産再開のための補助金は、国庫から支出されるとみられることから、鳥インフルエンザ禍が発生するたびに、発生地域を問わず、国の税金も使われることになるわけです。これも、欧米のようなまっとうな農政では不必要なはずの支出ですから悔やまれます。仮に1,000羽規模の平飼い養鶏場で鳥インフルエンザが発生したとした場合は、隔離治療が可能であるとみられ、アニマルウェルフェアに配慮した対応ができるうえ、防疫措置に必要な費用も最小限に抑えられるはずです。

この中日新聞の記事で最も重要な示唆がなされているのは、最後の段落です。ここでは、ふなあん市民運動メディアでも訴えてきた、次のようなことが示唆されています。

  • この養鶏場では窓がないウインドウレス鶏舎4棟と防鳥ネットを施した開放鶏舎2棟で飼養
  • 死んだ鶏は全てウインドウレス鶏舎で飼われていた
  • 県の担当者は「どの鶏舎も野鳥と接触することはありえない構造」と説明した

すなわち、これらのことと、これまでの発生事例から、次のような考察ができます。

  • 野鳥との直接的な接触は、鳥インフルエンザが発生した実際のケージ養鶏場では、鳥インフルエンザウイルス感染に関しての原因ではない
  • ケージ飼いのなかでも、(従来は、ケージ飼い養鶏業界の間では、鳥インフルエンザの防止に最も効果的だと考えられてきた)ウインドウレス鶏舎での飼育は、鳥インフルエンザ感染・発症のリスクがとくに高い

1箇所として今季最大規模の事故例である千葉県いすみ市のアキタフーズグループの採卵養鶏場の事例も、2番目に大きい事故例である岡山県美作市のデイリーエッグの養成養鶏場の事例も、ウインドウレス鶏舎で起こった事例です。とくにウインドウレス鶏舎の場合は、鶏体の大部分が常に全く光が当たらない状態であり、鶏本来の生態に基づく行動を表現する自由がほぼ完全に奪われることによるストレスと相まって、免疫力を極限まで低下させる原因になっていると考えられます。何度も訴えているように、国や地方自治体には、ケージ養鶏を禁止し、平飼いか放し飼いの養鶏に転換するか、農業のヴィーガンシフトを促す農業政策を直ちに実行することが強く求められます。

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