能勢・ぎんぶなのうえん直伝:秋育苗の施肥と長雨対策

種子が発芽しました。いつから、どのような肥料を与えればよいですか?

品種によって肥料の要求の程度は異なりますが、ほとんどの場合で、最初の本葉が開いたときが、肥料(初期育苗用追肥)の与え始めのタイミングになります。能勢・ぎんぶなのうえんでは、今季から、独自開発の窒素以外の栄養分をほぼすべて補給できるく溶性元肥を十分に混和した播種・初期育苗培養土を使用していますが、このような場合は、最低限では、5,000倍に希釈した硫安(N=4.2%の液肥1,000倍希釈相当)または1万倍に希釈した尿素(N=4.7%の液肥1,000倍希釈相当)を灌水または底面吸水により施肥すればよく、望ましくは、5,000倍に希釈した硫酸加里(K2O=10%の液肥1,000倍希釈相当)と5,000倍に希釈した硫酸マグネシウム7水和物(MgO=3.2%の液肥1,000倍希釈相当)を同時に施肥するとよいです。次に説明しますが、置き型の化成肥料のような固形肥料はおすすめしません。

品種によっては、発芽後に一時的に窒素欠乏症状(クロロシス)がみられることがあります。窒素欠乏症状と聞くと、異常な状態だと慌ててしまうかもしれませんが、品種特性による一過性の現象と割り切り、冷静に対応しましょう。(実際に、能勢・ぎんぶなのうえんでもこのような現象はよく再現します。)このような場合は、前に示した要領で、薄めの硫安か尿素を施肥すると、速効性の肥効特性により、すぐに回復しますので、とくに心配はありません。逆に、クロロシスが出たと慌てるあまり、過剰に窒素を与えてしまったりすると、肥料やけで枯れてしまうなど、取り返しのつかないことになることがありますので、注意してください。窒素は少ないかな、と思うくらいがよく、その代わりに、他の肥料成分をよく効かせることが、IPMの観点からも大切です。

初期育苗の時期の長雨が心配です。施肥の注意点を教えてください。

長雨のときには窒素が切れていることが大切です。初期育苗の時期は、窒素をよく効かせるべきタイミングですが、長雨のときにも窒素が効き続けていると、徒長したり、軟弱で病虫害に弱いボケ苗に育ってしまい、後々に厄介なことになります。前に説明したような液肥の施肥では、施肥後数日以内で吸収してしまい、その後はすぐに肥料分が切れた状態になるため、効かせたいときにだけビシャっと効かせ、効かせたくないときにはしっかりと切れてくれるといったような効きのメリハリをつけやすくなります。窒素以外の成分は、長雨の時期に効き続けていても問題はなく、むしろ効き続けている方がよいくらいです。これらの栄養分は、ようりんなどのく溶性元肥でしっかり施されていれば、植物が必要とする時にだけ、自動的に効いてくれるようになっており、特別な気遣いは必要ありません。長雨の時期が過ぎ、安定した秋晴れの日が続くようになれば、化成肥料の置き肥を施肥しても問題はありませんが、能勢・ぎんぶなのうえんでは、できるだけ既製の化成肥料を使用せず、単肥の液肥などを組み合わせた施肥を続けています。

秋はすぐに寒くなる!窒素の効かせ方に注意

秋の長雨が終わったら、効き過ぎに注意しながら、すぐに窒素をしっかりと効かせましょう。そのようにするには、濃いめを回数少なくではなく、薄めを回数多く与えるのがよいです。窒素をしっかり効かせるべき時期には、5,000〜1万倍くらいの尿素か硫安を水やりの度に与えるくらいのほうがよいでしょう。とくに寒くなるのが早い能勢では、窒素をしっかりと効かせるのは、長雨が終わってから立冬くらいまでが目安となります。寒くなってくると、生長が遅くなり、窒素肥料の効きも鈍くなってきますので、よく効く時期のうちにしっかりと与えて、株全体をできるだけ早く充実させておくことが、冬の寒さに強くし、春からの生育再開をスムーズにいかせるためには重要になります。

硫安と尿素、どちらがいい?

尿素は温度が高めの時期に与えると、土壌微生物の作用でアンモニア性窒素(炭酸水素アンモニウム)や硝酸性窒素に分解されて無機化が進み、より吸収効率が高まる特性があります。また、ある程度は葉の表面からも吸収される葉面散布効果もあるといわれています。温度が低下しても、できるだけ早く効かせたいという場合には、もともとがアンモニア性窒素の硫安のほうが吸収効率が高まることがあります。さらに、尿素は非イオン性のため、アンモニア性窒素に分解されない間は、土壌のCECによる化学的保持は期待できませんが、硫安はアンモニア性窒素でCECによる化学的保持が有効ですので、CECによる保肥作用が期待できます。但し、硫安のCECによる保肥効果が期待できるのは、CEC向上対策がなされた育苗用土を使用していることが前提となりますので、CECの高い培養土を使用することはとても重要になります。尿素を効率よく効かせたい場合には、まだ地温が十分に高い時期(概ね15℃以上)に、十分に灌水を行った後、培養土の表面にのみ、葉面散布をするような要領で表面施肥をすると、アンモニア性窒素に分解された後にCECの効果で化学的に保持されるため、無駄がありません。また、尿素自体は非イオン性のため、尿素自体は塩類濃度を高めません。但し、微生物の作用でアンモニア性窒素に分解されると、イオン性の性質が現れますので、そのことも計算に入れておく必要はあります。春よりも肥培可能期間が限られ、温度低下による肥効低下が気になる秋の施肥は、追い込み施肥を確実に行うために硫安を活用するというのも一つの作戦です。

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