能勢・ぎんぶなのうえんだより(2023年2月7日)

いよいよ春の農繁期(フェーズ1)に突入!

山間部の能勢は、まだ最低気温が氷点下の日がしばらくありますが、昼間は作業がしやすくなり、もう春の気配が感じられ始めています。3月下旬の開園に向けて、現在、ペレニアル(宿根草)ガーデン、アニュアル(一年草)ガーデン、ボーダーガーデンなどの開墾(除草)・土作り(植え付け準備)を進めています。

当園育成苗では、3月下旬から4月くらいまでは、エリシマム、コーンフラワー(ヤグルマギク)、カレンデュラ(キンセンカ)、リムナンテスなどの開花をお楽しみいただけるかと思います。能勢での露地栽培では、桜が開花する頃までは、まだ花の咲く種類が限られますので、種類ではあまり多くはありません。それでも、この時期らしい色や香りを存分にお楽しみいただけるかと思います。

冬の夜間は、関東北部から東北南部並みに冷え込む「半寒冷地」ともいえる能勢・ぎんぶなのうえんは、5〜6月に花の最盛期を迎えます。梅雨が終わるまでの間は、花の多い状態が続きます。カエルやミツバチも集い、里山の生命力みなぎる「メイガーデン」「ジューンガーデン」といったイメージですね。この頃には、当園がとくに力をいれるスイカズラ科(カプリフォリアド;旧分類のオミナエシ科・マツムシソウ科・スイカズラ科など)の多くが開花期を迎えます。カプリフォリアドは、草姿や花が独特の造形美をもつものや、花が優美で繊細な香りを持つものが多く、庭園をおしゃれに演出します。定番のスカビオサのほか、セファラリア(巨大スカビオス)・スクシサなど、複数の属のスカビオスを導入し、スカビオス・ガーデンを構成する予定です。他ではまだあまり見かけることのない珍しい品種もありますので、ご期待ください。中型スカビオスのクナウティアは、当園で播種・育苗する予定です。宿根草の特性上、開花は翌年になるかもしれませんが、順調にいけば、種子繁殖苗を販売できるようにしたいと考えています。ダイアンサス類やリクニスなどのナデシコ科も、さまざまな優しい花を咲かせてくれるでしょう。香りも魅力で、コンパオンプランツの有望種としても期待されるヒソップやローマンカモミールの開花もこの時期になります。

フェーズ1(早春期;立春〜啓蟄):ほ場整備、土作り、低温要求性種子の休眠打破、温帯性山野草の植え替え
フェーズ2(春低温期;啓蟄〜清明):発芽適温15〜20℃の種子の播種、発芽適温20〜25℃の種子の播種(トンネル)、温帯性シンニンギアの芽出し・植え替え
フェーズ3(春高温期;清明〜立夏):発芽適温20〜25℃の種子の播種、熱帯性山野草の植え替え

幼苗期の活着率向上のために、施肥・育苗計画を見直します

雷雨後に、植物が一気に育つ自然現象を化学的に再現!

これまで、能勢・ぎんぶなのうえんでは、生育ステージや植物種に関係なく、硝酸性窒素(NO3-N;陰イオン)もアンモニア性窒素(NH4-N;陽イオン)も一切使用しない施肥体系を実践してきました。窒素の施肥形態としては、尿素または堆肥などの有機態窒素のかたちとなるわけですが、尿素は葉や根からある程度は吸収できるものの、有機化合物であることからも、化学肥料のなかでは、有機態窒素に近い肥料特性があるとされており、実際には、その多くは、人間でいうところの腸内細菌に相当する、環境中の尿素分解細菌や硝化細菌の作用によって、より吸収されやすい形態(アンモニア態・硝酸態)に変化してから吸収利用されると考えられています。有機肥料のメリットである、吸肥能力が高く、打たれ強い、「甘えない」植物体に育ちやすい特徴があります。植物も、細菌の恩恵を意識して「ばばっちーく」育てることが重要というわけです。しかし、この施肥体系ですと、根量が非常に少なく、吸肥能力が低い幼苗期に栄養吸収が間に合わず、植物種や気象条件などによっては、力尽きて立枯れに陥るリスクが高いことも、実ほ場での栽培試験で目の当たりにしてきました。(とくに、秋に気温が十分に低下した10月に播種した群では、能勢の厳しい寒さで、かなり多くの幼苗がダメージを受けてしまいました。)そこで、この農閑期の冬の間に、熟考を重ねてきた結果、吸肥能力に限界のある幼苗期(本葉2〜3枚またはセルトレイから苗を抜いたとき、土が崩れない程度の根張りがあるまで)に限り、硝酸性窒素を含む液体肥料を表面噴霧することにしました。雷雨時に起こる硝化により、雷雨後に植物の生育が一気に加速される現象の化学的再現です。人間の赤ちゃんは消化吸収力に限界があるために、消化吸収しやすい離乳食を与えるのと同じ考え方で、いわば、「お花の離乳食」です。今季は、食用を目的としない花卉に限定して実施する予定です。また、食用を目的とする野菜やハーブの初期育苗には、アンモニア性窒素(硫酸アンモニウム)の施肥も検討しています。花卉に使用する予定の硝酸性窒素肥料は、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)と硝安含有硝酸カルシウム(5Ca(NO3)2・NH4NO3)で、幼苗の活着(吸肥力の確立)を確認し次第、すぐに、硝酸性窒素を一切含まない、従来の施肥体系に切り替える予定です。カルシウム塩やマグネシウム塩の施肥は、とくにスカビオサやバレリアンなど、石灰質や苦土分をとくに要求する植物の初期生育には卓効することが期待されます。種まき培養土には、く溶性肥料(苦土・リン酸・カルシウム・微量要素)のようりんを混ぜ込み、初期育苗が完了する頃にすぐに効くように仕掛けておきます。ハイポネックスのような市販の液体肥料には、硝酸態窒素が含まれていますが、生育ステージを問わず与え続けていると、硝酸性窒素の吸収しやすさに植物が甘えてしまい、植物体だけが大きい水太り状態となり、農薬に頼らざるを得ないような、病虫害や環境ストレスに弱い植物に育ってしまいます。実は、園芸店で売っている見栄えのよい鉢花の多くが、硝酸性窒素で水太りした状態だということをご存知でしょうか。買ってきても、すぐにダメになってしまったという経験がおありかと思います。それも無理のない話で、見た目だけが大きく青々としていて、環境ストレスには弱い状態だからです。当ぎんぶなのうえんでは、環境配慮はもちろんのこと、環境ストレスや病虫害に強い、たくましい植物に育て上げるため、原則として、硝酸性窒素の施肥は、肥料が吸収しづらい発芽直後の幼苗期や生育不良時の回復に限定し、ほとんどの花卉や野菜の若株や成株については従来どおり、硝酸性窒素無施肥で、病虫害や環境ストレスに強い植物を育てる方針です。初期育苗時のみ、硝酸性窒素を施肥しますが、完全消化を意識して、尿素などと比べて低濃度で噴霧施肥し、全体として施肥効率を高めることを目指す施肥ですので、結果的に、より環境にやさしい農業技術になることを目指しています。

※着生蘭やブロメリア、一部のイワタバコ科植物など、吸肥傾向に独特の癖があるもので、硝酸性窒素の施肥による、特筆すべき効用が認められる植物の場合は、成株でも低濃度の硝酸性窒素を施肥する可能性があります。

農芸化学研修生を募集します!

能勢・ぎんぶなのうえんで、農芸化学に基づいた農業(IPM)技術を身につけ、露地栽培農業のプロの技術に磨きをかけてみませんか?能勢・ぎんぶなのうえんでは、農芸化学研修生を募集します。当農園では、農園そのものがポタジェ・ガーデン(野菜・草花混植庭園)やナチュラルガーデンのモデルガーデンにすることを指向していますので、ガーデナーも目指せます。プロになることを目指している、本気の方は、能勢・ぎんぶなのうえん(hen-na-funaアットマークagri.funaan.org)まで、電子メールでお問い合わせください。

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