【SDGsの着眼点】百貨店不振の根底にある問題とは

忘れられた近江商人の商売心得十訓

先人が、日本の商人が常に心得ておくべきことを十訓として要約した、近江商人の商売心得十訓。FMGが商業関係者との対話の機会をもったときに、「近江商人の商売心得十訓をご存知か」と確認したところ、現代の商人の多くが「知らない」という実態が明らかになっている。日本の急成長の原動力となったのは、先人の知恵を発展的に継承し、新しい価値を創造する温故知新と、それを行動として具現化する真面目さ、ひたむきさであることを忘れてはならない。

本日、東京・池袋で波乱が起きている。経営不振で、これまでセブン・アンド・アイ・ホールディングスの傘下にあった百貨店大手そごう・西武の西武池袋本店が、労働組合によるストライキで全館休業を余儀なくされているというのだ。呆れたことに、そごう・西武の売却先は、米国の投資ファンドである「フォートレス・インベストメント・グループ」だ。一言で言うなら、「海外への身売り」ともいえ、反発は当然だろう。さらに、フォートレス・インベストメント・グループは、池袋の再開発で反発を買った家電量販大手のヨドバシホールディングスと親しいとされており、このことが、怒りを増幅させているとみられている。大阪・梅田などでもそうだが、ヨドバシの再開発のやり方はとにかく派手で独占的だ。ヨドバシがつくった街の風景は、どこにしても画一的だ。このまま、まちづくりを米国の投資ファンドやヨドバシに投げる状況が続けば、日本の街はますます画一化し、ますますつまらなくなるだろう。都心ではヨドバシ(+米ファンド)、郊外ではイオンによる画一化が進んでいる。東京・秋葉原でも、ヨドバシの巨大商業施設がランドマークになってから、本来の「電気の街」は一気に衰退している。商売がつくる、その街の個性的な文化が損なわれれば、その街のカラーは失われてしまう。このようにして、池袋がつまらなくなっていくことを警戒しているということは、想像するに易しだろう。

都心での買い物は、正直いって高くつく。それでもなぜ、わざわざ都心に出向いて、都心での買い物を楽しむのか、考えてほしい。その街に息づく商売が醸し出す文化を愉しんでいるのだ。インターネットがない時代では、それが当たり前だった。しかし、ネットショップや郊外型大規模商業施設での買い物が普及すると、「安い」か「便利」かが買い物をするかどうかの判断基準になり、商売の文化を愉しむという発想も衰退していった。

店員に、おすすめの商品を尋ね、おすすめする熱い思いを聞き、納得して買うという百貨店スタイルの買い物は楽しいものである。ネット時代・郊外大規模店時代の今では、そのような買い方すら忘れ去られようとしているのだろうか。売り手にも、常に近江商人の商売心得十訓をしっかり理解し、行動に反映するという温故知新の取り組みが求められるが、私たち買い手も、常に近江商人の商売心得十訓をしっかり理解したうえで、そもそも買い物とは何か、社会を持続可能にする「三方よし」の買い物とは何かということを考えるようにしたい。

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