農産物のブランド・エクイティ向上で農村活性化を

過小評価されている農産物、品種選びや売り方にも問題が

農作物の「マクドナルド化」が農村を衰退させる隠れ要因だということは意外と指摘されていない。(イメージ)

能勢・ぎんぶなのうえんでは、農業は、まずは品種選びが命運を分けるくらい重要だと訴えています。

道の駅や無人販売のようなところで実感されていると思いますが、農村で売られている野菜は、ごく一部を除いて、安すぎます。なぜなら、安くしないと売れないからです。安すぎても売れ残ることも少なくはありません。一度安くしてしまうと、顧客目線では、安いイメージが焼き付いてしまい、安くしないと売れなくなってしまいます。これは極端な例ですが、マクドナルドで80円バーガーのキャンペーンをやったあとには、マクドナルドは安くてあたりまえというイメージが染み付いてしまい、苦戦を強いられたということがあります。そもそもマクドナルドは知性貧困層を販売ターゲットに据えたジャンクフードですし、金銭的価値の尺度しか持ち得ず、比較すること自体がナンセンスだということもありますが、実は、農村で極端に安く売られている野菜も、こういう意味では「マクドナルド化」しているといえるわけです。

安すぎる野菜の特徴

安すぎる野菜には、情報の付加価値が非常に乏しいという共通点があります。まず、品種名不明の名無しで販売されていることが挙げられます。ありふれた、とくに取り柄のないF1種だから、名前を表記するまでもないということや、生産者や販売者の認識不足ということなどが理由としてあります。そして、農法にとくに特徴がないということです。これは、有機農法や自然農法のものもまた然りで、国(有機JAS)や宗教系認証団体の認証の考え方も、科学的(農芸化学的)観点から多くの問題点が指摘されます。さらに、スーパーの味の薄い水太りF1野菜に慣らされている消費者の食育的意識の低さも、農村直売野菜が「安くてあたりまえ」だと舐められる傾向に拍車をかけています。

品種選びと農法、ターゲッティング絞り込みで価値創造を最適化せよ

能勢・ぎんぶなのうえんで収穫期を迎えている神楽南蛮

皆様ご承知のとおり、能勢・ぎんぶなのうえんでは、伝統品種と原種のオープンソース農産物専門という明確な品種選定ポリシーを第一の売りとしています。なぜなら、農産物の食味品質は品種によって大きく左右され、ことに伝統品種や原種は、その野菜本来の特徴を最大限に実感できるからです。逆のシーズン、早いものでは、実際に作付けする1年以上前から、伝統品種または原種であるという条件のもとで、F1種やPVP品種ではないことを慎重に確認するなど、品種選定を綿密に行っています。(花卉・鉢花の場合は、可能なかぎり原種を選定し、園芸品種しか導入ができない場合は、独占権主張のないオープンソース品種であることの確認を行っています。)

施肥や防除などの農法に磨きをかけることは、その品種特性を引き出すうえで重要となります。能勢・ぎんぶなのうえんでは、窒素施肥をできるだけ抑え、カルシウムやマグネシウムなどを強化することで、病虫害が発生しにくい体力の強化を図り、農薬不使用を実現しています。水太りしていないので、濃厚な風味の品種特性が最大限に引き出され、さらに、農薬不使用での栽培で、害虫天敵(クモ類、ナナホシテントウ、トノサマガエル、肉食性野鳥類など)や受粉昆虫(ミツバチ、アブなど)・土壌生物(ミミズなど)の生態系が健全で、これら多くの味方が訪れ、防除や受粉で助けてくれるので、農薬を使う必要性自体が生じないという好循環を生んでいます。銀鮒の里アカウントをお持ちの方は、ぜひ一度、ご来園いただき、お確かめください。

販売対象を特に定めず、多くの人に買ってもらうためには、安くするしかありません。なぜなら、多くの人は、品質価値の優位性よりも、価格の安さが購入の決め手になるからです。一方で、価値品質が秀でていて、その価値が客観的に確認できるものは、高くても買いたい(品質価値の優位性が曖昧な安い野菜は買いたくない)という高意識者層も少なからずいます。富裕層や高級レストランのようなイメージがあるかもしれませんが、能勢・ぎんぶなのうえんの場合は、育ちざかり・食べざかりのこどもがいる、食育の意識が高い子育て世帯などをメインターゲットとして想定しています。それでも、購入の意思決定が顧客の経済状況に左右されることがないよう、価格は生産者が定めず、顧客に理由を付して購入条件を提案していただくようにしています。さらに、販売の際には、品種説明書を兼ねたトレーサビリティ情報を必ず添えることで、付加価値を高める裏付けとしています。このような付加価値と合わせて、農作物全体の価値を正しく理解し、納得して買いたいという人が販売ターゲットとなります。近江商人の商売心得十訓の五は「無理に売るな、客の好むものを売るな、客のためになるものを売れ」、八は「正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ」となっています。安売りをせず、本当に必要とする人のためになるものを売ることに徹底的にこだわり、生産者(農家)もお客様も知的意識を高め、農業全体としてのブランド・エクイティを高める取り組みが、農業による農村活性化戦略では重要だと、能勢・ぎんぶなのうえんでは考えています。

【参考】唐辛子(品種名:神楽南蛮(固定種))のトレーサビリティ情報(記事配信時点で有効なもの)
https://agri.funaan.org/traceability/docs/kagurananban_pepper_20220904.pdf

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