北海道岩見沢市内の回転ずし店での殺菌剤拭き取り作業に従事していた40代女性の原告が、この作業を原因とする化学物質過敏症を発症し、所管する岩見沢労働基準監督署に労災認定を申し出たところ、「因果関係が認められない」として認定されなかったことを不服として、国に不認定決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が札幌高等裁判所であった。札幌地方裁判所での判決では、国(北海道労働局;被告)側の決定を認め、原告の訴えを斥ける判決が出たが、原告がこの決定の取り消しを求めたことによるものだ。今回の札幌高裁での控訴審判決では、札幌地裁の決定を覆し、「殺菌剤拭き取り作業を原因とする化学物質過敏症と認められる」との判決を下し、これにより、司法が労災を認める原告逆転勝訴が確定した。北海道労働局(被告)は、「関係機関と協議し、今後の対応を協議したい」とコメントしたという。
職場で徹底されないSDS熟読・化学物質安全教育の実態
化学業界におけるレスポンシブルケアの慣行として、BtoB取引において、顧客側の意向にかかわらず、製品に含まれる成分の特性やそれに基づく使用・廃棄時の注意事項、関連法令などについて客観的に示した文書である安全データシート(SDS)を提示することがある。これは、メーカーと卸売業者・代理店、顧客企業(店舗・工場など)とのリスクコミュニケーションを行うための暗黙の基本ツールであるが、卸売、顧客と下流にいくにつれて、その理解が徹底されていない実態がある。その理由として、メーカーへの根拠のない信頼や、化学への苦手意識を言い訳とした化学物質安全衛生への無関心がある。さらにひどいことに、顧客に伝えるべき情報であるにもかかわらず、SDS作成者のメーカーが「社外秘」を理由として、成分情報を隠匿するという悪質な事例も横行している。これらの原因が複雑に絡みあっていることも、化学物質過敏症問題への気付きを阻害し、問題解決を困難にしていると考えられる。
そこで考えていただきたいのが、博士学位を持つ化学専門家の利活用だ。労働基準監督署の審査官も労働組合も弁護士も裁判官も化学の素人である可能性が高く、化学の素人を言い訳として化学的なコミュニケーションができないのも、化学物質過敏症問題が公的に認知されない原因となっている。化学専門家は、相談者と弁護士や担当官との間に入り、化学の専門性が高い事項に関してのコミュニケーションを仲裁し、化学の専門性が高い判断を含む交渉を円滑に進めることができる。素人同士でのコミュニケーションが思うように進まないのは、よく考えれば当然のことだ。しかし、化学専門家がコミュニケーションを仲裁することで、化学物質過敏症が気になる相談者にとって有利に運ぶことが可能だ。
労働基準監督署や弁護士に相談する前に、ぜひ、化学専門家に相談することを検討していただきたい。
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