賢く恐れよう!危険な抗菌薬の使い方に注意!

医者の指示でも疑って!実は抗菌薬は怖い薬

AMR問題というキーワード、あなたはご存知でしょうか。AntiMicrobial Resistance、すなわち、抗菌薬耐性菌問題のことです。実は、日本の厚生労働省においても、AMR問題は重要な保健政策課題のひとつとなっているのです。

よく、生理活性の激しさから、怖い薬といえば、副腎皮質ステロイド剤などがよく挙がります。たしかに、生理活性の激しさゆえに、副作用も激しく、乱用すれば恐ろしい結果を招きかねない薬ではあります。しかし、そういった薬は、本当に必要なときに使わないことにより、症状が悪化するリスクはさらに恐ろしく、使う緊急的必要性が高い薬でもあります。実は、もっと恐ろしい薬のカテゴリがあります。それは、抗生物質や合成抗菌剤といった抗菌薬、とくに内服タイプの製剤です。風邪や高熱で医師の診察を受けたとき、医師から「とりあえず抗生物質だしておきますね。」といわれた経験はありませんか。実はそれ、非常に危険な医療指示だったりすることもあるのです。ほとんどの場合、風邪やそれに伴う発熱の原因(病原体)はウイルスです。一方で、抗生物質というのは、特定の分類範囲の細菌にのみ抗菌活性を発揮する薬のことです。よく、細菌とウイルスを混同される方が(医師であっても)いるのですが、生物学的には全く別物です。ですから、特定の細菌に効く抗生物質が、風邪の諸症状の原因であるウイルスに効くはずがないのです。

抗菌薬、おできやめんちょうの治療に用いる外用剤ならまだリスクは低いのですが、特におそれるべきは、医師が処方しがちな内服タイプの抗菌薬(抗生物質・合成抗菌剤)です。なぜなら、内服タイプの抗菌薬は、病気の症状とは全く関係がないどころか、全身の健康維持にきわめて重要な役割を果たしている腸内細菌にも壊滅的なダメージを与えるおそれがあるからです。記者も親知らずの抜歯後に、歯科医から化膿防止のための抗生物質の内服剤を処方されたことがありますが、その抗生物質内服剤を服用後、しばらくの間、激しい下痢に悩まされたのを覚えています。この下痢症状は、腸内細菌が殺滅され、腸内環境の恒常性が破壊されたことによって起こった、抗生物質内服剤の副作用です。このことからも、腸内細菌がいかに重要であるかがおわかりいただけるでしょう。とはいっても、ほんとうに必要なときに抗生物質を使用しないと、感染症の悪化で、最悪の場合は生命にかかわることもあります。ほんとうに必要なときには、抗生物質は短期集中でしっかり使って効かせるべきなのです。この場合は、やむを得ない処方例だと考えられますが、前出のような「ウイルス性の風邪の諸症状で抗生物質を出す」というのは、AMR防止の観点から、決してやってはいけないことなのです。一過性の下痢で済めばまだよいのですが、本当に恐ろしいのは、今後、特定の抗菌薬が効かなくなるAMRの出現なのです。今後、感染症に全く罹らないという確証はありません。万が一、感染症にかかったときのことを考えて、幅広い種類の抗菌薬が奏功するように、AMR問題を意識してAMRを発生させないよう日常的に備えておくことが、何よりも勝る「保険」なのです。そのためには、「とりあえず抗菌薬」というような、抗菌薬のカジュアル使用を止め、医師が処方した際も、「この抗菌薬はほんとうに必要性があるのでしょうか」「なぜ必要なのでしょうか」と、医療指示に不審な点がないかどうかを問いただし、診療報酬稼ぎに躍起なビジネス医師を許さない歯止めの質問をすることも大切な心がけです。もし、医師に直接言いにくいという場合には、医薬分業制度をうまく利用して、医師に相談すべきだったことを、処方せん薬局の薬剤師に相談し、薬剤師の方から、医療指示を出した医師に交渉してもらうという方法をとるとよいでしょう。医師から出された処方せんに従って調剤するのが基本ですが、薬剤師のより適切な提案により、処方せんを出した医師の指示が覆り、その提案が優先されることもあるからです。

日常的に大切な心がけ

なにより細菌感染症にかからない生活習慣が大切です。具体的には、細菌性食中毒の原因になりがちな食べ物を避けたり、毎日の快便チェックで、腸内細菌叢の健全化に務めることです。細菌感染症のトラブルを回避する最大の鍵が腸内細菌であることは、容易に想像できるのではないかと思いますが、おそらく、あなたの想像以上に、腸内細菌の役割は重要なはずです。腸内細菌叢が優れていて、なおかつ強ければ、仮に病原体が侵入してきたとしても、感染に至らずに済むことも多いものです。逆に、腸内細菌叢が劣化し、弱いものであれば、本来は感染しないはずのわずかな病原体にも感染し、重症化することもあったりします。

皮膚の常在菌も、皮膚の健常性維持のためには重要です。コロナ禍の過剰な潔癖風潮の余波がまだあるようですが、過剰な手指消毒は問題があります。記者も実感していることですが、他人の手の脂が匂うものに積極的に触れたり、他人が用を足したあとの洋式便座に座ったりすると、皮膚常在菌の多様性が豊かになるためか、まるで「天然の皮膚保護クリーム」を塗ったかのように、皮膚の状態がよく保たれやすくなるのを感じます。時折、手洗いや入浴などで、常在菌の増えすぎをコントロールし、清潔な状態を維持することも重要ですが、適正量を保つ前提でいうなら、消毒よりも他人との菌交換のほうが、常在菌の観点ではよいのだというマインドセットに取り戻すことが大切です。要するに、日ごろあたりまえのようにしていることで神経質になりすぎないことが大切で、大多数の細菌(病原性のないただの菌や善玉菌)には寛容にあるべきだということです。

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