警告!その知ったかぶり、喧嘩を売っていませんか?
オーガニックを売りにした東京の焼き菓子店「Honey×Honey xoxo(ハニー・ハニー・キス)」(※無期限閉店中)が引き起こしたClassⅠ(フグ毒・毒キノコ・猛毒植物と同等レベル)食中毒事件は、オーガニックそのものに対する信頼を失墜させる一方で、皮肉にも「(食品添加物などの)化学物質はもっと使うべき」という逆の論調ももたらしました。そして、各メディアが深堀りしていく過程で、食品事業者としてあまりにも無知な「知ったかぶり」の真実が次々と露呈しています。例えば、ベーキングパウダーが食品添加物製剤であるにもかかわらず「無添加」と表示する無添加偽装のベーキングパウダー問題や、ごまかしの意図があるともとられかねないような特定原材料(アレルギー食品)のわかりにくい表示は、以前にFMGが問題提起したとおりですし、食品品質に関するコミュニケーションでも、ブランデー漬けケーキといっておきながら、実際には、ブランデーではなく、バランタイン・ファイネストという低価格帯のブレンデッド・スコッチウイスキーを使っていたという、ガストロノミーに喧嘩を売っているのだといわんばかりのコミュニケーションを商業SNSで行っていたこともダメ出しされています。(さらにいうなら、スコッチウイスキーには、食品添加物のカラメル色素を何の断りもなく添加することも、製造国の法律では容認されていますから、無着色である旨が記載されていないかぎり、またしても「無添加」表記がウソであることを疑う根拠にされる可能性もあることになります。)これら一連のダメ出しで、Honey×Honey xoxoが食品事業者失格といえるほどに無知であり、それを隠蔽するために、「オーガニック」「無添加」という、マーケティング上きこえのよいハッタリキーワードに依存していたかがさらけ出された格好です。このような傾向は、低学歴の文系でスピリチュアル系を好む人に多いと指摘する人も多く、そのことには、FMGも、記者の長年の市民運動経験に照らしても異論はありません。とくに理系の高知性者層がスピリチュアル系を強く嫌う理由のひとつともいえます。
耕作放棄地問題を解決できるのは化学肥料のおかげ、場合によっては農薬も
「都会の消費者の無知なのに過激で身勝手な『オーガニック信奉』が、農村の耕作放棄地問題をこじらせたり、農業を疲弊させているのです。」
このように批判するのは、2年前から、能勢の未利用農地を開墾して、次代のこどもたちに、農業社会起業の夢をもってもらうべく取り組むふなあんSEPCの教育農園、能勢・ぎんぶなのうえん(大阪府豊能郡能勢町)です。その農業のスタイルは生態系賦活型の化学農法で、多くの人が安っぽいイメージを持っているような「無農薬有機農法」とは一線も二線を画するものです。「都会の皆さん、もうこれ以上、あなた方の身勝手で搾取的な行動で、オーガニックのイメージを悪くするのはやめてください!例えば、これまでアリエールとかレノアとかマクドナルドとか散々不摂生生活を続けた結果、ある日突然、化学物質過敏症を発症し、それからは、『有機野菜・無添加じゃないとダメ!助けてぇ〜』とか、『理系音痴で思考停止自棄スピ』とか、何なのでしょうか。(そういう人は、固くお断りします。)化学肥料を含めて、自然の理にかなった施しをすることで、再び、大地を肥やしていき、農地を自然生態系サービスの重要な構成要素として、生物多様性を豊かにすることこそが、本物のオーガニックです。農林水産省も誤解を招くような有機JAS制度を設けていますが、これもそもそもは都会人の空論。騙されないでください!」と、能勢・ぎんぶなのうえんは釘を刺します。
能勢・ぎんぶなのうえんでは、十分な量の植物性堆肥を施すと同時に、ようりんや苦土石灰を元肥として活用し、追肥では、硫酸塩系の肥料を重点的に施肥しており、その多くは、クリーンな化学肥料です。その甲斐あって、農薬不使用での栽培が実現できています。これまで、農薬使用以外のIPM技術の組み合わせによって、農薬を使用する必要性がない状況を維持できたので、農薬不使用というわけです。昨年は、窒素肥料は植物性堆肥と尿素のみを使用し、アンモニア性窒素は使用していませんでしたが、土壌微生物の活動がまだ鈍い早春では、効きが思わしくないこともありました。そこで、今年からは、低温期の速効性に優れるうえ、CECによる肥料分保持効果も期待できるアンモニア性窒素肥料の硫安施肥を見直しており、く溶性施肥と相乗的に作用し、良好な経過です。晩秋の春から秋には、害虫を捕食してくれるトノサマガエルやナナホシテントウ、地表活動性のクモ類、各種の野鳥類、受粉を行ってくれる有益なハチ類など、多くの動物の仲間たちが定住・来訪します。労力の割には土も肥えず、収量も低く、味も特段によいわけでもない一般によくいうところの有機農法の畑と、化学の力を賢く利用する能勢・ぎんぶなのうえん、どちらのほうが幸せな畑だと思いますか?火を見るより明らかではないでしょうか。より幸せな農業技術を普及させるため、能勢・ぎんぶなのうえんでは、2024年の春からは、播種前種子のジベレリン(植物成長調節剤;農薬)処理による発芽・活着率向上にも取り組んでいく予定です。厳密には、圃場全体では農薬不使用にはならなくなりますが、本来、農薬とは、農業収量の向上と環境改善を助けるために使用するものです。「あなた(消費者)のエゴや自己満足のために『農薬不使用』を貫いてきたわけではないのです!植物や生態系の生物にとって、結果的に有益になるのであれば、農薬は使用しますよ!」(能勢・ぎんぶなのうえん)
ケミカリーセーフとは「そのものを含めて、物質レベルで全体的に安全」であること
化学物質問題のほとんどは、本来あるべき使用方法から逸脱した過剰使用や不適切用途使用の問題です。化学物質の種類は多くあれど、その化学物質の一つひとつが問題になる場合は、正しいといわれる使用方法で使われたとしても、どのような使い方をしても、その毒性などが問題となるような化学物質の場合で、なおかつ、他の化学物質の代替選択肢が十分にある場合や、嗜好目的など、リスクに見合った公益上の重要性が認められない場合に限られ、そのような場合は、禁止や規制が検討されるべきだといえます。
前に示したような化学肥料を構成する化学物質のほとんどは、安全性上の問題がほとんどないシロ物質です。やはり、化学肥料が起因する問題のほとんどは、過剰施肥や農芸化学の考察が不十分な施肥によるものですし、むしろ、有機農法で使用が認められ、実際に多く使用されている鶏糞など家畜糞堆肥のほうが、合成殺虫剤や病原性微生物によるコンタミの問題や、過剰施肥による水質汚濁や圃場衛生上の問題など、問題になることがあります。
実は、流亡の無駄を抑えた最低限量の化学肥料を使う施肥体系は、トレーサビリティ上、ケミカリーセーフ(chemically safe)の品質保証がしやすいという優位性もあり、客観的で最もわかりやすい安全性を提供することができるのです。これが、有機農産物よりも化学農産物のほうが安全性上信頼ができる根拠です。認証マークや俗説などを過信したりせず、あなた自身の化学リテラシーで、化学物質の使用履歴をしっかりと理解し、客観的に信頼できるものかどうかを確認してから買うようにしていただきたいものです。
※能勢・ぎんぶなのうえんでは、ケミカリーセーフを保証するトレーサビリティ情報として、作物に施肥した肥料成分についても、成分単位の情報開示を行っています。
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