岩手県八幡平市の観光農園が倒産:関連会社の猛毒殺菌剤使用味付け卵問題が引き金か

岩手県八幡平市の観光農園で不審な休業が続いていた問題で、この観光農園を運営する農業生産法人サラダファーム(岩手県八幡平市)が7日に事実上の事業停止状態となり、16日から自己破産申請の準備に入っていたことがわかりました。信用調査会社の帝国データバンク盛岡支店によりますと、負債総額は約2億1900万円ということです。

鶏舎用消毒剤を意図的に混入し営業禁止処分となった企業から分社した関連会社

農業生産法人サラダファームは、ことし1月に食品添加物としての使用が認められていない塩化ジデシルジメチルアンモニウムを味付け卵の製造時に意図的に使用したとして、無期限の営業禁止処分(1月31日付で解除)を受けた旧 岩手エッグデリカ(岩手県八幡平市;現 たまごファクトリー)の農業部門として、2008年に分社化してできた経緯があり、2019年には、不審な休業で問題となっていた観光農園を開設、コロナ禍が続いていた時期にも黒字を確保し、こどもを対象とした食育にも取り組んでいたということです。ところが、ことし1月に、前述の関連会社による違法食品添加物(有害物質混入)問題が発覚、この、食品業界全体の信頼をも揺るがしかねない想定を超えた不祥事が、関連会社を含めた信用低下の引き金になり、急速に業績が悪化、サラダファームの倒産の一因になったとみられています。岩手県の地元メディアは、サラダファームは関連会社の旧 岩手エッグデリカから資金援助を受けてきたものの、その旧 岩手エッグデリカが前述の不祥事を起こしてから、その資金援助は途絶え、さらには、過去の赤字の影響もあり、サラダファームの資金繰りが限界に達したと報じています。

杜撰な化学物質管理が致命傷となったか、化学軽視が経営リスクに

関連会社の有害物質混入で問題となった塩化ジデシルジメチルアンモニウムは、鶏舎消毒用の動物用医薬品「クリアキル」「トライキル」などの有効成分として使用されている猛毒の陽イオン界面活性剤(俗称:逆性石けん)で、2019年から、0.4%以上で劇物に指定されている有害化学物質です。(もちろん、食品添加物としての使用は認められていません。)旧 岩手エッグデリカが大量の鶏卵を扱うことから、その鶏卵を生産する養鶏場とは密接な関係があり、その立場を悪用して、バタリーケージを使用する工業的養鶏では事実上の必須と認識されるほど身近に使用される塩化ジデシルジメチルアンモニウムを有効成分とする鶏舎用消毒剤を、味付け卵のかび防止を目的にした食品添加物用途として不正に流用していた疑いが持たれます。

工業的養鶏に欠かせない猛毒物質、塩化ジデシルジメチルアンモニウムの構造式

ESG上、劇物や毒物の使用を検討する際は、必ず化学の専門家(有資格者)の指導を受けて、使用の是非を判断すべきです。(記者は環境化学を専門分野とする農学の博士号と、それに伴う毒物劇物取扱責任者の資格を有する化学の専門家です。)

【参考】
塩化ジデシルジメチルアンモニウムを劇物指定する旨の通知(2019年6月19日付;厚生労働省医薬・生活衛生局長)
https://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/doku/tuuti/R010619/20190619tuuti.pdf

旧 岩手エッグデリカ不祥事に関するNHK盛岡放送局の報道(1月31日付)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/20230131/6040016698.html

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