緊急保護者会は効かない薬をつけるようなもの
福岡県宮若市の河川合流点で水あそびをしていた小学校6年生の女子児童3人が川の深みにはまり溺死するという痛ましい事故が、夏休みが始まって早々に発生してしまいました。これを受けて、当該地域の小学校は急遽、緊急保護者会を招集し、こどもの見守り体制を強化するよう周知徹底を図ったということです。緊急保護者会を招集すること自体は至極当然の流れですが、問題はその内容です。このところの「こどもの見守り体制を強化」するといえば、自然の危険な場所や知らない人など、大人の「素人感覚」でなんとなく「危険」だと思うものから無闇矢鱈に遠ざけようとする動きが通例になっています。しかし、これでは、変化や多様性に向き合う課題解決力の高さにつながるレジリエンスの高いこどもに育たず、根本的対策にはなりません。
こどもが未知の刺激を求めるのは当然のこと
こどもには、ESD(教育)に正しい理解のある大人の指導監督のもとで、自然や社会の変化刺激をできるだけ多く体験させることが、レジリエンスを高める、ESD上正しい考え方です。今回の溺死事故は、児童だけで起こり、大人の指導監督下になかったことで起きたといいます。この、大人の指導監督下になかったという、こどもの教育に対する関心の低さが露呈したことが、このような惨事が起こった根本原因といえます。性格や気質による個人差こそありますが、こどもが未知の刺激を求めることは当然のことです。保護者や教職員、地域の大人や野外活動などに携わるNPO職員は、このような、至極当然なこどもの特性を十分に認識したうえで、指導監督を行うべきです。
川あそびなどの自然あそびは、可能なかぎりさせてあげるべきです。このような、こどもらしい体験を、大人の都合で制限するようなことは、あってはならないことです。残酷なようにきこえるかもしれませんが、自動車、崖(地形)、水、危険生物(マムシ、マダニなど)など、死亡や負傷のリスクとはいつも隣り合わせで生きています。例えば、街中を走る車にはねられると死亡して危険だということばかりにこだわると、外出そのものを禁止しなければならないことになりますが、そのようなことが非現実的なことは誰でもわかることです。要は、リスクとの向き合い方が問題なのです。さまざまなリスクは身近にあると認識すべく、常にヒヤリハットを共有する習慣にしたうえで、そのようなリスクとどのように向き合うか、万が一危険な事態に遭遇しかけたら、生き残るためのすばやい判断ができるように育てるのが、周りの大人の責任というものです。このような常日頃の取り組みは、自然災害などが発生しても生き残る防災にもつながる考え方です。
里山など自然の多い地域は、ナチュラルリスクに満ちていますが、正しい認識を共有して向き合えば、決して危険ではありません。危ないからといって、闇雲に遠ざけるのではなく、リスクの向き合い方を育てる教育に、地域が一丸となって取り組むことが、こどもを守るうえでなにより大切であるということをお伝えしておきます。
大人でも素人判断は危険!自然を相手にしたあそびはNPOなどの専門家同伴で
農村では、一見して何も脅威がなさそうな畑やナチュラルガーデンであっても、マムシやマダニに遭遇するリスクがあり、素人判断のカジュアル訪問は危険を伴うことがあります。農村などの自然が豊かな場所であそびや濃密な体験をしたい場合は、必ずNPOなどの専門家(ガイド)の同伴で行動するようにすべきです。保護者同伴でも危険を伴う場合がありますので、死にたくなければ、必ず守ってください。能勢・ぎんぶなのうえんも、完全予約制にしていますが、これはなにより、訪問者の安全のことを考えてのことなのです。夏休みの里山での活動は、必ず実施主体に予約をとったうえで、活動を行う際は、必ず、実施主体(NPOなど)の専門家同伴を確認してください。
【ご注意ください】
「こどもの自由」を曲解し、ただ単に「こどもが喜ぶからやっているだけ」というように、安全監督をおろそかにするようなプレイパーク等のケースもあります。都市部・農村部(里山)の環境条件を問わず、活動内容に関する高い専門性をもった専門家の安全監督が不十分なプレイパーク等には十分ご注意ください。
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