温帯性シンニンギア:山野草愛好家にとくにおすすめの理由

Sinningia insularis

イワタバコ科シンニンギア属は、日本からみてちょうど地球の反対側のブラジルを主な原産地とし、一部の種は、アルゼンチンやボリビアにも分布しているといわれています。以前からあるシンニンギア・スペシオサのハイブリッド品種、通称「グロキシニア」が温室の鉢花のイメージが強いせいか、熱帯産植物のイメージが強いですが、実は、塊茎性シンニンギア属の多くは、リオデシャネイロ以南の、四季がある温帯地域に自生している種が多く、耐寒性はほぼ同じ地域の原産のベゴニア・センパフローレンスとほぼ同等の0℃以上で、関東南部や関西の平野部では、凍結や霜を避けられる軒下で越冬可能です。(寒波襲来時は念のために室内に取り込みます。)原産地の気候は、日本の気候でいえば、沖縄県から鹿児島県あたりに近いといえるでしょう。

実は、シンニンギアの1年のライフサイクルは、日本の冬季落葉性(夏季生育型)山野草に近く、萌芽は意外と早く、3〜4月に芽吹く品種が多いのです。これは、熱帯性のイワタバコ科山野草のアキメネスやユーコドニアの萌芽が5月頃になるのと比べると、かなり早いことがわかります。一方、落葉は11月頃で、12月になっても自然落葉しない株もあります。これも、日本の冬季落葉性(夏季生育型)山野草に近いといえます。昔のシンニンギアの栽培マニュアルでは、秋に茎をすべて切り取ると説明されることが多かったですが、葉が青々したうちに切り取ると、それ以降は光合成ができなくなるため、春の萌芽の際にエネルギー不足になって萌芽せず、そのまま萎れてしまうということもあります。冬になると、塊茎のクラウン(突起)部と茎の付け根の間に離層ができ、自然にポロッと取れることが多いですが、たとえ葉が老化してみすぼらしくなっても、落葉するぎりぎりまでできるだけ強い日光に当て、このようになるまで放置するのが現在の正解です。

山野草愛好家の中には、ブラジル産と聞くだけで、異国の花で派手なだけだと思いこんでいる方もありますが、塊茎性のシンニンギアは、ビビッドな花色ながらも、自然な草姿で、日本の山野草にも通じる趣があります。伝市鉢のような山野草鉢にもよく合います。(よく考えてみれば、日本の山野草でも、マツモトセンノウやフシグロセンノウなど、シンニンギアに多いビビッドな色の花を咲かせるものがあったりもします。花にコーレリアのようなスプラッシュドットが入るものもありますが、日本の山野草でのこの咲き方は、ホトトギスが代表例です。)原生地では、大きな岩がある礫地に咲いていることが多いので、そのようなイメージを鉢で再現してみるのもおもしろいでしょう。ただ、根は深くまで張り、品種によっては、塊茎がありながらも、細い紐状の地下茎を伸ばす「ハイブリッド方式」の根張りをするものもあるので、そのような品種で、7号鉢サイズ以上の大株ではない場合は、中深(標準深さ)の鉢がおすすめです。(8号以上サイズの鉢だと、十分な深さがあるため、浅鉢に植えます。)

少し根気は必要ですが、実生でも3年程度で開花する品種が多くあります。品種によって差異がありますが、花粉塊も柱頭も大きい品種では、受粉しやすく、結実もしやすいです。受粉後1ヶ月以内に完熟し採種できます。5〜7月頃に完熟すれば、採りまきが可能です。(発芽適温(推定):25〜30℃)採りまきなら、早ければ1週間程度で発芽が揃います。現在、栽培試験中ですが、発芽したら、できるだけ早く間引き(ポット上げ)し、できるだけ早く肥培するのがコツのようです。(肥料が切れた状態が続くと、急に枯れ込むことがあるので、注意が必要です。9月蒔きも可能ですが、冬が近いので、加温環境がないかぎり、肥培やポット上げがやりづらくなります。山野草全体でも、開花まで播種後5〜6年を要するものも多い中で、比較的早く開花するほうですので、園芸の醍醐味を最大限に味わえます。ここまで楽しめる植物は、世界中でもそうそうないといってもよいくらいです。そのため、シンニンギア属は、世界的にも愛好家が多い属になっています。

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