能勢・ぎんぶなのうえんだより(2022年8月13日)

はじめに、残念なお知らせをしなければならなくなりました。大玉の固定種、ポンデローザの作付け約3分の1が、トマト青枯れ病に罹患してしまいました。能勢・ぎんぶなのうえんにとっては、人間の新型コロナよりも恐ろしい感染症の脅威です。感染株の治療手段はなく、除去処分しかありません。感染が確認された株は、できるだけ早く除去処分をし、健全な株への感染拡大防止を図っています。感染株を抜くときには、とても悲しい気持ちになりましたが、ポンデローザのトマト青枯れ病は、畝全体が丸ごと罹患し全滅することも少なくないことを考えると、現時点では、3分の1程度に抑えられており、不幸中の幸いだと考えるようにしています。健全な株では、現在、結実が確認されており、数量はかなり限定はされますが、8月中には収穫できる見通しです。さらに、施肥でできる感染防止対策としては、潅水による高カルシウム施肥が有効であることが確認されていますので、過リン酸石灰・硫酸加里・硫酸マグネシウムを強化し、窒素(尿素)を極力控えた施肥を行うことで、細菌感染に強い細胞にすることを意識した施肥を実践しています。なお、他の畝に植え付けているプリンチペ・ボルゲーゼトマトと神楽南蛮(唐辛子)、四川唐辛子は全株無傷で、順調に育っています。

ポンデローザトマトの後作としては、生物燻蒸作物として知られる白カラシ(アブラナ科)を作付けすることにしました。秋に播種し、来春の開花時に、土壌に鋤込み密閉し、ミロシナーゼの作用で生成するアリルイソチオシアネート(AITC)ガスの殺菌作用で土壌燻蒸効果を得ます。AITCは、わさびやからし、辛味大根の辛味成分(食品成分)としておなじみの成分です。生物燻蒸は、ちょうど、農薬の石灰窒素やバスアミド(メチルイソチオシアネート(MITC))を、天然のAITCに置き換えたもので、化学合成農薬と同等以上の効果とより高い安全性が期待できることから、近年注目されている農業技術です。来年の春夏は、この畝は念のため、緑肥を兼ねたソルガムと、バレリアン(特有のイリドイドを生成)やオレガノ、タジェットなどの抗菌・防虫ハーブを作付けするか、青枯れ病耐性がより高い神楽南蛮やプリンチペ・ボルゲーゼトマトを作付けすることにしたいと考えています。次シーズンのポンデローザトマトの栽培は、幼苗期からのカルシウム強化肥料での育苗、青枯れ病抵抗性品種台木への接ぎ木や、ネギ類との混植、前作にネギ類やAITC生成能を持つアブラナ科野菜を作付けするなどの対策を組み合わせて臨みたいと考えています。次シーズンに向けての準備は、もう今から始まっています。昔懐かしい濃厚風味のトマトの栽培の裏には、これだけの苦労や苦悩もあるのだということをご理解いただけましたら幸いです。

盆明けから、いよいよ秋冬野菜・冬春花ものの作付けシーズンがスタート!

平地よりも冬の寒さが早く訪れ、春の到来が遅い能勢での露地栽培は、制約も多く、夏野菜の播種や育苗はどうしても遅くなりがちですが、秋の訪れもやや早くなります。残暑が厳しいとはいえ、お盆明けの能勢では、秋を告げるセンニンソウが咲き誇り、秋風も感じられるようになります。4日前に仕込んだチコリ・カステルフランコのプライミング(保湿冷蔵)処理も発根がみられ、成功したようですので、月曜日には、ぎんぶなのうえんでポット播種を行いたいと考えています。順調にいけば、晩秋から年末には、散り斑模様のバラのような、とてもフォトジェニックなチコリが収穫できる見込みです。年末の食卓を彩ることができるよう、栽培していきたいと思います。ほかにも、キオッジャ・ビート(バルバビエトラ;横断面に紅白の渦巻き模様が現れる、イタリアの伝統品種)やフローレンス・フェンネル、田辺大根、天王寺蕪、のらぼう菜、日本ほうれん草、カーボロネロ・キャベツ(非結球タイプ黒キャベツ)などの作付けを予定しています。花は、カサバルピナス、ダイアンサス、セントーレア(コーンフラワー、イエローサルタン)、キンセンカ、スカビオサ、エリシマム、アグロステンマなどの植え付けを予定しています。延期になってしまったバレリアン(Valeriana officinalis;純正バレリアン)の播種も予定しています。バレリアンは、鎮静剤としての薬効が知られている、特有のイリドイド(バレポトリエイト類)などを生成しますが、バレリアンは、有機栽培におけるコンパニオンプランツとしての有用性も知られていることからも、これらの特有成分は、農業のIPMにおける有用性も期待できる可能性があることから、イリドイドIPMを実践するうえでの重要な植物としても期待しているものになります。鹿の子絞りやレース生地のような雰囲気の、桃色がかった白い花には、初夏にふさわしい爽やかな香りがあります。

この秋冬シーズンは、早めにスタートすることで、来年の春には、多くの花を咲かせることができるよう、取り組んでいきたいと思います。

※園芸で「バレリアン」というと、同じ旧オミナエシ科(現 スイカズラ科)のセントランサス(バレリアンもどき)と混同されることがあることから、本来のバレリアン(Valeriana officinalis;セイヨウカノコソウ)を純正バレリアンとしています。日本での栽培事例は非常に少ないものになります。なお、和種のカノコソウはValeriana faurieiといい、セイヨウカノコソウと同様に鎮静剤としての使用実績があります。バレリアンもどきは、花にはバレリアンに似た香りはありますが、薬用にはなりません。

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