北海道帯広市の道十勝総合振興局に、ふなあん市民運動メディアが環境毒性リスクの警告を促している成分を含む消毒薬が22日に納入されていたことが判明しました。
問題の消毒薬は、動物用医薬品に指定されている陽イオン界面活性剤系消毒剤のパコマ(Meiji Seikaファルマ)で、LASに類似した長鎖アルキルベンゼン構造(いわゆる「逆性LAS」構造)を持つことから、化学構造論上、他の陽イオン界面活性剤よりも高い環境毒性リスクが疑われること、さらに、病気に罹患した牛等を静脈注射で薬殺するという反倫理的な用途外使用も畜産業界で横行しているほど急性毒性が強いことから、使用に関しては警告を促しています。畜舎・器具(対物用途)だけでなく、鶏などの畜体への使用に関しても適用があります。(パコマの有効成分に関する詳しい化学情報は、2021年12月28日配信の記事をご参照ください。)
※パコマの他にも、陽イオン界面活性剤には全般的に強い急性毒性があります。トライキルやクリアキルの商品名で知られる消毒薬の有効成分のジデシルジメチルアンモニウム塩化物は、毒物及び劇物取締法の劇物に該当します。それらの化合物群のなかでも、パコマの有効成分の陽イオン界面活性剤は、環境毒性レベルが最も高いレベルであるという意味です。
●パコマに関する情報(Meiji Seikaファルマ)
https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/animalhealth/la/productinfo/pdf/EVPMM.pdf
その他、同時に納入された消毒剤で、映像解析で見て取れるものとしては、アンテック ビルコン®S(デノボ生成型次亜塩素酸系消毒剤;エランコジャパン)、ラビショット(酸性エタノール主剤(手指消毒用);健栄製薬)があります。アンテック ビルコン®Sは、塩化ナトリウムの塩化物イオンを、モノ過硫酸水素カリウムの酸化作用で次亜塩素酸まで酸化することで、次亜塩素酸としての消毒効果を得る消毒剤で、おもに、鶏舎や車両などの対物消毒用として使用される消毒剤です。パコマよりは環境毒性リスクは低いものの、多用されれば、それなりの環境影響が懸念される製剤です。(アンテック ビルコン®Sのリスクコミュニケーション情報の詳細は、2021年11月12日配信の記事をご参照ください。)ラビショットは、主成分のリン酸酸性エタノールには問題がないものの、添加物にエチルパラベンや合成界面活性剤などが添加されており、手指消毒用として広範に使用する製剤としては安全性に疑問があります。
●アンテック ビルコン®Sに関する情報(エランコジャパン)
https://chikusan.elanco.com/products/antekku.html
●ラビショットに関する情報(健栄製薬)
https://www.kenei-pharm.com/medical/intro/rabishot_gel/01.php
これらに示したような消毒薬を、リスクコミュニケーションを十分に行うことなく、自治体が養鶏場に配布するとすれば、大きな問題があるといえます。
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