田辺大根というなにわ伝統野菜(大阪府の伝統品種)をご存知でしょうか。田辺大根は、東成郡(現在の大阪市東住吉区)田辺地区発祥の固定種の大根で、品種消滅の危機に瀕していることから、「幻の大根」ともいわれます。能勢・ぎんぶなのうえんでは、栽培数量がきわめて少なくなっている、この田辺大根の採種・継代で品種の保存に、当初から取り組んでいます。大阪市発祥ということで、どちらかといえば暖地型の品種になりますが、能勢の冬は、容赦なく氷点下まで冷え込む東北南部に匹敵する冷え込みのため、葉は多少傷むことがあります。しかし、能勢特有の昼夜の寒暖差で鍛えられた田辺大根は、能勢の厳しい冬に耐えるべく、細胞液の濃度を極限まで高めます。その結果、甘み・香り・食感(テクスチャ)のすべてで凝縮された、究極の濃厚風味の大根に育て上がります。田辺大根は、一般的な大根に比べると、栽培は困難とされ、高い栽培技術を必要とするといわれますが、能勢・ぎんぶなのうえんでは、能勢の厳しい冬に耐え、能勢だからこそできる、田辺大根の優位性を最大限に引き出すための栽培技術の工夫を行っています。
田辺大根は、根長が10〜20cm程度の小型種で、品種特性としても、緻密で煮崩れしにくい肉質や辛味と香りとの絶妙なバランスといった、他の大根にはみられない良さを持っています。一度、田辺大根の魅力を知ると、今日で一般的な大根がクセがなさすぎて水っぽく感じるほどです。
ファーマーズレシピの大根なますで、田辺大根の素の実力を感じる
田辺大根をできるだけ薄く輪切りにし、その後、線切りにします。線切りの田辺大根は水にさらさず、大さじ3杯程度の酢に小さじ半分程度の海塩を溶かしたなます液とよくあえるとできあがりです。素材の味がしっかりとしていますので、素材の持ち味を最大限に感じていただくためには、だしや砂糖などはあえて加えず、できるだけ簡素な味付けでお楽しみいただくのがおすすめです。
胡椒やオリーブオイル、バルサミコ酢などで味付けをするイタリア風アレンジでもよく合います。
ふろふき大根やおでんにすると、これまでに体験したことがないほどの、しっかりとした肉質と、大根の風味がしっかりとした食べ応えで、感動させられます。
お酒はクセ味が強い個性的銘柄がおすすめ!
すべてにおいて、風味が強い大根になりますので、合わせるお酒も、個性的でクセ味が強いものと合わせると、クセ味同士がハーモニーを奏でて、より一層愉しめます。具体的には、以前ご紹介した、能勢の銘柄「秋鹿 もへじ山廃」など、濃醇で甘口ではない銘柄がおすすめです。爽やかな酸味や米の味がしっかり感じられる日本酒と合わせると、豊かな風味を奏で合い、すばらしい晩酌をお楽しみいただけます。水のようにクリアで淡麗な銘柄ですと、銘柄によって差はありますが、田辺大根のしっかりとした風味で、お酒のほうが味負けしてしまうかもしれません。
洋風レシピですと、例えば、タリスカーなどの爽快な刺激感があるスモーキーなシングルモルトウイスキーはいかがでしょうか。秋田県の名産品でいぶりがっこという大根漬けの燻製があるように、大根とスモーキーフレーバー、これが意外とよく合うのです。他の甘さ控えめのスモーキーなウイスキーと合わせても、意外なマリアージュが愉しめるかと思いますので、ぜひお試しください。
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