忘年会シーズン目前!鶏肉生食によるカンピロバクター食中毒に厳重警戒を!

侮ると怖いカンピロバクター食中毒

カンピロバクター食中毒は、ほとんどの場合、生(または半生)の鶏肉が原因食材となります。(鶏肉以外の食材が原因となる場合は、生の鶏肉を扱った後の調理器具を洗浄せず、そのまま他の食材を扱ったために、生の鶏肉にあった原因菌が移染するというケースが考えられます。いずれにしても、生の鶏肉が関与することがわかります。)カンピロバクター食中毒の原因菌は、Campylobacter jejuniC. coliといった、グラム陰性細菌のカンピロバクター属細菌です。厚生労働省の市場調査の結果、ほとんどの市販生鶏肉から、カンピロバクター属細菌が検出されています。カンピロバクター食中毒にかかると、下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔気、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などといった、他の食中毒と同じような症状が現れますが、潜伏期間が長い場合は7日程度と他の原因菌による食中毒よりも長いのが特徴ですので、他の原因菌による食中毒よりも長い間、前述の症状で苦しめられることになります。前述のような急性食中毒症状が治癒しても、急性食中毒症状治癒の数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などといったギラン・バレー症候群を引き起こすおそれもあり、原因食品の摂食があってから1ヶ月程度は注意が必要な状況が続きます。稀ですが、とくに不摂生などで免疫力や体力が低下している状態で感染・発症すると、重篤化したり、最悪の場合は、死に至る場合も考えられます。

参考:厚生労働省 カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126281.html

原因菌が薬剤耐性菌の場合、治りにくいケースも覚悟を

過密飼育が常態化している食肉養鶏ではとくに多くの合成抗菌剤や抗生物質が投与されることから、薬剤耐性(AMR)菌の発生がとくに懸念されています。3年前に厚生労働省が行った調査では、市販の国産鶏肉の半数以上から、薬剤耐性を持つ細菌が検出されたという報告があります。養鶏で用いられる合成抗菌剤(ニューキノロン系合成抗菌剤)や抗生物質は、人用の医療用医薬品で用いられるそれらと成分が共通もしくは酷似しているため、もし、食中毒原因菌が薬剤耐性菌であった場合、治療に用いる抗菌薬が十分に効かないおそれもあり、治癒までにさらに時間がかかったり、重症化する可能性もあります。

鳥インフルエンザとともに、薬剤耐性菌はもう一つの深刻な養鶏問題

高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)とともに、薬剤耐性(AMR)菌出現は、忘れてはならない、人の健康にも関わりうる、もう一つの深刻な養鶏問題です。いずれも過密飼育が、それらの問題の解決を困難にしている最大の原因であることをしっかり認識すべきです。

薬剤耐性菌の問題の詳細については、こちらの8月17日付の記事もお読みください。

食文化保全と食品衛生管理とのバランス感覚が大切

鶏肉の生食文化は、九州南部を中心に定着しているといわれています。よく、特定の高リスク食品を法規制しようとする際には、食文化の保全や尊重についても議論される場合があります。とくにこのような危害が及ばないような場合は、食文化の尊重も大切ですが、疾患や生命の危険をもたらすこともある高リスク食品の場合は、食品衛生管理の観点に重み付けが行われることが通例であり、その考え方に基づき、牛レバーの生食禁止が食品衛生法で定められたのです。

生の鶏肉を提供するお店には行かない、忘年会の参加を辞退する

生の鶏肉を提供するお店には絶対に行かないようにしましょう。客に生の鶏肉を提供するお店は、「特別な養鶏場から特別な方法で仕入れている」などと、生の鶏肉の鮮度を科学的根拠なく過信している場合が多く、生の鶏肉料理を注文しなくても、生の鶏肉の衛生状態を過信して、生の鶏肉を扱ったまな板などの調理器具で、生野菜などの他の食材を扱っているおそれもあるからです。(詳しくは、厚生労働省による上記URLリンクをご確認ください。)そのような場合は、鶏肉を食べなくても、カンピロバクター等による食中毒にかかるおそれもあります。また、会社などでの忘年会の会場が、提供メニューとして、生の鶏肉を一品でも扱っているお店等の場合は、その忘年会の参加を辞退しましょう。また、忘年会の幹事にそのようなお店を選ばないようにお願いしておくことも、会社などの仲間の健康を守るためにも大切なことです。

事例を認知したら所管の保健所に通報・相談を

鶏肉の刺身やたたき、低温調理料理などといった料理の提供は、現行の食品衛生法では違反ではありませんが、各地域の保健所では、カンピロバクター食中毒の未然予防の観点から、できるだけ提供しないように指導するなど、独自の取り組みを行っています。生もしくは加熱不十分な半生状態の鶏肉料理は限りなく法令違反に近いグレーゾーン食品ですので、店頭のショーケースや料理紹介の広告パネル・チラシなどで事例を認知した場合(実際にその店を訪れない場合も含みます)は、直ちに、そのお店の所在地を所管する保健所に通報・相談してください。衛生上の脅威になりうる危険な料理の提供を未然に防止するため、みなさまのご理解ご協力をお願いします。

事例の紹介

ふなあん市民運動メディアは、大阪市北区(梅田地域)にある鶏肉料理店が、街頭に掲出してあった広告パネルで、鶏肉の刺身やたたき、鶏肉の低温調理(半生状態)といった高リスク料理の紹介事実を認知し、直ちに所管する大阪市保健所 北部生活衛生監視事務所に通報しました。しっかり聞いてもらえますので、店名・所在地・お店の電話番号をしっかり伝えてください。ちなみに、そのお店は、店内で喫煙可能であることを広告パネル上で標榜していましたので、喫煙による免疫力低下の問題や受動喫煙の公衆衛生上の問題についてもあわせて指導するよう、お願いしました。

豊中市保健所の場合は、独自に鶏肉料理店に、カンピロバクター食中毒の未然防止のために、鶏肉の刺身やたたきなどといった高リスク料理をできるだけ提供しないよう、独自の指導を行っているということです。

池田市に本部事務所があり、豊中市内にも店舗がある鶏肉料理専門店Nも、豊中市内の店舗で、店頭掲示のメニューと店舗運営者のウェブサイトから、生のささみ肉や鶏レバーを提供している疑いが判明しましたので、本部事務所のある池田市を所管する大阪府池田保健所と、豊中市内に店舗があることから、豊中市保健所にも通報し、指導要請をしました。(いずれの保健所も、この店舗Nには、定期的に指導に行っているということです。)

なお、生の牛レバー(刺身・ユッケ等)を有償提供することは、明らかな食品衛生法違反(処罰対象の犯罪)ですので、空振りになりそうなごく小さい事例(例:参加費を徴収する仲間うちでのパーティ)やヤミの事例であっても黙認せず、必ず所管の保健所または最寄りの警察(夜間・休日など保健所の開所時間外の場合)に通報してください。

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