日本が発展途上国に脱落しないための日本らしい方法

1月2日のロイターの記事で、「展望2021:日本、先進国から脱落も リモート化に壁=野口・一橋大名誉教授」というのがあった。この記事は、このままではコロナ後の日本は先進国の座から転落するという衝撃的なものであった。レビューアーの私も、このままでは冗談抜きで発展途上国に転落するということでは意見を同じくするものの、進むべき道筋については、いくつか異論もあるので、これから説明していくことにしたい。

英語力よりも日本語力とOA活用能力を

もちろん、英語力はそれなりに重要であって、あるに越したことはない。少なくとも英文読解くらいはできるようにしたいものだが、多くの現代人が危機的なまでに欠如している能力がある。それは、日本語力とOA活用能力だ。日本語力は親しい人や会社などの同僚や上司と話せるから問題ないというかもしれないが、そういう問題ではない。長文読解能力や文書情報活用能力、論理的構文能力が著しく欠如している人が多いのだ。例えば、「長文は避けられるから手短にすべきだ」と会社から指導されるという人は多いだろう。しかし、わたしに言わせれば、そういう指導をする上司は最低である。文章はコミュニケーションをするためにあるのであり、長いからという理由だけで避けるのは筋が通らない。もちろん、必要以上に長くするという意味ではなく、意味がある長文まで避けるのがよくないという意味である。意義深い情報は、長文にこそあるのであり、それを正確に解釈し利用する能力は、生産性に直結するのである。

長文を読むのが面倒臭いとはじめから避けるのは生産性を下げる行為であり、生産性を高めたいのなら、あえて長文から重要な解釈を得よ

ということを肝に銘じるべきだと訴えたい。

次にOA活用能力の問題だ。近くの人で、

LINEやTwitterをやっているから大丈夫

といっている人はいないだろうか。実はそれ自体が危険信号なのだ。これらの商業SNSは、短文の口語文でコミュニケーションを完結させることが多く、依存性があるのだ。はじめのうちは趣味の会話のつもりが、ビジネスや公益業務にも持ち込む公私混同をする人が意外と多いのだ。このような浮ついた考え方は、ビジネスや公益業務でのコミュニケーションで支障をきたすのだ。仕事上のフォーマルなコミュニケーションは、伝統的な電子メールとグループウェア、電話を状況にあわせて併用するのが基本原則である。これらの方法なら、添付書類を送信共有でき、スムーズな意思疎通ができるが、商業SNSはあくまで口語会話の延長にすぎず、その機能上の制約もあり、書類の共有などはできないと割り切るべきである。フォーマルな電子メールの書き方にもマナーがあり、基本的には、紙の封書と同じく、正規の日本語表現(文語調)で書くべきである。状況に迷った場合は、文語調で書けば失礼がないが、その逆は失礼にあたることがあるので避けられたい。驚くべきは、電子メールの使い方がわからない人が意外と多いことだ。これも商業SNS依存の弊害といえる場合が多い。銀鮒の里学校などの公益業務に関わりたい方は、電子メールの使い方くらいは正しく身につけていることが活動参画の前提になる。電子メールはテレワークコミュニケーションの基本中の基本であって、それで躓くようでは、コミュニケーションに重大な支障をきたしかねないからだ。さらに、文書作成などのオフィスソフトウェアの活用、Webブラウジング、グループウェアの活用など、OA活用で身につけるべきことは多い。これらについても、最低限のレベルであるが、それでもできない人が想像以上に多く、思いやられることがある。

高度情報サービスと手工業・農業などとのハイブリッド産業を

元来、実直な気質のある日本は正確で精緻な手工業で発展してきた経緯があり、ものづくり日本の原動力になってきた。例えば、新潟県のある機械工業では、すべて日本製で新潟での自社開発に徹底的にこだわり、無故障無リコールを維持している企業もあるという。これこそが日本の誇りであり、この誇りは忘れてはならない。しかし、Society5.0で掲げられているような、工業から高度情報サービスへの移行が世界のトレンドであり、日本もそれを目指すべきだとする考え方には賛同できかねる。もし、Society5.0を完全実施するなら、前に述べたようなものづくりの誇りを犠牲にしなければならないことになる。ものづくりが高炭素だというのも誤解を招く偏見だ。日本が誇る手工業は、温室効果ガスの発生量が少ない時代に発展してきたものが多い。そして、今後は、生産時に消費するエネルギー源を再生可能エネルギーに転換することで、より一層の低炭素化を実現できる。このような日本らしい手工業や農産物などに、ICTを駆使した情報サービスを付加することで、サステナビリティ上の付加価値を高める新業態の推進を、今後の日本の発展に相応しい方向性として提唱したい。例えば、設計を極力シンプルにしたうえで、万一の故障時にはAIで原因を自動解析し、迅速な修理と長寿命化を実現する家電や、飼育環境・飼料から店頭に出回るまで、ひとつの情報に紐付けされ、完全なトレーサビリティを実現した1個100円くらいの放し飼い卵などが考えられる。

消費者の価値観変容も非常に重要

現状では、売っているものを何となく買っている受け身の人が多く、このままでは、情報で付加価値を高めることは期待できない。付加された情報の意味を理解し、なぜ有意義なのかを理解することができてこそ、高度情報サービスによる付加価値向上は真価を発揮するのだ。このことは、SDGs第12目標などにコミットする。技術やサービスが独り歩きすることのないよう、ソフトを最大限に活かせるような人間を育てる教育も重要なのだ。実は、これも、銀鮒の里学校の重要な開校目的の一つだということもご理解いただきたい。

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