【能勢・ぎんぶなのうえん技報】南米原産熱帯性ジェスネリアードCorytoplectus speciosusの試験栽培(経過報告)

新花卉の可能性を開拓するための試験栽培

Corytoplectus speciosus(コリトプレクツス・スペシオスス)は、ペルーやエクアドルのアンデス山脈北部に分布するとされるイワタバコ科植物(ジェスネリアード)です。本種は、濃緑色に白い葉脈、紫色の葉裏だけでも十分に美しく、花は葉の色からは想像もつかないような赤色と橙色の二色咲きで、花後はコドナンテのような結実性もあることから、その高い園芸的価値が期待されます。ペルーからコロンビアにかけての南米大陸北西部は、一年中冷涼でありながら、明確な四季がなく、冷え込む時期もないため、耐暑性も耐寒性もなく、そのうえ、赤道に近い低緯度と寒流のペルー海流がもたらす、アンデス山麓地域特有の冷涼湿潤なジャングルに自生するものは、冷房下でのパルダリウム環境のような特殊な超高湿環境を要求するものもあることから、日本における栽培難易度が最も高くなる原産地です。その一方で、海外情報を含む栽培事例の調査によりますと、本種にかぎっていえば、耐暑性も35℃程度まで、耐寒性も5℃程度まであるとされています。かなり挑戦的ではあるとはいえ、本種は新花卉としての技術的現実性もあることから、試験栽培に踏み切ることとしました。この耐暑性・耐寒性から類推すると、本種はアンデス山麓の低山部(標高1,000m以下)で、さほど湿度が高くならない、風通しが比較的よい場所に自生していると考えられます。ちなみに、アンデス山脈を原産地とするもので、現在までに広く普及している花卉の代表例としては、アカバナ科のフクシアやシュウカイドウ科の塊茎性ベゴニア(球根ベゴニア)などが有名です。

プロ培養土植え替え後の経過

導入してから1ヶ月半、プロ培養土での植え替えから1ヶ月となる今、非常に良好な経過を確認しています。導入時の土壌の状態は、日向土とココナッツハスク、バークチップを主体とする、目の粗い用土で植えられていましたが、これを、シンニンギアの植え付けでも使用している、能勢・ぎんぶなのうえん独自開発のプロ培養土(ピートモスベース;く溶性元肥入り)で植え替えをしてみました。施肥は、硫安とリン酸二水素カリウムを混合した酸性液肥を追肥で与え、空中湿度は、シンニンギアやプリムリナと同条件の開放条件・無保湿の置き場所で管理しています。(現時点では、試験栽培は豊中で実施中です。)すると、6月に入る頃から、脇芽が次々と伸長を始め、非常に良好な経過を確認できています。根の活着状態も非常に良好で、鉢から抜けないくらいにしっかりと活着しています。冷涼かつ特殊な保湿環境を要求する、気難しいものが多いアンデス山麓産品種のなかでも、シンニンギアなどに近い管理ができる本種は奇跡的存在であるといえます。

梅雨明け後が正念場

今年も梅雨明け後は酷暑が予想されています。栽培事例情報によれば、高温耐性は原産地の割にはかなりあるものの、念のため、梅雨明け後は何らかの酷暑対策の実施(遮光・活性フルボ酸の施用など)を検討しています。条件が良ければ、夏に開花がみられるかもしれません。

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