小林製薬紅麹かび毒ショック、継続摂取の1人死亡報告も、「シトリニンではない謎のピーク検出」どういうことか化学解説

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【信頼のドクターズ・エディション】
この記事は、博士(農学)の博士号を有する記者、オカヤマンヘンな鮒が執筆し、ふなあんインテリエゾンが責任をもってお届けしています。

【速報】小林製薬製紅麹サプリ継続摂取の1人が腎疾患で死亡

小林製薬(大阪市)は、自社生産の紅麹原料を使用したサプリメント「紅麹コレステヘルプ」を継続摂取してきた1人が、腎疾患で死亡したとの、遺族からの情報提供があったと発表しました。現時点において、小林製薬は、(詳細は不明ではあるものの、速やかな情報開示の観点から)当該製品の継続摂取が、死亡との因果関係がある可能性があるとしたうえで、今後、事実と因果関係について、鋭意調査を進めると説明しています。小林製薬製紅麹使用製品をめぐっては、「紅麹コレステヘルプ」などの継続摂取歴のある26人が腎疾患で入院する事態となっています。最新の情報によりますと、当該製品摂取が原因として疑われる入院事例の総件数は70件以上にもなっているということです。

●自社製紅麹サプリ継続摂取者の死亡事例を伝える小林製薬のウェブページ
https://www.kobayashi.co.jp/info/20240326/

小林製薬(大阪市)が製造・販売する紅麹製品(サプリメント、食品工業用原料)から、腎障害の原因となりうる謎の未同定化学物質が検出され、大きな衝撃が走っています。当初は同社のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」(機能性表示食品)を摂取した人の一部で、人工透析を必要とするほどの重度の腎障害の症状が現れた事例もあることから、当該製品の自主回収が発表されましたが、その後、酒造大手の宝酒造(京都市)や水産加工食品大手の紀文(東京都中央区)など食品関連企業約50社に、問題のある有害物質が含まれている可能性がある小林製薬製の紅麹原料が納入されていたことが判明、各社は小林製薬からの情報提供を受け、小林製薬製紅麹を使用した食品の自主回収に追われる事態となっています。化学アカデミア根拠の市民メディアFMGでは、化学的に正確な情報を発信すべく、動向を注視してまいりましたが、記事配信時点では、問題の未同定物質については、シトリニンではないこと以外はわかっていません。そこで、化学的理解による安心を提供するために、現時点で考えられることについて報じます。

【ご注意】
この記事は、博士(農学)の識者である記者が、正しい科学(化学)的理解を促すための視点や考え方をお伝えするものであり、記事配信時点における科学(化学)的推論を含みます。必ずしもエビデンスデータ(再現可能性がある結果事実)を示すことを目的とするものではありません。また、記事配信以後に、新たな事実が判明する可能性もあります。予めご承知おきください。

シトリニンとは

(-)-シトリニン

シトリニンは、Penicillium属(いわゆる「青かび」)のかびなどによって生成される、ポリケチド系かび毒(マイコトキシン;真菌毒)の一種です。シトリニン分子は炭素・水素・酸素のみから構成され、ハロゲンや窒素、硫黄などは含まれません。一般に食品用途として使用されるベニコウジは、毒性のないMonascus属の種が用いられますが、同属のMonascus ankaなどの一部の種はかび毒のシトリニンを生成する可能性があることが知られており、とくに菌種選抜を行っていない天然の紅麹に微量混入している可能性もあるのではないかとも考えられています。とはいえども、トータルリスクとしては、よほど恣意的な操作をしないかぎり、台湾や中国の伝統発酵食品の豆腐ように含まれるような一般的な紅麹使用食品は安全と考えられます。このことから、一般的な紅麹使用食品は常識的な摂取であるかぎり、直ちにおそれる必要はないと考えられます。食品一般にいえることではありますが、ゼロリスクはあり得ませんので、リスク分散や栄養バランスの観点から、サプリメントも含めた特定の食品の継続的摂取は避け、できるだけ食品化学的特性の異なる多くの種類の食品(素材)を組み合わせてローテーション摂取するのが望ましいといえるでしょう。

ポリケチドとは

アセチルCoAに由来する酢酸単位が繰り返して結合するという、最も原始的な生合成経路を経て生成される天然化合物群で、菌類のような比較的下等な生物が、生存競争で勝ち残る化学的戦略として生成する化合物が多い。(例:テトラサイクリン)表記どおり、分子内に複数のケト(C=O)構造やその名残とされる構造を持つものが多い。

小林製薬の紅麹がシトリニンを生成しないことの科学的根拠

小林製薬中央研究所は、自社で使用している紅麹(Monascus pilosus)について、シトルリン合成に関わる遺伝子を持たないことを、日本農芸化学会や日本食品化学学会、査読付き学術雑誌の”BMC Genomics”で学術報告をしていたことが、FMGの調べでわかりました。この報告では、主に中国で食用に利用されている紅麹であるM. purpreus(小林製薬では不使用)にシトルリン合成に関与しうる遺伝子を持つのに対して、自社で使用しているM. pilosusや、主に台湾で食用に利用されているM. ruberはシトルリン合成に関与しうる遺伝子を持たないことを、ゲノム解析によって科学的に証明しています。この学術報告の内容が、実際の小林製薬の製品にしっかりと反映されているものと仮定すれば、今回の小林製薬製紅麹による健康被害の原因物質が、従来、紅麹由来の有害物質として知られていたシトリニンである可能性はきわめて低く、シトリニン以外の何らかの「謎の化合物」が原因になっている可能性が高いことになります。

天然離れした操作で無視できない非意図的リスク発生の可能性も、一筋縄ではいかないリスク解釈

サプリメントでは、特定の有用物質を少しでも多く生産すべく、菌種の恣意的選抜が行われる場合が考えられます。このときに、判断を誤れば、小林製薬が説明するように、一般的な発酵食品に含まれる天然の紅麹のリスクでは考えられないレベルで、意図しない有害物質まで多く生産してしまう可能性は十分に考えられるわけです。Monascus属以外のかび毒生成性のある全く別の菌種によるバイオコンタミネーションの可能性も考えられます。さらにいえば、かびのような比較的下等な生物では、遺伝子レベルでの変異は、ほんの些細なことがきっかけとなって、頻繁に起こっているとも考えられており、とくに培養系が単純化されたような人工的な培養環境では、意図もしなかったような変異株の出現が際立って見えるようなことが起きても不思議ではないほどです。逆説的にいうなら、前述のように、紅麹サプリで健康被害が出たからと言って、直ちに(複雑系の)発酵食品中の天然紅麹をおそれる必要がないということにもなります。このような意味では、今後は、微生物の人工培養で生産される特定の化学物質の凝縮度の高いサプリメントの摂取には注意が必要ということになるかもしれません。

「謎のピーク」が意味すること

実は、天然物化学や農芸化学の世界では、天然の未知化合物との遭遇は決して珍しいことではないのです。よく知られている植物や菌類が生成する物質であっても、未知化合物が発見される可能性は十分に考えられます。それは、人にとって安全性が高い場合もありますが、今回のように、人の健康に有害である可能性もあります。

紅麹などの真菌類が生成するポリケチドなどの天然物は、類縁物質(アナログ)と同時に見出されることが多く、新規天然化合物の発見に関する学術報告も、分子構造がわずかに異なるだけの既知化合物アナログについての報告が多いものです。例えば、既知化合物と比べて、ヒドロキシル(OH)基が1多いだけのアナログが新規に発見されたとします。すると、この化合物を含む試料を逆相シリカゲル(ODS)カラムの高速液体クロマトグラフで分析した場合、新規化合物(既知化合物アナログ)は既知化合物と比べて極性が高いと考えられますので、より保持時間(r. t.)が短いピークが新たに見出されることになります。今回の小林製薬の事例の場合、比較対象の既知物質がどのようなものかわからないので、保持時間の関係がどのようになっているのかはわかりませんが、いずれにせよ、これまで全く見覚えのないような、新規化合物の可能性があるピークを、小林製薬は確認したというのです。

伝統的に使用されてきた天然のもので、化学的検証によって新たに有害性がわかった有名な事例を紹介しましょう。例えば、ウマノスズクサ(Aristolochia debilis)という奇妙な形の花を咲かせるウマノスズクサ科の植物は、まだ化学的知見が十分ではなかった時代から長年にわたり、生薬(民間薬)として用いられてきました。たしかに、ウマノスズクサには、薬学上も有益な物質も含まれています。ところが、このウマノスズクサを摂取したことが原因とみられる腎障害の疑いが発覚、化学的に検証したところ、その原因物質として、天然物ではきわめて稀な存在とされる芳香族ニトロ化合物のアリストロキア酸が特定されたのです。芳香環にニトロ基が直接結合する分子構造をもつ化合物は、毒性が強くなる傾向があることも半経験的に知られています。腎毒性は化学物質の毒性評価で優先的に評価されてこなかったこともあり、腎毒性の疑いはかなり後になってから、それも、製品などが世の中に出回るようになってから発覚することもあり、今回の小林製薬の紅麹ショックもそのことの例となってしまったわけです。

アリストロキア酸(腎毒性あり)

【参考文献】
藤村敏子 他8名、民間療法によって末期腎不全に至ったアリストロキア酸腎症の1例、日腎会誌、47(4)、pp.474−480 (2005)

市場の動向は

FMG報道局近くのドラッグストアに行ってみました。当然のことですが、小林製薬のサプリメントから、「紅麹コレステヘルプ」だけがゴッソリとなくなっていました。売られていたときの価格は、20日分で2,000円超、1日あたり100円以上と、かなり高額なサプリメントです。ドラッグストア従業員の話によりますと、直ちに小林製薬から回収要請があり、それに応えたということです。このドラッグストアでは、DHCやファンケルの紅麹利用サプリメントが販売されていますが、これらについては、25日の時点では何も変化はなく、通常どおり販売されていました。その後、FMG報道局で、配信直前の時点でのDHCとファンケルの対応について、各社ウェブサイトを確認したところ、DHCでは言及なし、ファンケルでは「当社の紅麹サプリメントには、小林製薬製の原料は一切使用しておりません」との旨だけ言及がありました。

FMG報道局近くの食品スーパーでは、25日の時点では、とくに大きな変化は見られませんでした。その食品スーパーでは、従来から紅麹利用の食品の品揃えが少ないことによっていると考えられます。約10万本の自主回収が報じられた宝酒造の発泡性日本酒「松竹梅白壁蔵『澪』 PREMIUM<ROSE>」も限定品であることもあり、もともと品揃えがなく、酒売場にも変化はみられませんでした。

化学物質政策の重要性を痛感させる事故

今回の小林製薬紅麹かび毒問題は、多くの入院患者を出し、死亡の疑い事例も報告されるといった事態の深刻さもあり、国にも抜本的かつ機動的な政策転換を迫る情勢となっています。消費者庁所管の機能性表示食品制度についても、従来の制度は、届出事業者に忖度しているといわれてもしかたがなく、適格性の事前審査も行わず、あくまでも企業の自主的責任での表示だとして放置しているのが実態です。そこで消費者庁は25日、機能性表示食品で重篤な事故を起こした小林製薬に対して急遽、消費者庁が表示を認めた機能性表示食品の紅麹使用食品で起きた事故についての報告に加えて、表示認可申請時に提出した安全性に関する資料を見直した上で、同資料を4月5日の期限で再度提出するよう要請したということです。その後、小林製薬は、消費者庁に対して、機能性表示食品表示の取り下げを申し出ていたこともわかりました。

日本はEU圏や米国などの海外諸国と比べても化学物質政策の甘さが指摘されており、今回の事故は、そのことが露呈したものといえます。これまでは、発酵法は、石油からの化学合成に替わる、安全で新しい化学プロセスだとして注目される「発酵神話」がまかり通っていたことが否めませんが、その「発酵神話」は、今回の事故で一瞬にして崩壊しました。これからは、「もし、バイオコンタミネーションが起きたら…」「もし、発酵生産で用いる菌株に望まない突然変異が起きてしまったら…」といったヒヤリハットが常識になっていくことでしょう。「発酵だから安全」ではなく、「微生物を扱うからこそ、知を結集したうえでの細心の注意が必要」というように、世の中の常識の変革が、今まさに求められています。

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