農業問題は、食や環境と密接に関わることから、市民運動で関心を持つ方が多い分野です。しかし、商業SNSで、農業問題を取り上げたドキュメンタリー映画の評論や篤農家のコメントの又聞きの過程で、情報が捻じ曲げられ、誤った情報や認識が届くことも多く、問題となっています。そこで、能勢・ぎんぶなのうえんを開墾・運営し、農業のリアルと直に向き合っている記者が、よく質問されることもある、市民運動で誤解の多い農業問題を3つ紹介します。
実は天然物がきっかけ?アミノ酸系除草剤をめぐる誤解
地球規模で行われている旧モンサント・ラウンドアップ反対運動。槍玉に上がっているのは、アミノ酸系除草剤のグリホサートです。グリホサート自体は、ホスホノメチル基を有していることや、発がん性も疑われていることから、化学物質全体での絶対評価では、たしかに無視できない程の強い毒性があるといえます。しかし、除草剤全体でいえば、毒性は低い方のランクに入ります。これは、除草剤の成分シェアが大きくなっている理由のひとつです。今日でも使用されている除草剤で最も毒性が強いランクの成分の例では、生物界全体に共通に存在するNADPHが関わる電子伝達系に直接作用するジクワットやパラコートがあります。
では、旧モンサント・ラウンドアップ問題の本質は何なのでしょうか。実は、旧モンサント・ラウンドアップ問題の本質は、そのマクドナルド性にあります。前の記事で取り上げたように、マクドナルドのビジネスの最大の問題点は、客を騙し欺き、ところ構わず圧倒的な店舗攻勢をかけて、しかたがないと諦めさせる強引さにあります。ハンバーガー・ドリンク・ポテトとラウンドアップ・グリホサート抵抗性遺伝子組み換え種子のように、セット(抱き合わせ)販売を推奨する点でも共通しています。旧モンサントでも同様のことがいえ、実際に、グリホサートやその関連のアミノ酸系除草剤の化学を知らない層も多数、反対運動に参画したとみられています。しかし、旧モンサント・ラウンドアップ反対運動に参画した人は、マクドナルドのような強引で欺瞞的な反市民的ビジネスに対して怒りが向いているという点で共通しているのです。
グリホサートの類縁物質に、グルホシネートやビアラホスがあります。意外と知られていませんが、これらの物質は、実は天然物なのです。グルホシネートは、放線菌の一種が生成する殺草活性物質として見出された物質で、バスタという商品名で販売されています。ビアラホスも、放線菌の一種が生成する物質で、それ自体にグルホシネート構造が含まれており、植物体内で代謝活性化され、グルホシネートを生成することで殺草活性を示す物質です。グリホサートは非天然物ですが、グルホシネートに倣って開発された物質です。天然ならよいのであれば、少なくともバスタはよいのでは、ということになりますが、バスタの有効成分が天然物だという事実を知らずに批判している人は、いったいどのように説明するのでしょうか。いずれにせよ、天然か合成か、ということではなく、天然・合成の別を問わず、それぞれの分子構造を化学的に理解したうえで、絶対的に評価するという姿勢が、化学物質のリスク・コミュニケーションでは大切だという教訓を示す例だといえます。
除草剤反対運動一般にいえることですが、除草剤とは、もともとは、農業における、過酷な除草作業を軽減し、その軽減分を他の農作業に充てることができるようにするために使用されるものです。そうであるかぎり、除草剤反対運動をするのであれば、反対運動をする各主体が、実際に手刈り除草を真剣にやってみて、その大変さを含めて、精神的にも身体的にも実感することです。それができることが、説得力ある除草剤反対運動には欠かせないことです。能勢・ぎんぶなのうえんではそのための体験ができる用意があります。除草剤反対運動をされたい方はぜひ!
実はオープンソース品種では採種・繁殖が自由!種苗法の誤解
商業SNSでの煽りの影響からでしょうか、よく、「近い将来、自家採種は(いかなる場合も)できなくなるのでしょう?」と聞かれることがあります。もし本当であれば、日本の農業は確実に終わりです。しかし、実際は違いますので、まずはご安心ください。現在でもそうですが、種苗法で、育種権者の許諾なく、自家採種や自家繁殖を行うことが禁止されているのは、農林水産省登録品種(PVPマークが付いているものなど)や、交配種と同様に、地域レベルで品種登録が行われている一部の固定種だけであり、育種権の独占的主張がない大部分の固定種(国内外の伝統品種)や原種は、これまでどおり自由に自家採種や繁殖、頒布ができます。実際に、合法的に自家採種が行われた種子の頒布会や交換会といった、オープンソース品種の普及促進を目指す市民運動は今日でも行われており、能勢・ぎんぶなのうえんでも行っています。
なお、「〇〇交配」などと表記されているF1の品種については、グレーゾーンといえます。自家採種をすると、メンデルの遺伝の法則に従うように、形質が揃わないため、翌年以降は同じものができず、自家採種をすること自体が無意味であることに加えて、F1品種そのものに育種権の独占的主張が存在する可能性も高くなっています。このことを知らずに自家採種を行うと、意味がないうえに、自家採種行為に対して、育種権を侵害したとして、育種権者から訴訟を起こされたり、罰せられる可能性もあります。(F1品種の挿し木や株分けなどの栄養繁殖の場合は、繁殖株にも親の形質が引き継がれますが、繁殖行為に対して罰せられる可能性があります。)これは、F1品種の取扱に注意が必要な理由のひとつです。
園芸店やホームセンターでよく販売されている「SUNTORY」「PW(PROVEN WINNERS)」などの独自開発品種のラベルがついている苗については、原則として(無断)繁殖禁止と捉えてください。自家繁殖を合法的に安心して楽しみたい方は、能勢・ぎんぶなのうえんのオープンソース種苗頒布をご利用ください。(※ご利用には、銀鮒の里アカウントが必要です。)
実は地力改善の強い味方!化学肥料の誤解
よく、化学肥料が農業における諸悪の根源であるかのように、激しく嫌う方がいます。そういう方は、リービッヒの農業哲学の原点に立ち返ってお考えになってください。そもそも、土が荒れるとは、どういう状態のことを指すのでしょうか。ざっくり言うなら、土が荒れるというのは、農芸化学を理解することなく、土の扱い方を誤った結果を表しています。施肥量が少なすぎても、多すぎても、土は荒れます。有機肥料であっても、その品質や施肥量によっては、土が荒れます。よく言われるのが、化学肥料の与えすぎや、化学肥料の施肥量に対する有機肥料(資材)の投入不足によって土が荒れるということですが、本来、化学肥料は、有機資材と合わせて完全消化を意識した施肥を続けることによって、地力改善が(化学肥料を全く使用しない場合と比べて)大きく促進されるものです。できるだけ流失による損失がないようにするために、低濃度を回数多く施肥したり、く溶性の肥料を活用します。このようにすることで、化学肥料由来分を含む余分な肥料分は、コンパニオンプランツや雑草に吸収され、それを刈り取り腐熟させ、堆肥として土壌に再還元することで、肥料効果や土壌の化学性改善効果だけではなく、土壌の物理性や生物性までも改善する効果も得られます。土壌の物理性や生物性が改善されることで、草堆肥のバイオスティムラント作用によって、根の生育が活性化され、施肥効率も改善され、より少ない施肥量でも生育がよくなります。このことを繰り返していくことで、着実に地力が向上していくわけですが、化学肥料の適正施肥は、そのサイクルの循環を加速させ、より短期間で、肥沃な土壌を作ることが可能になります。(C/N比の大きい堆肥の腐熟促進のために、窒素成分の化学肥料を加えるのも、そのためです。適正量の窒素分が、腐熟にかかわる微生物の生育を促進するわけです。)これについても、能勢・ぎんぶなのうえんで検証・実践を行っています。
いかがでしょうか。いずれも、能勢・ぎんぶなのうえんでの活動を通じて、正しい理解が深まります。あなたも、能勢・ぎんぶなのうえんで、農業の未来の夢について、ともに熱く語り合いませんか。(能勢・ぎんぶなのうえんでの活動には、銀鮒の里アカウントが必要です。取得がまだの方は、この機会にご取得ください。上のメニューボタンからご登録いただけます。
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