農林水産省は29日午前、福島県伊達市の肉用鶏養鶏場で、鳥インフルエンザが疑われる状況が確認されたことに関して、遺伝子検査の結果、この養鶏場の肉用鶏が高病原性の疑似患畜であることが判明したと発表しました。これを受けて、福島県では、この養鶏場の肉用鶏の全数、約1万7,000羽の殺処分を始めました。
これまでにない勢いで頻発
今季の鳥インフルエンザの発生頻度としては、前代未聞の勢いで増加しており、ウイルス量が例年に比べて多く、感染しやすい状況にあることは明らかとみられます。ただ、ウイルス量が多くなっているとみられる原因については指摘されておらず、とりあえずは、頻繁にウイルスが検出される「野鳥」が原因だということにされることが多くなっているのが現状です。しかし、ほんとうにそうでしょうか。
真の脅威は、感染しても無症状の鶏か?
工業的養鶏場の現実に即していうなら、バタリーケージ採卵や過密飼育ブロイラーのような工業的養鶏場では、死んだ鶏を見つけ出すだけでも精一杯の状況だというのが現状です。死亡数が急増するということには気づけるかもしれませんが、問題は、ほんとうにこれだけで鳥インフルエンザの感染拡大を防ぐことができるのかということです。人の新型コロナの場合もそうですが、鳥インフルエンザに感染すれば、必ずしも激しい症状が現れるとは限らず、外見では全くわからないような無症状の場合もあります。LPAIウイルスに感染していても見過ごされるかもしれませんし、宿主の鶏の体内で、LPAIウイルスがHPAIウイルスに変異する可能性だって無視できません。工業的養鶏場ではみな一様に衰弱したような状態ですので、症状があるとしても、この衰弱が鳥インフルエンザ感染によるものかどうかを見極めるのは、現実的には不可能といえます。大抵の場合の本音を言うなら、「まあ、顔色が変色していなかったり、死にそうではないから、大丈夫だろう」と、人間の根拠のない勘で見過ごされている程度の防疫レベルにすぎないだろう(というより、あまりにも羽数が多すぎるために、そのようにしかできない)ということです。役人や御用学者にありがちな決めつけや偏った見方にとらわれると、真実への到達(アクセス)を妨げるおそれがあります。27日記事の「トランジスタ仮説」は、このような工業的養鶏場での感染見逃しの可能性を含めた、ウイルス量の増大で、感染リスクが増大する可能性についての仮説であり、いわゆる「野鳥仮説」の対極をなすものですが、このような仮説についても、俯瞰的な科学的視点で検証していかなければ、畜産問題の解決のための真の解はいつまで経っても得られないでしょう。耕す一科学者として釘を刺しておきます。
コメント