マイクロソフトは商業ゲーム会社へ、米大手の巨額買収で

Windowsの米国マイクロソフト社(米国ワシントン州レドモンド市)は18日、米国商業ゲーム大手Activision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード;米国カリフォルニア州サンタモニカ市)を買収すると発表した。買収額は約7.9兆円で、M&Aの規模では、日本での巨額案件として世間を騒然とさせた武田薬品工業のアイルランド製薬大手シャイアーの買収(約6.2兆円)をも大きく上回る。このアクティビジョン・ブリザードの買収に関してマイクロソフトは、「商業ゲーム産業は今後きわめて重要になる成長産業だ。これを機に、(商業ゲーム産業や商業SNSが次世代型の重要事業として注目する)メタバース事業にも注力したい」と語った。ただ、独占禁止の観点から、規制当局が買収を認めない可能性もあり、今後の動向が注目される。もし、買収が実現した場合、マイクロソフトは中国テンセント、日本(米国)ソニーに次ぐ世界第3位の商業ゲーム会社となる。

米国ワシントン州レドモンド市の地図(Google Map)。マイクロソフト本社とニンテンドー・オブ・アメリカ(任天堂の米国法人)とはすぐ隣、ニンテンドー・オブ・アメリカのすぐ隣にまで、マイクロソフト所有のビルが迫る勢いだ。今回の商業ゲーム巨額買収は、任天堂に徹底対抗する強い誇示なのかもしれない。

※メタバースとは、インターネット上における仮想現実空間のことで、メタバース事業とは、その仮想現実空間を利用した様々なサービスを事業化したものを指す。商業SNSのFacebookはMeta(メタ)に社名変更したが、これは、従来のFacebookがメタバース企業に転身することを目指す意思表明としての社名変更ということで話題となった。

※経営母体(親会社)のソニーグループの本社は日本(東京都港区)だが、商業ゲーム事業子会社であるソニー・インタラクティブ・エンタテイメント(SIE)の本社は、米国カリフォルニア州サンマテオ市にある。

硬派層のオープンソース移行加速は必至

実は20年前、Xboxの発売で商業ゲーム事業本格参入の予兆があったマイクロソフト。Windowsも過去のような華々しいまでの勢いはなくなり、Windows 11もイマイチ振るわない今、Windowsを核とするビジネス・教育向けIT基盤ソリューション事業の終焉を見通した業態転換の狙いもあるのではとみる。以前から日本のお粗末なデジタル化の例として挙げている文部科学省のGIGAスクール構想では、パソコンで使用するOSは、WindowsやChrome OS、macOSといったGAFAMによるものしか想定されておらず、また、これらのOSは商業ゲーム(サービス)との親和性が高いこともあり、自宅などでの課外での目的外利用の問題も、割り当て通信容量の逼迫や悪意のあるプログラムへの感染などのかたちで、各地で表面化しつつある。

Debian系Linuxに該当するオープンソースOSは、市民的自立を指向したOSであることもあり、商業ゲーム等の親和性は低いと考えられている。そのため、目的外利用を強力にブロックすることが求められる教育端末での利用には最適である。しかし、教育委員会や学校のDX担当者のリテラシーの未熟さから、Windowsなどへの依存的なクローズドソース信仰が根強く、「Linuxは難しい」「性能面でLinuxはWindowsに劣る」というような、悪意のあるデマに振り回されていることが、Linuxの教育への導入を阻んでいる。もともとLinuxは、教育のような、草の根的な取り組みが重要な場面での普及を想定して開発されているものであるから、それを教育のデジタル化で導入しないというのはおかしな話なのである。Windowsのマイクロソフトはこの先、教育との対立的概念ともいえるような商業ゲームの会社になることを本社が自ら表明しているわけであるから、教育現場では、Windowsではなく、将来が保障された、商業ゲームの影響が最小となるような市民的なLinuxへの移行を真剣に考えるときがきているといえる。

※GAFAM = Google, Amazon, Facebook(Meta), Apple, Microsoft; グローバル展開の巨大IT企業(プラットフォーマー)のこと。各社の経営者が、世界全体の富の大部分を私的に留保しているなどとして、しばしば反市民社会の象徴として批判される。

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