特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法、以下、PRTR法)を所管する環境省・経済産業省・厚生労働省が、当初は次期PRTR対象物質見直し案に収載することを決定した水溶性高級脂肪酸塩(石けん;新政令番号1-456、1-457に対応する物質)を、同見直し案から外す(収載を見送る)ことを決定したことが、ふなあん市民運動メディアの化学情報調査と環境省への確認取材でわかった。本年1月4日締め切り分の「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行令の一部を改正する政令案」に対する意見公募(パブリックコメント)の結果、4,199件の意見が寄せられ、そのうち、4,149件が個別物質に関する意見、しかも、そのほとんどが、石けんに相当する新政令番号1-456、1-457に対応する物質に関する意見であり、それらのほとんどが、石けんのPRTR対象化に強く反対する意見だった。もちろん、この反対意見のいくつかは、銀鮒の里学校も提出した。このように、今回のPRTR対象物質見直しでは、石けん運動の圧倒的な強さを見せつけ、徹底的な理詰め攻勢で、国側を対象除外に一転せざるを得ない状況に追い込むことができ、事実上の「石けん運動の勝利」といえる結果となった。
PRTR対象除外の決定は当然の結果
この覆し決定が確定した10月15日までは、環境省をはじめとする国側は、頑として石けんの新規対象化をする方針を貫いてきた。今回のどんでん返しは、単に圧倒的多数の論理で起こったわけではない。銀鮒の里学校をはじめとする多くの意見提起者が、論理的に反論の余地を許さない理詰めの意見を出したことによる成果であることが重要である。4,149件の意見の中には、単に「反対」や、「どこかのメーカーのファンだから」というような、いわば感情論的な意見も含まれるが、そのような意見では、国の重い腰は微動だにしないだろう。これまでに、今回意見の提起を行った銀鮒の里学校の発起人(著者)は、ケルセンの農薬登録除外(使用禁止化)など、化学物質管理政策で大きな動きを起こしてきた経緯があるが、この石けんのPRTR対象化問題でも、対象化見送りに追い込むことができた。しかし、あくまでも「見送り」であって、昨日行った環境省担当官との電話対談でも、「石けんにもPRTR登録してもおかしくないようなバイオアッセイデータも存在する」などと、近い将来、PRTR対象化をする可能性も示唆していたため、私たち石けん運動家は気を抜けないことには変わりはない。さらに、畜産などで多用されている陽イオン界面活性剤に関しては、昨日の記事にあるように、当然対象化すべき物質でも対象化漏れの実態が多くあるなど、矛盾した実態もある。化学物質管理政策を正しく推進するにあたり、分子構造データを活用したリスクコミュニケーションの公益的重要性について正しく理解し、理詰めで説明することのできる人を育てることがいかに重要であるかということを示す事例にもなったことをご理解いただきたい。
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