最近、水道水の塩素(カルキ)除去を謳った入浴剤を多く見かけませんか。これらの製品に共通して含まれる成分は、意外な成分でした。
L-グルタミン酸ナトリウム
そう、あの「味の素」でおなじみの成分です。では、味の素でカルキ抜きができるというのは、化学的にあり得ることなのでしょうか。
カルキを除去するには還元剤が必要
カルキの正体は、水に溶存している塩素(Cl2)、実質的には、次亜塩素酸(HClO)とされています。次亜塩素酸も塩素も強い酸化剤ですから、それらを除去するには、酸化作用のない物質に化学変化させる必要があります。このとき、還元生成物は、酸化性も還元性もない塩化物イオンです。
4 HClO + 4e– → 4Cl– + 2 H2O + O2
Cl2 + 2 e– → 2 Cl–
カルキ除去効果のある還元剤の代表例としては、ビタミンC(L-アスコルビン酸)、チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)、亜硫酸カルシウムなどがありますが、L-グルタミン酸ナトリウムには、還元作用はありません。よって、味の素でカルキ除去効果というのは、眉唾であると考えるべきです。カルキ除去を謳う入浴剤「バスロマン」を製造販売するアース製薬(東京都千代田区)に、味の素でカルキ抜きの化学的根拠について説明を求めたことがありますが、なんと、説明を拒否したのです。(化学的根拠に自信があるなら、説明できるはずですよね。(苦笑))その製品に、ほんとうにカルキ抜き効果があるのであれば、何らかの還元剤をコッソリ忍ばせて配合しているかもしれませんね。(実は、表示外の極秘の少量成分を忍ばせるということは、化学業界ではよく行われることなのですよ。)
結論:「味の素でカルキ抜き効果」は眉唾(信憑性は低い)
カルキを速やかに除去したいのであれば、水道水に少量のビタミンCやチオ硫酸ナトリウムを加えるか、蛇口に亜硫酸カルシウムを含むカートリッジを取り付けるとよいでしょう。(そのような蛇口式浄水器はありますが、含有量は少量のことが多いため、実際に効果がどの程度持続するかは疑問があります。チオ硫酸ナトリウムは、観賞魚用にも使われるように、カルキ除去程度の量であれば、鮒などの水生生物にも安全です。)塩素は気体で、沸騰水には溶存できませんので、少量の飲用水であれば、煮沸による揮発除去が確実です。くれぐれも、塩素を除去したいために味の素を添加、なんていうバカな真似はしないでくださいね。
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