グリホサートが残留しやすい理由

小麦や大豆などの輸入穀物へのグリホサートの残留が深刻な問題となっています。先日の記事のように、除草作用と同じ作用機構によって、腸内細菌に悪影響を及ぼすおそれがあるなど、新たな問題提起もなされてきています。地上部が完全に枯死状態になると収穫の作業効率が向上するため、とくに日本向けの穀物には、有機農産物などではないかぎり、収穫前にグリホサート処理が行われるのです。

では、グリホサートとは、どのような化学物質であるか、ご存知でしょうか。

「アミノ酸系だから安全」の欺瞞

(ホスホノメチル)グリシンというシノニムがあるように、グリホサートはアミノ酸系の除草剤です。旧 モンサント(現 バイエル)が開発した、ラウンドアップの商品名で知られていますが、ラウンドアップの商品説明には、「アミノ酸系だから安全」などという意味合いの文言があります。しかし、下の構造式が示すように、メチルホスホン酸部が分子の大部分を占めるため、もはやタンパク質構成アミノ酸とは化学的に縁遠く、似ても似つかない別物といえるような化学物質といえます。もちろん、栄養にもなるタンパク質構成アミノ酸のグリシンには毒性はありませんが、その窒素にホスホノメチル基が結合すると、合成殺虫剤のような有機リン化合物と同じように、非常に強い毒性をもつようになります。グリホサートは、シキミ酸経路の生合成に関わる特定の酵素の活性を阻害することで、殺草作用を示しますが、グリホサートによる活性阻害の対象となる酵素は、多くの微生物も持っていることから、メーカー側が主張する「土壌に落ちると微生物の作用で速やかに無害化」もウソの可能性もあるわけです。したがって、「グリホサートはアミノ酸系だから安全」と言い切る態度は、欺瞞だということになります。

グリホサートは浸透移行性あり

ラウンドアップのセールスポイントの一つに、「高い浸透性」というのがあります。これは、グリホサートの浸透移行性によっています。そして、下記のように対イオン部の変更を経るごとに、浸透移行性能を増しているとされています。対イオンは植物栄養と関係があるものであり、グリホサート塩を植物に肥料成分と錯覚させて取り込ませる働きがより高まっているものと考えられます。さらに、実際の製剤には、浸透移行促進のために、高濃度の合成界面活性剤も配合されています。

第1世代(ラウンドアップ):グリホサートイソプロピルアミン塩
第2世代(ラウンドアップハイロード):グリホサートアンモニウム塩
第3世代(ラウンドアップマックスロード):グリホサートカリウム塩

植物組織に浸透するということは、当然、残留しやすいということになります。禾や鞘に付着したものが種子に到達したり、あるいは、生の茎葉を通じて種子に浸透したりということも考えられます。このように、グリホサートは、擬似的な生体親和性によって、高い浸透性を発揮する除草剤であるということを知っておいてください。

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