「長崎県、外資に切り売りします」県なども後押し
旅行業大手HIS(東京都港区)が、傘下に持つテーマパークであるハウステンボス(長崎県佐世保市)を、香港の投資会社に売却する意向で最終調整を進めていることがわかりました。HISは、他の旅行会社と同様にコロナ禍による業績不振が続き、昨年10月期決算では過去最悪の赤字を計上してきました。その一方で、ハウステンボスは最近の外出旅行制限緩和もあり、来場者は回復傾向にあるといいます。そこで、ハウステンボス株の3分の2を保有している筆頭株主のHISは、ハウステンボスの業績が上向いているうちに売却することで、主幹の旅行業の立て直しを図るとみられています。地元株主の九州電力やJR九州など5社も株式売却の意向であり、また、外資参入が前提のハウステンボスのカジノIR化に長崎県が積極的であることも追い風になることで、ハウステンボスは経営上は事実上の外資化の道を進むことになる見通しとなりました。
持続不可能な超商業化県政でムニシパル・ボイコットの可能性も
SDGs市民社会化の動きに逆行し、長崎県がこのままカジノIR化の動きを進めれば、長崎県産品やふるさと納税のみならず、長崎県への旅行や移住まで忌避するムニシパル・ボイコット(地方自治体レベルでの不買不納税)が進むであろうと、大阪府に配信拠点があるふなあん市民運動メディアは警鐘を鳴らします。
大阪府も決して他人事ではありません。維新府政下で進められるカジノIRは、外資カジノ事業者の相次ぐ撤退やコロナ禍、府民の根強い反対運動、さらには維新府政が自らタネをまいた大阪関西万博(EXPO2025)成功に向けての準備負担や府財政支出圧縮の責任(身を切る政治)が自ら苦しめることになり、難航をきわめており、「もはやカジノIRどころではない」と、事実上の停止状態に追い込まれています。
横浜市のカジノIR構想も、市民の根強い反対運動の煽りを受けて頓挫、さらに、カジノIR反対を公約に掲げる市長が当選・就任したことで、横浜市のカジノIR構想は白紙撤回となった経緯があります。
テーマパークは博打
記者は、岡山県の第三セクターのテーマパークだった倉敷チボリ公園の大失敗を目の当たりにしてきました。倉敷市出身者は、テーマパークの「博打性」を日本一よく知っているといっても過言ではないほどです。
大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)はテーマパークの成功事例だと信じている方も多いようですが、実はそれでさえも、例外ではありません。開園当初、USJは、大阪市の第三セクターならではのノウハウ不足も災いして、事故や不祥事も相次ぎ、業績は低迷、一時は閉園の危機に陥ったこともありました。そこに、P&G出身のカリスママーケッターとして知られる森岡毅氏がユダヤ式マーケティング手法を駆使してテコ入れし、アメリカの祭事企画であるハロウィーン、クリスマスキャンペーンを実施するなどして、業績は奇跡的なV字回復を遂げ、今日では、任天堂の商業ゲームの世界をモチーフにしたパビリオン「スーパー・ニンテンドー・ワールド」を新設するに至っています。このように、USJは、奇しくも環境破壊や生活文化破壊の象徴のひとつであるP&Gの強烈な催眠術的ノウハウであるユダヤ式マーケティング手法で救われたといえるわけです。
千葉県浦安市の東京ディズニーリゾート(TDR)も数少ない成功例といわれますが、誰しもご想像のとおり、アメリカ発祥のディズニーの多角的なキャラクタービジネスと連動して圧倒的な知名度を実現し、商業的なシナジーをもたらし続けてきたことが成功の理由と考えられます。そして、あまりにも大きな事業規模ゆえに、オリエンタルランドという私企業の資産であるにもかかわらず、浦安市の成人式の会場として利用されるなど、実質的に準公共施設化しているほどになっています。不衛生な害獣として敬遠されるネズミを「ミッキーマウス」というメインキャラクターに仕立て上げる点は、まさに、ディズニーのマーケティングの力によるものだともいえます。今から20年以上前でしょうか、記者が、こどもたちで混雑したJR京葉線に乗車したときのことです。東京ディズニーランド前の舞浜駅に停車すると、当然のように、ほとんどのこどもたちが降りていきます。そして、電車のすべすべの手すりは、こどもたちの手のぬくもりで熱々になり、こどもたちの手のあぶらがこってりついた手すりは、こどもたちの手の熱で、こどもたちのばばっちいにおいが漂っていたことをよく覚えています。この頃は、今日のように、柔軟剤の臭いがきついことはなかったことも覚えています。このように、都会のこどもでも、根は元気であり、その元気が、里山のような場ではじけていたらと思うと、ほんとうに残念に思い、惜しまれるものです。
長崎県佐世保市のハウステンボスも、日本のテーマパークのなかでは、数少ない成功事例として捉えられ、前身の「長崎オランダ村」時代も含めると、開園30周年を迎えるまでになっていますが、実は、何度となく閉園の危機に陥ってきました。九州本土のほぼ西端という、地理的隔絶性という不利な点を抱えながらも、ハウステンボスがかろうじて生き残っている理由としては、面積規模が日本一であることや、旅行業最大手のHISや九州の交通・エネルギーインフラ系有力企業が主要株主に連ねるなどの、複数の圧倒的優位性が重なった結果であると考えられます。しかし、国内の有力株主が離れ、香港投資企業の手に渡った後にどうなるかは不透明です。巨大テーマパーク特有の博打さながらの経営の難しさや外資参入が、カジノIR推進の必要性のレバレッジとして働き、長崎県が目指しているようなハウステンボス自体のカジノIR化の議論が加速する懸念もあります。これは、カジノIR推進論が少しでもあるうえ、USJ・夢洲(大阪関西万博会場)や和歌山マリーナシティといった同様の候補地を有する大阪府・大阪市や和歌山県などでのカジノIR推進にも影響を与える可能性もあるとみられ、当事者地域は注視せざるを得ない不穏な状況になりつつあります。
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