兵庫県姫路市の採卵養鶏場で、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)に感染の疑いがある事例が発生した問題に関して、この養鶏場の鶏について遺伝子検査を行ったところ、HPAI陽性が確認されました。これにより、兵庫県は、高病原性鳥インフルエンザに関する対策本部会議を開催すると同時に、この養鶏場の鶏の全数にあたる約15万5,000羽の殺処分に着手しました。秋田県横手市、鹿児島県出水市の2例に続き、全国では今季4例目で最大規模、近畿では初の事例となります。
むしろ発生しなかったのが奇跡、問題意識を感じたら無理に食べない選択を
異常な超過密状態のバタリーケージ飼養は鶏に過大なストレスを与え、免疫力を極限まで低下させます。感染の疑いの報告の際に、「死亡数がいつもより増えた」との報告があったということですが、鶏の本来の寿命は10年以上といわれているのに対して、バタリーケージ養鶏の鶏は生後550日齢未満、生後1年半に満たないとされていますので、健康であるかぎり、死亡は考えられない若さです。この報告から、ケージ養鶏場では、このような若い鶏でも、HPAIの感染がなくても、過度のストレスによって、定常的にある程度の不審死個体があるということがわかります。
鳥インフルエンザに関するマスメディアの報道や国・自治体のアナウンスは鵜呑みにせず、一つひとつの事象について批判的に捉えるよう、注意が必要です。もはや、小動物の侵入対策をしても、消毒を徹底しても、通常ならば免疫力で感染に至らないくらいのごく微量のウイルスが侵入するだけでも感染爆発が起きる非常に過敏な状態にあります。このような状況にあっては、ケージ養鶏などの工業的畜産をやめないかぎり、むしろHPAIが発生しないことのほうが奇跡であり、「明日は我が身」だと認識すべきです。鶏卵は完全栄養食などともいわれますが、摂取必須の食材ではありません。風評被害を恐れる論調に惑わされることなく、少しでも社会不安を感じたら、無理をせず、思いきって鶏卵を食べないという選択をすることも大切です。実際にHPAI禍が頻発している、日本の採卵養鶏の9割以上を占めるバタリーケージ養鶏は、EUでは、既に9年前から禁止されています。
- HPAIウイルスがあるだけでは、HPAIへの感染は成立しません。
- 但し、宿主の免疫力が極端に低下している状態では、通常は感染(発病)しない程度のごく微量(もしくは弱毒性)のウイルスでも感染(発病)が成立する可能性があります。このような感染を日和見感染といいます。
- ウイルスはウイルス外部からの何らかの刺激によって、頻繁に変異しています。低病原性のウイルスが、宿主の体内で高病原性のウイルスに変異する可能性も否定できません。
- 渡り鳥などの野鳥は必ず飛来しますので、これらによるHPAIウイルスの持ち込みを完全に阻止することは不可能です。例えば、HPAIウイルスを含む可能性がある野鳥の糞などが風で飛ばされる可能性も否定できません。消毒による排除よりも、免疫力を高めて向き合う姿勢のほうがはるかに大切です。
※この記事は、鶏卵の摂取の健康リスクについて言及するものではありません。社会倫理を問うものであって、実際に鶏卵や鶏肉を摂取するかどうかは、各主体の判断に委ねます。高病原性鳥インフルエンザの問題に関する正しい理解と判断のために、下記のURLの特集ページもお読みください。
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