ヒラメ寄生虫による食中毒相次ぐ、香川と愛知で

ヒラメの生食が原因とみられる食中毒が相次いで発生しています。

香川県観音寺市では、27日に市内の仕出し弁当業者、宇賀幸が調製した仕出し弁当を食べた17人のうち9人が食中毒症状を訴えました。この仕出し弁当には、ヒラメの刺身が含まれており、所管する香川県西讃保健所は、その刺身から、食中毒症状を引き起こすおそれがある粘液胞子虫類(寄生虫)の一種である、Kudoa septempunctata(クドア・セプテンプンクタータ)を検出したということです。食中毒の症状は軽症で、30日現在では、全員回復していたということです。

名古屋市の名鉄百貨店本店内にある海鮮料理店「旬魚 左阿彌」が25日に提供した魚の刺身を食べた客も、同様の食中毒を訴えていたことがわかりました。原因の病原体は同じくK. septempunctataだったということです。農林水産省や各地域の保健所の情報によりますと、K. septempunctataはヒラメに寄生している場合が多いとされており、ヒラメの刺身が原因食材のことが多いといいます。

K. septempunctata食中毒予防対策は

K. septempunctataは一定条件よりも強い冷凍処理で容易に殺滅できることから、鶏肉の生食を原因とするカンピロバクター食中毒とは異なり、ヒラメの生食については、直ちに禁止にすべきとはいえません。K. septempunctataは、低温では-20℃以下で4時間以上の強凍結、高温では75℃(食材の最低温度となる中心部)で5分間以上の加熱で病原性を失うとされています。

家庭用のスリースター級の冷凍庫では、-18℃以下の凍結性能が保証されていますが、この条件では、確実な殺滅は期待すべきではないでしょう。例えば、冷凍履歴のないヒラメを購入し、自宅で捌いて刺身にするというのは、K. septempunctataによる食中毒の危険を伴う場合がありますので、避けるべきです。チルドも冷凍の一歩手前の温度を維持することで凍結させない冷蔵技術ですので、K. septempunctata食中毒の予防にはなりません。

一方で、漁船に搭載の急速冷凍装置や業務用冷凍庫(設備)は、店舗用の小型機種でも-20℃以下に設定できたり、食品物流用の高性能のものでは、-50℃以下や-70℃以下に設定可能な機種(設備)もあります。このような、業務用で使用される強い冷凍条件を4時間以上経た履歴があるヒラメでは、K. septempunctataは確実に死滅していると考えられますので、その点では安全にヒラメの刺身を提供することができます。このことから、ヒラメの刺身(生食)を提供したり販売したりする事業者には、客に対して、ヒラメの冷凍履歴について説明できることが、当然の責任として求められます。また、魚の寄生虫としてよく知られているアニサキスとは異なり、K. septempunctataは10μm程度の大きさのため、目視確認による除去は不可能です。市場などで購入したヒラメ鮮魚の素人調理は諦めるべきです。どうしてもヒラメの刺身を食べたいという方は、高性能の冷凍設備を保有する信頼のおける鮮魚店や料理店で、必ず殺滅条件を満たす冷凍処理が行われているかどうかを確認するようにしましょう。(チルドではダメです。)

こちらは加熱も冷凍も無効!化学性のヒスタミン食中毒にも要注意!

さらに、魚を原因食材とする食中毒では、細菌によるL-ヒスチジンの脱炭酸で生成するヒスタミンを原因とする化学性食中毒も多く発生しています。この場合は、冷凍でも加熱でも変化しないヒスタミンを原因とする食中毒のため、少しだけ口に含んだときに、ヒスタミンによるとされる異味(ピリピリした刺激感など)が感じられた食材は、廃棄処分するしかありません。ヒスタミンは生魚(とくに赤身魚)に付着する細菌(それ自体が病原性のないものを含む)による作用で発生するため、調理までの保管はできるだけ低温を維持し、室温で放置しないことが重要です。(鮮魚店で買い求めたら、すぐに調理するか、冷蔵庫か冷凍庫に入れるべきです。常温で赤身魚切身を陳列するような鮮魚店での購入は避けましょう。)ヒスタミンはアレルゲンとしてあまりにも有名な物質であり、突発性の蕁麻疹などの症状をあらわします。ヒスタミン食中毒が疑われる場合は、抗ヒスタミン剤の内服で一気に治まる場合がありますが、症状がひどい場合は、直ちに皮膚科専門医などを受診しましょう。

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