日教組タブレット電磁波問題訴求が物議

日本教職員組合(日教組(JTU))の教育研究全国集会の保健・体育分科会において、参加の福岡県の養護教諭が、GIGAスクール政策で全国の学校に導入されたタブレット端末が電磁波過敏症を発症するおそれがあるとのリポートを発表したことについて、27日付で産経新聞が報道し、物議を醸しています。産経新聞では、日本最大の教職員労働組合である日教組で問題提起されたことから、「学校教育におけるデジタル化の推進に支障が生じないか懸念される」と報じています。

現時点で電磁波過敏症のエビデンスは知られていない

電磁波は波のエネルギーであり、周波数帯によって、それぞれ異なる分子レベルでの物理(化学)的作用を起こしうることから、ある一定レベル以上の電磁波曝露は何らかの健康影響を及ぼすおそれがあると考えられます。例えば、電子レンジのマイクロ波は。携帯電話の4G/5G周波数帯とほぼ同じ周波数帯の2.4GHz前後であり、水などの極性分子の双極子モーメントに作用し、500W前後の出力では、極性分子を激しく振動させることで、分子レベルでの摩擦熱を生じます。このような電子レンジの原理は、化学における合成工程にも応用されることがあります。このような作用が知られていることからも、電磁波が何らかの健康影響を及ぼすかもしれないとして、予防の原則に照らして避けるということ自体は正しいといえます。

しかし、だからといって。「教育利用のタブレットが電磁波過敏症の原因だ」とするのは早計だといえます。世界保健機関(WHO)では、原因不明の何らかの過敏症状の実態があることは認めながらも、その原因が電磁波であると断定する科学的根拠はないとしており、そのような医学的診断も医学的問題も公式には認知していない(不明)としています。電磁波発生デバイスの安全を監理する日本の総務省も、WHOの考えに沿う対応をとっており、少なくとも「日本国内で合法的に使用されているパソコンやタブレットなどのWi-Fi・モバイル通信端末の使用が原因で健康に悪影響を及ぼすおそれはない」としています。

実際に記者も、業務上やむを得ない理由から、NTTドコモの5GスマートフォンやBluetoothを利用していますが、現在のところ、このような電磁波発生デバイスが原因と思われるものも含めて、健康上の異変は一切起きていません。

過敏症の原因は必ずしも一つではない、心因の関与も

過敏症状にかぎっていえば、化学物質のような化学的要因も、電磁波(可視光も含む)のような物理的要因もなくても起こり得ます。例えば、過度に緊張する状況で下痢や便秘、頭痛などが起こるといった、純粋に心理的ストレスが原因で起こる心因性の過敏症もよく知られています。化学物質過敏症でさえも、多くは、漠然と化学物質が不安だという心因が合併して強いネガティブ思考のループが生じ、発症に至っているともみられます。「電磁波過敏症」と自認する人の場合も、化学物質過敏症と合併して発症しているとみられることが多くあり、心因にその多くを依っているとみられることが多いものです。過敏症を自覚する患者は、心理的に(化学物質や電磁波に対する)ネガティブな思い込みが強いことが多く、このことが、過敏症の診断を困難にし、保健政策として取り組まれにくくしている原因と考えられています。

前の記事の化学物質過敏症の場合でも取り上げてきたように、過敏症を自覚するようになってからでは手遅れのことが多いものです。健康なうちに、正しい認識を持つことが何より重要であり、安心できるものは率直に安心し、恐れるべきものを賢く恐れるという知的冷静な姿勢を各々が主体的に確立することが求められます。少なくともタブレットやパソコンの電磁波が健康に与える影響の問題にかぎっていうなら、安心できると断言してよく、その一方で、コロナ禍や災害などの社会的困難の中でも、実際にタブレットやパソコンを利用しなければ享受できなかったような教育上のメリットも数多く見出されています。タブレットやパソコンの教育利用のメリットとデメリットとを天秤にかけ、メリットを最大限に引き出しつつ、デメリットに傾けないような活用のあり方を討論することに集中すべきだといえます。ですから、日教組のリポートでも訴求された、電磁波測定機器の購入を急ぐことの必要性もありません。それよりもなにより、日本の未来の運命を左右するともいえる日本の教職員は、もっと賢くなる必要があります。

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