岐阜県は19日、岐阜県飛騨地方のブランド牛飛騨牛のEU圏輸出向けモニタリング検査を実施したところ、一部の農場からの検体から、EUの基準値を超える動物用医薬品成分、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DMAC)が検出されたと発表しました。このモニタリング検査は法的義務によらない自主検査ですが、牛肉の生産・流通団体が輸出業者に対して自主的に実施することを義務付けているものです。EU圏においては、畜肉の塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DMAC)の残留基準値(MRLs=Minimum Residue Levels)は、0.1ppm(類縁化合物の塩化ベンザルコニウム(BAC)と同値)に設定されていますが、問題の飛騨牛からは、それを上回る0.14ppmのDMACが検出されたということです。
【参考文献】
EU圏における四級アンモニウム塩系殺生物剤(BAC, DMAC)の食品残留基準値(MRLs)の見直しについて(EU官報;2014年)(英語)
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32014R1119&from=EN
食品安全情報(化学物質)No. 12/ 2023(2023. 06. 07)(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202312c.pdf
上記文献の暫定的MRLsについて、過去の曝露データをもとに、同化学物質についての設定値の見直しが試みられたが、植物性食品で引き下げ(0.05ppm)となったほかは、現状維持(0.1ppm)が妥当とされた。
岐阜県は、国内での飛騨牛の流通について、問題の検体が提供された農場は限定される(飛騨牛を生産するすべての農場ではない)とし、当該の農場に対しては、消毒薬の使用に関するチェックシートの生産者団体(飛騨ミート農業協同組合連合会)への提出を求め、消毒薬の適正使用が認められないかぎり、牛の屠畜搬入を認めないという処分を下したということです。今回の違反問題はEU圏のMRLsに関するものですが、飛騨牛のEU圏以外への輸出に対しても、(EUが拒絶する汚染食品を押し付けるなという反発を回避する)国際関係への配慮の観点から、当面の間自粛するということです。輸出の自粛の対象は、飛騨牛を生産する全農場、輸出の自粛の期間は未定ということです。なお、国内市場への流通については、問題の検体が提出された農場のみが出荷停止となっており、他の農場からの出荷には影響はないとしています。飛騨牛の生産農場は、岐阜県内に134農場があるということです。
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