利他文化と防災

2011.3.11 東日本大震災からきょうで12年になります。多くの人の温かい支援で復興を遂げた一方で、東京電力福島第一原子力発電所の放射能汚染事故を理由にした福島県やその周辺地域の風評被害も大きな社会問題となり、多くの反省点も残しました。その風評被害は、日本国内の市民運動にも大きく関係していました。例えば、放射能汚染を過度に恐れるあまり、実質的に「福島県産不買運動」になったということがあります。もちろん、放射能汚染がないかどうかの検査を行ってから流通させるべきだというのは、いうまでもないことです。しかし、放射能汚染検査を細やかに行う生産者側の努力にもかかわらず、「福島県産はいらない」という論調が強まり、奇しくも、そのような論調は、食の安全や環境に対する意識が高いとされる市民運動家の層で多く起こったというのです。そのような歪曲したニーズに応えるべく、起こった社会現象が、産直野菜や自然食品宅配で「福島県産や東日本産は扱いません」という宣言だったのです。このような風潮は、日本の市民運動家(高意識者層)の多くが利己的だということを如実に表すことになったのです。

一方、ドイツなどの環境先進国ではどうでしょうか。例えば、大阪・東京から札幌のような遠距離の移動手段としては、日本では航空機が第一選択肢に上がるかと思います。しかし、ドイツではそうではないそうです。ドイツ国民の間では、航空機が大量の温室効果ガスを発生するとして、航空機での移動は「飛び恥だ」という価値観が一般的になっているといい、このことは、最近、NHKの番組でも紹介されていたほどです。ドイツ国民は、運賃でも所要時間でも航空機に比べて劣位にあるとされる鉄道(寝台特急)を選ぶそうです。その理由は、地球環境を想う気持ちが、運賃差や所要時間差を超えるからなのだそうです。「飛び恥」になるくらいなら、高い運賃を払い、時間がかかってでも、より環境に優しい選択肢を選ぶというのが、ドイツ国民の間では常識だといいます。このドイツ国民の価値観に共感でき、同じように行動に表せる人が、日本国民にはどれだけいるでしょうか。少なくとも、記者はドイツ国民の価値観に近く、日本国民の利己的思考のほうが理解に苦しむと思いますが、日本ではごく少数にすぎないのではないでしょうか。利他精神を高める教育を受け、全国民的に利他精神が常識的に浸透したからこそ、ドイツは、環境先進国や市民運動先進国になれたわけです。

日頃から他者を思う市民運動に関わっていれば、いざというときにもすぐに役立ちます。FMG報道局がある大阪・豊中も、高台にあるとはいえども、いつ襲来してもおかしくないともいわれる南海トラフ大地震の見えぬ脅威といつも隣り合わせです。現在、能勢町で造成作業に取り組んでいるぎんぶなのうえんも、なにより、こどもたちの今日(あそびば・まなびの場)と将来(農村社会起業)を思って造成に取り組んでいます。「他者を思う人を増やし、他者を思う人の結束を強める場をつくり、各々の努力が正しく報われる世の中を築きたい。」そういう思いが、銀鮒の里の活動の原点です。そして、そのような思いは、いざというときのための防災にもなにより力を発揮すると確信しています。他者を思う利他精神を磨く防災について、あなたにできることはなにか、考えてみませんか。

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