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玄人好みの植物シンニンギア(園芸中〜上級者・プロフェッショナル向け)
園芸先進国では、ジェスネリアード(イワタバコ科植物)は、洋蘭や山野草と並んで、園芸の最終到達点といわれるほど高尚な園芸ジャンルとして人気があり、そのなかでもとくに注目されているのが、シンニンギア園芸です。シンニンギアはブラジル南東部を中心とし、一部の種はアルゼンチンやボリビアにも分布がみられる、南米大陸固有のイワタバコ科の一大属です。意外ですが、シンニンギア属は亜熱帯性気候から温帯気候(日本でいえば沖縄から九州南部くらいの気候)の地域に多く分布している関係から、かなりの耐寒性があり、豊中あたりまでの関西や首都圏の平野部(USDA耐寒性ゾーン9a〜9b)くらいであれば、凍らない軒下でも越冬できる種が多く、最強のものでは、能勢(USDA耐寒性ゾーン8b)での露地植えがぎりぎりで可能なものもあります。(耐寒性が弱い熱帯性のものでも、最低夜間温度が2〜3℃まで落ち込む室内でも越冬休眠が可能です。)そのようなシンニンギアですが、この時期が芽吹きの時期で、植え替え(植え付け)の適期になります。シンニンギアといっても、さまざまな形態のものがありますので、最良の生育結果が得られる形態別の植え方についてご説明します。
塊茎(チューバー)型
シンニンギアで最も多い形態が、扁平な円形の塊茎(チューバー;球根)を形成する塊茎型です。この塊茎は、土に埋まった部分は発根が促され、その部分が多いほど成長が良くなる傾向があります。最近は、多肉植物(コーデックス)ブームで、塊茎の露出を強調したいために浅植えにされる方が多いということを聞きますが、生育優先の園芸のプロとしては、塊茎を可能なかぎり埋めることをおすすめします。但し、埋めるとはいっても、塊茎頂部の芽のところに土の表面がくるくらいの深さが最良となります。開花に至らない幼苗の場合は、塊茎の頂部から5mmから1cmの深さになるくらいに覆土したほうが、株が安定し(ぐらつきにくくなり)、生長がよくなります。但し、塊茎が確認できないくらいに深植えしすぎると、管理がしにくくなり、最悪の場合は、塊茎が腐る原因になることもありますので避けます。催芽がすぐに確認できるよう、塊茎のぼぼ全体が土に埋まりつつ、いつでも頂部が見えるくらいの深さ(0±1mm程度)が最良となります。
根茎(ライゾーム)型
シンニンギアでは稀少な形態ですが、リッチーなどがこれにあたります。太い紐状の根茎は、いつでも芽出しできるように、できるだけ浅く這うように張り巡らせる習性がありますので、潅水時に露出しない程度の浅植えにします。必ず先端の催芽部が上を向くようにして植えます。(逆向きに植えると、生育不良の原因となります。)深さでいえば、1〜2cm程度になります。
【参考】この植え方は、同じ根茎型ジェスネリアード(アキメネス、コーレリア、ユーコドニアなど)にも適用できます。
木立型
シンニンギアの中には、常在型の幹が発達し、塊茎がほぼ退化したものや、完全に退化したものもあります。このような木立性のものは、幹表面の至るところに発根点があり、土に埋まっていることを感知することで、発根が促され、その分だけ、成長が安定します。そのため、他の木立性(ジェスネリアード)と同様に、発根点が少しでも多く埋まるよう、できるだけ深く植えます。また、深く植えることで、ぐらつき防止にもなり、生長が安定しやすくなります。とはいっても、明らかに新芽や葉が埋没してしまうくらいの極端な深植えは禁物です。最下部にある新芽の基部が少し土に埋まるくらいがよいでしょう。
シンニンギアはきわめて高いCECを要求する植物
他のジェスネリアードと同様に、シンニンギアはきわめて高いCEC(陽イオン交換容量)を要求する植物で、土はかなり選びます。CECの高い用土としては、ピートモスやバーミキュライトがあります。その一方で、シンニンギアは、日差しの強い岩場の礫地に自生している場合が多いため、砂礫質が多く含まれる土を好む傾向があります。このことを考えると、ピートモス・バーミキュライト・鹿沼土・パーライト・桐生砂をそれぞれ等容量含む土が好ましい土の配合例となります。さらにCECを高め、塩類障害や連作障害を予防するために、この配合の土に、ゼオライトを1Lあたり15g程度、酸度調整とカルシウム・マグネシウム補給のために、苦土石灰を用土1Lあたり1〜2g程度混合します。(さらに、元肥として、ようりんを用土1Lあたり1〜2g程度混合しておくと、土壌のEC(電気伝導度)を高めることなく、リン酸やマグネシウム、ケイ酸、各種微量元素を、成長にあわせて自動的に補給してくれるので、なお望ましいでしょう。)肥料やけ(根部の障害)の原因となりますので、苦土石灰とようりん以外の肥料の元肥の使用は避けます。昨年の当方の栽培試験では、潅水する水に硫酸マグネシウムを硬度500くらいになるように加用すると、環境ストレスに強い強健な株に育つことを確認しています。マグネシウムを意識的に(低濃度で回数多く)与えることも、好ましい結果を得るポイントになると考えられます。(日本の水は世界最低レベルの硬度(軟水)のため、マグネシウム欠乏を起こしやすいというのが、とくに海外産山野草の栽培の意外な盲点となっています。ブラジルの水質も、少なくとも日本よりは高硬度と考えられますので、潅水用水の硬度補正は原産地の環境に近づけることにもなると考えられます。)
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