肉を食べて死の危険も!スーパー食中毒の恐怖

鶏肉が原因食材のカンピロバクター食中毒を発症、病院で合成抗菌剤を処方されるも、効果なく…死も覚悟…

これは、決して大袈裟なことでも、煽るわけでもありません。いつ、現実になってもおかしくない、身近な日常生活に迫り寄る、新型コロナ(SARS-CoV-2またはCOVID-19)よりもはるかに恐ろしい衛生上の脅威なのです。

ニューキノロン系合成抗菌剤多剤抵抗性細菌の脅威、実は国レベルで警戒も

多剤抵抗性細菌や薬剤耐性(AntiMicrobial Resistance; AMR) という言葉を、一度は耳にしたことはあると思います。しかし、多くの方は、新型コロナウイルス禍のことで頭がいっぱいで、思考が回らないと言い訳をするのではないでしょうか。まさにそこが、日本の公衆衛生の盲点といえるのではないでしょうか。

ニューキノロン系合成抗菌剤の構造式をみれば、なぜ多剤耐性菌の問題が起こるのか、容易に推測・理解できるはずだと、化学物質リスクコミュニケーションの専門家の立場から訴えたいのです。まずは、何も疑わずに、下の構造式を、「図形」としてみてください。

エンロフロキサシン
オフロキサシン
ノルフロキサシン
  • どこが違いますか?
  • どこが共通していますか?

もうおわかりでしょう。直感的にみても、違いよりも、共通点の方に真っ先に目が行くと思います。それに関しては、その直感を信じるのが、結論としては正解です。その共通点にこそ、薬剤の交差抵抗性の「鍵」があるからです。

交差抵抗性とは、分子構造が酷似した他の類縁物質にまで、薬剤抵抗性が発達することをいいます。交差抵抗性は、特定の生物種を標的とする抗(殺)生物剤であれば、人用の医薬品でも動物用医薬品でも農薬でも、用途の違いをこえて性能上の問題となる普遍的事象です。実は、これらの構造式、肉用鶏の飲み水に混入して投与される、ニューキノロン系のなかでも、フルオロキノロン系といわれる構造類型の合成抗菌剤であって、もちろん、日本国内で動物用医薬品として使用が認可された成分です。さらに、これらの成分のうち、ノルフロキサシンとオフロキサシンは、人用の医療用医薬品成分としても使用されることがあり、すなわち、細菌性食中毒などの細菌感染症の治療用として、医院で処方される可能性もあるというわけです。

医療用医薬品成分情報(ノルフロキサシン)

医療用医薬品 : ノルフロキサシン (商品詳細情報)

医療用医薬品成分情報(オフロキサシン)

医療用医薬品 : オフロキサシン (オフロキサシン錠100mg「ツルハラ」)

エンロフロキサシンは、動物用医薬品のみですが、人間用にも使われるノルフロキサシンと比べると、エンロフロキサシンはピペラジン窒素の水素がエチル基に、キノロン環上窒素のエチル基がシクロプロピル基になっているだけで、分子構造が非常によく似ていることがわかります。実はこのエンロフロキサシン、畜産のなかでもブロイラー(食肉)養鶏でとくに多く使用されているフルオロキノロン系抗菌剤とされています。人用で使用されていない成分であっても、この交差抵抗性が知らず知らずのうちに発達して、人用の成分も効果が薄くなったり、全く効かなくなったりするということもあり得るというわけなのです。共通の成分(ノルフロキサシン・オフロキサシン)に関しては、なおさらです。

AMR問題に関しては、国レベルでも、対策が行われています。厚生労働省委託事業の国立研究開発法人国立国際医療研究センター 病院AMR臨床リファレンスセンターの7月7日のプレスリリースによると、DALY (ダリ;障害調整生命年)という社会的疾病負荷指標による日本のMRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)による社会的疾病負荷がヨーロッパの3.6倍と、日本国内における薬剤耐性菌の問題がきわめて深刻であることを挙げたうえで、薬剤耐性大腸菌による菌血症も年々増加傾向にあることを指摘しています。DALYとは、疾病に起因して損なった、健康的に生活できる年数を指す障害生存年数(Years Lived with Disability ;YLD)と、疾病に起因した早死にで失った損失生存年数(Years of Life Lost; YLL)の和(DALY = YLD + YLL)と定義されています。

かしこく治して、明日につなぐ~抗菌薬を上手に使って薬剤耐性(AMR)対策~

意外と知られていませんが、大腸菌は元来、人の腸内細菌にはほとんど存在しない非優占菌種であり、大腸菌に起因する健康上の異常の原因のほとんどは、食事などの外的要因です。日本国内における畜産において、フルオロキノロン系合成抗菌剤は多く使用されているとされることや、大腸菌薬剤耐性大腸菌のなかでも、とくにフルオロキノロン系合成抗菌剤に耐性をもつ大腸菌がとくに問題視されていることからも、薬剤耐性大腸菌に起因するトータルリスクに占める畜産物(牛・豚・鶏)摂取に起因するリスクシェアは無視できないと考えられます。

真の恐るべき脅威は、あなたの知らないところにある

日本人の悪いところの一つに、「自分の知らない(思い込みの範疇外の)ことはリスクヘッジしない」ということがあります。病原性大腸菌O-157やCOVID-19、こどものお手々の雑菌には過度に神経質になるが、合成洗剤の生乾き菌(モラクセラ、黒かび等)は仕方がないとあきらめ、食肉の(E.coli O-157以外の)スーパー大腸菌やスーパーカンピロバクター(ニューキノロン系合成抗菌剤・抗生物質などの多剤耐性菌)は知らないからと気にしないとは、なんとも滑稽な話です。

これは、厚生労働省が明かす実際にあった話です。あるイベントで、「鮮度には絶対の自信があるからこそ実現できる生鶏ささみの握り寿司」などという触れ込みで、来場客に生鶏ささみの握り寿司を提供したところ、なんと500人を超えるカンピロバクター集団食中毒を発生させることになったといいます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126281.html#q6

そのカンピロバクターが、ニューキノロン系抗菌剤などが効かないスーパーカンピロバクターだとしたら…死者も出ていたかもしれないと考えると、身震いせずにはいられません。ほぼすべての生鶏肉がカンピロバクターに汚染されていたとするデータもあるほどです。生の牛レバーと同様に、飲食店や小売店(食肉店・食品スーパーの食肉売り場)などでの生の鶏肉(刺身・たたき・ユッケ等)の提供も、食品衛生法で直ちに禁止すべきです。

ふなあん市民運動メディアの発信地を所管する豊中市保健所からは、当メディアからの質問に対して、「生鶏肉の(飲食店等での)提供は、食品衛生法では禁止はされてはいないものの、それを原因食材とするカンピロバクター食中毒は問題視しており、国等に規制強化を要望しながら、飲食店等に対して、「できるだけ生の鶏肉は提供しないように」と、衛生指導を含めた要請を行っています」と、法律の範囲内で可能な最大限の努力はしているとの回答をいただきました。さらに、薬剤耐性菌対策に関しては、「牛肉・豚肉に関しては、薬剤耐性菌検査を今年度の年間計画で行うことにしていいますが、鶏肉は今年度は対象外となっています」との回答がありました。そこで、ふなあん市民運動メディアからは、3年前の厚生労働省による国産鶏肉の半数以上から薬剤耐性菌が検出された実例を挙げたうえで、「(牛や豚と比べて)個体あたりの経済的価値が低くみられ、大量飼育で(法令違反状態が発生しても発覚しにくいため)個体ごとの管理がいい加減にされがちな養鶏こそ、合成抗菌剤の乱用がより問題化しやすい」として、今後は鶏肉も汚染実態の把握を行うよう、政策提言を行いました。

一方で、動物性の食品を一切食べないヴィーガン(ビーガン)については、食中毒の原因食材のほとんどが動物性食品であることからも、食品衛生上も現実的な取り組みとして見直されるべきといえます。さらに、植物性食品主体の食習慣が腸内細菌叢を健全化して免疫力を高め、食中毒やウイルス等への感染リスクを根本からケアすることにもつながるのです。このようなことが世間(商業メディア)でなかなかクローズアップされないのも、食肉業界やジャンクフード業界、製薬業界などの経済的圧力に忖度しているがためなのかもしれません。

鶏のたたき(刺身)は死の晩餐、死を覚悟して食せ

できることなら、Go Vegan(完全植物性食実践者を目指せ)

専門家として、新型コロナや東京2020のカラ騒ぎが後押しして思考停止に陥った発展途上国ニッポン国民に、声を大にして言いたいです。

このように、ふなあん市民運動メディアは、化学・サステナビリティの専門家・市民運動家だからこそ実現できる質の高い情報を、鋭い切り口で皆様に伝えることを通じて、あなたの身近なセーフネットとしてお役に立ちたいと願っております。この記事が役に立った、目から鱗で意識改革になった、という方は、今すぐ、ふなあん市民運動メディアの購読(フォロー)手続といいねをお願いします。

コメント

  1. […] 薬剤耐性菌の問題の詳細については、こちらの8月17日付の記事もお読みください。 […]

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