種を守るとはどういうことか

種(しゅ)を守るとはどういうことでしょうか。もし、種の管理を曖昧にした場合、どのような問題が想定されるでしょうか。

種の認識

種とは、一種として認識される遺伝子型の一つひとつを指すものであって、一種として特定されたものには、品種名が与えられます。

例えば、Carassius auratusは、ギンブナを含む鮒の一群を指し、変異選抜・交配種のキンギョもこれに入るため、Carassius auratusだけでは、曖昧さを含んでいます。そこで、ギンブナの場合は、Carassius auratus langsdorfiiというように、種名(auratus)の下階層に、ギンブナという種を特定する名称(langsdorfii)をつけることにより、曖昧さを排除して識別されるのです。

植物の場合も同様の識別が行われ、ギンブナのlangsdorfiiに相当する部分は変種といい、var.を冠して表示されます。例えば、ラン科のMiltonia spectabilisは、桃色の花が咲きますが、同一種の中に、白花の種と紫色花の種もあります。これらは、spectabilisの変種として、それぞれ、var. alba、var. morelianaと識別されます。さらに、桃色花のspectabilisの中にも、それぞれの変種の中にも、株の大小や花の大小の違い、花の形や色の違いなどで、明らかに別の遺伝子型として識別できるかぎり、その遺伝子型ごとに品種名がつけられる場合があります。

このように、外見の違いとして現れることで、一つの識別可能な遺伝子型として認められたものには、それぞれに品種名が付与されます。品種名が付与されているかぎり、その品種名を曖昧にせず一つひとつを代々守り継ぐことが、種を守るということです。

種を曖昧にすることで想定されるリスク

種を曖昧にした場合には、復元不能な遺伝子汚染に気づかず、種を事実上消失させてしまうおそれがあります。とくに、近年では遺伝子組み換えやゲノム編集の品種も現実のものとなっており、これらの品種の遺伝情報が紛れ込むと、遺伝子組み換えの種の遺伝子が、非遺伝子組み換えの種と交雑し、取り返しのつかないことにもなるのです。また、特定の形質を持った種の消失に気づかず、種を失っていくということも考えられます。一品種として認識されたものは、札落ちをさせず、徹底的に守り抜く管理意識が重要なのです。

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