忘れるのは愚か者!夏の里山にはこれだけは必携せよ!【能勢・ぎんぶなのうえん直伝】

夏の里山、都会のレジャーランド感覚で行くと、ひどい目に遭います。命の保証もないかもしれません。

海の日を含む三連休のまっただ中、その後には、小中学校の夏休みが控えています。決して脅すわけではありません。夏の里山に無防備で行き、救急搬送されたり、最悪の場合は命を落とすような事故が毎年あります。酷暑にマダニ、毒虫によって誘発される頑固な蕁麻疹など、新たに問題視されはじめた自然の脅威もあります。自然の脅威と闘いつつも、自然との調和を探求し続ける能勢・ぎんぶなのうえんとして、あなた自身や家族を守るために、これだけは言っておきたいと思います。以下に示すものは、夏の里山では必ず装備(携行)してください。さもなければ、冗談抜きでひどい目に遭います。忘れるのは都会かぶれの愚か者だと認識すべきです。

長袖・長ズボン・手袋着用!肌の露出は最小限に

肌の露出は最小限に。これはもはや常識です。里山に入るまで、里山から帰りの移動中は半袖のような肌が露出する服装でも構わない場合がありますが、里山で活動する直前には必ず長袖・長ズボン・手袋の装備に着替えてください。ヤブ蚊ならまだまし、埃のように小さいブト(ブヨ・ブユ)を侮るなかれ!ブトに一度刺されるだけでも激しい炎症が出て、そのアレルゲンが引き金になることで、思わぬところに突発的に蕁麻疹(過剰な免疫反応)が1ヶ月くらい(場合によってはそれ以上の間)出続けて、その激しい痒みで苦痛に苛まれ続けることがある、かなり厄介な害虫です。(記者も過去にそのような経験があります。応急処置として、ドラッグストアで買えるジフェンヒドラミン内服薬で蕁麻疹を抑えるも根治せず、皮膚科専門医で世代の新しい、小用量で効果のある抗ヒスタミン剤内服薬を処方され、医師の指導の下、1ヶ月近く服用して、やっと収まりました。この抗ヒスタミン剤は口中で溶解させるフィルム状で、効果は高いものの、添加物のスクラロースが非常に不味い薬でした。)ヤブ蚊やブトのほかにも、ムカデや蛾幼虫(毛虫)、アリ(刺されると痛い)、マダニなど、ありとあらゆる毒虫や害虫に遭遇することがありますので、いつ出てもおかしくないと覚悟すべきです。

除虫菊の蚊取り線香と携帯用線香皿、着火具(ガスライター)

除虫菊の蚊取り線香の有効成分ピレトリン類は、他の合成殺虫成分と比べてもノックダウン性能に優れ、抵抗性も獲得されにくい優秀な特性を持っており、人体や環境に対する安全性も高いものです。アレルギー性皮膚疾患などを誘発するおそれがある屋外害虫の刺咬リスクを大きく低減し、安心して快適な活動に打ち込むうえで、除虫菊の蚊取り線香は欠かせないといえます。肌に直接塗布する忌避剤(虫よけ剤)が推奨されることがありますが、おすすめしません。着衣で覆っていれば、虫よけ剤はあまり意味がありませんし、最も普及している、米軍開発のディート(N,N-ジエチル-m-トルアミド)は、とくにこどもは意識的に使用を避けるべきであるほど強い毒性が指摘されているため、使用すべきではありません。肌の露出が避けられない箇所で、どうしても使用したい場合には、非芳香族系で、ディートよりも毒性が低いイカリジンを選ぶべきです。

最近では、屋外用で強力な作用を謳った蚊取り線香や、電池で動くファン式殺虫剤などが販売されるようになっていますが、これらは、環境や人体に有害である疑いがあり、一部に難分解性の構造を持つフッ素系ピレスロイドの製剤であることが多いため、使うべきではありません。購入の際は、必ず、有効成分が除虫菊(ピレトリン)のみであることを確認してください。

マダニにさされたときの非常用ワセリン

マダニにさされたときの応急処置法として、ワセリンラップ法が推奨されています。マダニにさされると、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)ウイルスに感染するおそれがありますが、さされたからといって必ず感染するというものではなく、適切な処置を行うことによって、感染を免れることが多いです。さされて慌てる気持ちはわかりますが、慌てて不適切な処置を行ってしまった結果として、感染のリスクが上がり、少なくとも1ヶ月間、感染の不安を抱えるようなこともあります。SFTSの致死率は諸説ありますが、最大では30%程度、3人に1人は死亡するといわれています。そのようなことにならないように、万が一マダニにさされたら、無理に引き抜こうとするのは厳禁、すぐにそのまま、多めのワセリンでマダニ全体を覆い、少なくとも30分程度、安静にしてください。無理に引き抜いた結果、マダニの口吻針が残ってしまった場合、SFTS感染のリスクが高くなり、速やかな切開手術による口吻針除去が必要になることもあります。また、さされたまま長時間放置すると、マダニ口吻針からの分泌物が固化して処置が困難となり、病院での処置しかできなくなる場合があります。マダニにさされるときは、分泌物に麻酔性物質を含んでいる関係からか、痛みや刺激といった自覚がないことが多く、ふくらはぎや腕を触ってみて、異常な形状の突起物(皮膚と一体化したマダニの体)に引っかかってはじめて、さされていたことに気づくということも多いので注意が必要です。ワセリンラップ法は、あくまでもさされてから間がなく、皮膚の固化癒着がない場合で応急処置が可能な場合にのみ行い、皮膚の固化癒着があり手遅れになってしまった場合は、さされた状態のまま動かさず(以降の活動や入浴なども控え)、できるだけ速やかに皮膚科専門医による処置を受けてください。ワセリンはあくまでも応急処置で用いるもの、マダニ対策の基本はやはり、着衣で肌の露出を最大限に減らすことです。

少量のストロングステロイド

5g程度のチューブ軟膏でよいので、万が一、毒虫にさされてミミズ腫れや蕁麻疹が出たり、有毒植物で激しいかぶれや炎症が出たときのために、ドラッグストアでOTC薬として購入できる最強レベルのストロングステロイドを持っておいてください。具体的には、リンデロン、ベトネベート、フルコートなどです。これらの成分はいずれも分子内に炭素ーフッ素結合を持っており、身体への影響が強そうな、かなりクセのある分子構造をしていますが、だからといって、作用が弱いステロイドを塗っても全く歯が立たないことがあります。たしかに構造上はかなり高リスクですが、そのリスクよりも、すぐに確実に炎症を抑えることのほうを優先すべき状況ですので、ためらわず使うべきといえます。(記者も最近、ブトにさされて蕁麻疹が出たとき、デキサメタゾン酢酸エステルを含むローションを塗っても全く効かなかったため、ストロングステロイドのフルコート軟膏を塗りましたが、それでも1〜2日程度では腫れが治まりませんでした。その後、数回繰り返し塗り込み、腫れの苦痛が除去され次第中断すると、数日後に徐々に炎症が小さくなり、最終的には消えていくというような効き方でした。ブトによる蕁麻疹がいかに頑固であるかがおわかりいただけるかと思います。)一段階作用が弱いステロイドとしては、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(PVA)という、非フッ素系の成分もありますので、まずはPVA製剤を試し、それでも効かないようであれば、ストロングステロイドに切り替えるとよいでしょう。薬の効き方や相性には個人差がありますので、気になる方は事前に皮膚科医か薬剤師にも相談しておきましょう。(※それ以上の薬効強度(ベリーストロング、ストロンゲスト)のステロイド剤は医院でのみ処方される要処方箋薬ですので、応急処置用としての常備には使えません。)

しっかり充電したスマートフォン

スマートフォンは、救急要請をするときに必要ですが、これは最後の手段です。とはいえ、最後の手段が断たれるということがあれば、生死に関わることにもなりますので、常に使える(発信可能な)状態で肌身から離さず持っておくことが大切です。さすがに、携帯電話の電波事情が良くなった今日では、里山でも良好な通信ができる場合が多くなっていますが、とくに人口が少なく、医療機関がほとんどない里山では、救急出動ができる最寄りの消防署などからの出動となるため、救急要請から救急車到着までに30分くらいか、それ以上の時間を要することがあることも覚悟しておくべきです。過大な期待は厳禁です。

その他、状況や活動によって必要なもの

作業や活動内容によっては、長靴や手甲(手首防護具)も用意しておきましょう。長靴は、できるだけふくらはぎを覆うことのできる長いもので、開口部を結んで塞ぐことのできるものが便利です。長靴を履いておくと、マムシやヤマカガシに足首を咬まれるようなリスクを回避することができます。とくに、水気の多い場所に立ち入る可能性がある場合は、長靴の着用が必須となります。手甲は、共柄鎌など高スペックな林業用刈払具を使用する際は必須となります。手首を切らないようにするためです。里山での活動に際しては、必ず事前にヒヤリハットを出して整理しておき、状況に応じて、記載以外のものも含めて必要な装備について確認し、周到な用意をしておくことが大切です。

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