NHKEテレ「趣味の園芸」が失敗の原因に?園芸歴40年のプロ直伝、正統派山野草の楽しみ方と栽培技術

14日「趣味の園芸」の放送内容に愕然!

14日にNHKEテレ(教育)で放送された「趣味の園芸」のメインテーマは、「早春の山野草」でしたが、その内容の骨抜きぶりには、ただただ愕然させられました。

まず、山野草を楽しむ意義について。文字通り、山野草は世界の山野に自生する原種植物のことを指し、その野趣ある姿を鉢や庭で楽しむことが、山野草の楽しみ方の基本といえることです。このような説明も行われており、そのことには異論はありません。しかしながら、その後で、矛盾するともとれる説明があったのです。園芸品種ともいうべき「葉芸」「花芸」がある品種の楽しみを紹介していたのです。むしろ盆栽や古典園芸のコンセプトに近いといえる焦点の当て方、これは、山野に生えるありのままの原種という、正真正銘の山野草にこそ美を見出す、正統派の山野草栽培家の間でも議論になっていることです。「葉芸」「花芸」があるものでも、自生系統の繁殖株であればよいのですが、意図的な選抜や交配といった育種の過程を経たものも多く、そういった点では、山野草本来の楽しみの方向性から逸脱するという批判があります。

そして、キンポウゲ科植物に多い特性と注意すべき点についての説明を欠いていたこと。番組で紹介されていたミスミソウ(雪割草)やフクジュソウの場合はさほどではありませんが、キンポウゲ科植物には、根量が少ないものが多く、根の生長点そのものが少ないため、根が傷つくと、以後の生育に深刻な悪影響が及ぶことがあります。実生の育苗や植え替えの際には、特別な注意が必要になることが多いものです。キンポウゲ科やそれに近いメギ科は、根量が多いキク科やナデシコ科などと比べると、正直なところ、かなり扱いにくい科になります。寄植えの作り方を説明していましたから、当然、根を触れることがあるわけですが、そのような説明は全くありませんでした。

山野草に「緩効性化成肥料」は失敗の原因!(実体験談あり)

寄植えで使用する山野草用土でも、失敗の原因になる可能性がある不適切な説明がありました。赤玉土・鹿沼土・軽石を混ぜた土に、元肥として、数粒の緩効性化成肥料を混ぜ込むというのです。

山野草の多くは、肥料の要求性が比較的低く、育ち過ぎで力尽きて枯れることはあっても、肥料切れで枯れるリスクは非常に低いといえます。施肥量で迷った場合は、少なめにしておけば、まず間違いありません。例えば、能勢・ぎんぶなのうえんでも、このような失敗を経験しています。ナデシコ科のフシグロセンノウとオグラセンノウに、生育期に白粒のIB肥料を与えていました。おもしろいほどよく生育し、花芽までついていたのですが、ある日突然、能勢特有の嵐がきたのです。その後の姿は無残で、根元からへし折られてしまいました。その後、芽吹くこともなく、枯れてしまいました。枯れた原因は肥料過多です。なぜそういえるかというと、IB肥料無施肥で、その他の肥料もほとんど与えていなかったフシグロセンノウは、一見して弱々しいように見えても、花が続けざまに咲いていたからです。そのフシグロセンノウの株は小さめですが、株の健康状態には全く問題はありませんでした。このようなことから、成株のフシグロセンノウは、肥料をあまり要求せず、むしろ肥料過多は命とりにもなるということがわかります。このようなことは、他の多くの山野草でもいえることです。緩効性化成肥料を元肥で加えるくらいなら、元肥は何も与えないほうがましです。元肥には、ようりんを用土1Lあたり2〜5g程度混ぜ込んでおくこと(望ましくは、ようりんとほぼ同量の珪酸加里も同時に混ぜ込み)をおすすめしています。とくに窒素を含む元肥は与えないほうが無難です。山野草用土(砂植え用)の最適配合例としては、赤玉土2:鹿沼土2:桐生砂3:日向土2:ゼオライト1です。この配合を基準として、植え付ける植物の水や肥料の好みに応じて、用土の配合を適宜調整します。

安易な寄せ植えは最悪の場合枯死の原因にも、繁殖するまでは単一植えが安心

山野草のなかには、アレロパシーで他種の生育に害を及ぼす種や相性が悪い組み合わせもあります。最悪の場合、寄せ植えをしたことが原因で枯らせてしまうこともあります。株分けや挿し芽、実生などで繁殖して、株数に余裕ができるまでは、安易な寄せ植えは避け、安全のため、単一植えにして作り込むことをおすすめします。

温帯性山野草の植え替え・植え付けは2〜3月が適期

温帯性の山野草、とくに、冬季落葉性のものは、気温が上昇し始める、芽出し前の2〜3月が植え替え適期です。大阪の場合、立春頃から気温が上昇し始めます。三寒四温を繰り返す、まだ肌寒いと感じる間に、植替えを完了しておきます。耐寒温度0℃のシンニンギアは、春分の少し前頃から芽が動き始めますが、その頃が植え替えの適期になります。(シンニンギアは肥料を比較的多く要求し、保肥力が重要ですので、用土は、山野草の砂植え用土の配合に、ピートモスとバーミキュライト、パーライトを混ぜ込んだものが適しています。く溶性元肥も、肥料を控えめにする山野草の2倍程度にします。)いずれの場合も、芽が大きく育ってしまうと、芽も根も傷めやすくなりますので、適期を逃さず、早めに完了しましょう。

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